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母国修学を考えよう



 今年も受験の追い込みシーズンを迎えた。受験生にとって夢の実現にむけての踏ん張りの時であり、家族にとっては子弟の将来への旅立を支える大切な時期である。

 一方、今年も母国修学生の募集がはじまり、本国の担当官による事前説明会が福岡、大阪、京都、横浜、東京で開催される。

 子弟にとって、自身の将来設計と民族的アイデンティティの確立のうえで重大な転機となる母国修学を、それぞれの家庭で選択肢の一つとして検討されることを期待し、本制度の意義について考えたい。


母国修学制度とは

 在日同胞社会の次代の後継者を育成する目的で一九六二年に設置された母国修学制度は、民団が本国政府に強く要望して実現した。一年間(実質的には八カ月)のウリマルを学ぶ予備課程を経て、各自の実力に応じて、韓国の大学に進学するという制度である。一九八〇年代まで、修学生のほとんどは在日同胞が占めていたが、現在では六十カ国以上の海外同胞が修学しており、名実ともに五百五十万海外同胞の期待に応える教育制度として発展してきた。

 一九六二年から今日まで、在日の母国修学生は延べ四千人を越えており、韓国と日本はもちろん、海外で活躍している卒業生も多い。九八年現在、在日同胞の母国修学生は、三百人ほどで、二十五大学、一高校、そして国際教育振興院などで学んでいる。

 在日同胞社会が二・三世世代に入ったと指摘されて久しい。今年、受験を迎える世代のほとんどは二世の親のもとで育った三世であろう。

 本団が民族的偏見と差別の厳しかった日本社会で、豊かな同胞社会を築くために推進してきた様々な運動を大きく二つに分けて考える事ができる。一つはわれわれ自身の民族的資質を向上させる運動であり、もう一つは、われわれをとりまく環境整備である。


母国で学ぶことの意味

 環境の整備については、一世と二世を中心とした権益擁護運動の結果、目に見えて改善され、「ともに生き、ともに創り、ともに育もう!」のスローガンのもと、地域住民としての地位と権利を要望するまでに至った。しかし、われわれ自身の民族的資質を育む運動は、困難な状況にある。

 在日同胞子弟の九五%以上が日本の各級学校で学んでいる状況下において、民族的資質を育む基本的な単位である家庭教育が望むべくもなく、民族学校に通うか、母国修学の他、方法がない。

 母国修学は、厳しいハンディの克服が要求されが、日本の大学で学ぶ以上にその結果得られる喜びも大きい。本国の友、そして教授の指導を通じて、日本社会では育むことができない韓国人としての失われた民族的資質を回復することができる。さらに、わが民族の美風の一つである親族との絆も回復する。そして、より交流が活発になる国際社会で活躍するためには、能力開発はもちろんながら民族的アイデンティティの確立は不可決である。

 先頃、日本を訪れた金大中大統領は、われわれの存在意義について「韓日・日韓の架け橋としての役割を」と強調した。このような役割を果たすためには、何よりも韓日両国での生活体験を持つ母国修学生は貴重な存在となろう。母国修学制度は、在日同胞社会の将来を左右するほどの重要な制度である。

 本団は、在日同胞社会の未来のため、本制度のさらなる充実をめざす一方、母国修学の途を推奨する。

(1998.11.18 民団新聞)



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