民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
浮き彫りにされた入居差別の実態



 四軒に一軒が「外国人お断り」―。このほど埼玉県の大宮北高校の生徒たちが、周辺の賃貸住宅を斡旋する仲介業者七十軒を対象に、外国人入居差別の実態を調べた結果だ。賃貸住宅を探した経験がある在日韓国人の中で、入居差別に合わなかった人はきわめて希でしかないだろう。しかし、改めて在日外国人への差別が存在するかが浮き彫りにされた調査だ。


未だなくならない入居差別

 解放後、在日同胞は制度的な差別のみならず、根強い民間差別の中に置かれながら生きてきた。衣食住という人間が文化的に生きていく上で必要不可欠な三要素のうち、一つの要素に重大な瑕疵(かし)があったわけだ。過去には、公営住宅ですら在日韓国人には開放されてはいなかった。

 だが、在日韓国人の民生を安定し、権益を擁護しようとする民団が、このような状況を改革しようと立ち上がり、粘り強い権益擁護運動を続けてきた結果、公営住宅の門戸は開放された。しかし、公的住宅が門戸を閉ざしていた以上、民間は右へ習えと堂々と外国人排除を続けてきた。


「家主の不法行為」の判決出たが

 そのような中で、九三年六月に大阪地裁が入居を拒否された在日韓国人の主張を認め、「入居拒否は家主の不法行為」という判決を出した。かたや東京都は九二年に「住宅基本条例」で「年齢、障害、国籍等の理由による民間賃貸住宅への入居の機会が制約されることがないように啓発に努める」と定めている。

 これまで日本の賃貸業は「誰に貸すかは営業の自由の範囲」という考え方が支配的であった。だが、この判決によって、民間賃貸住宅への入居差別に大きな風穴が空くと期待したのもつかの間、今回の調査を見る限り未だ状況は大きく変化していないことを如実に表した。

 先の在日韓国人の入居差別事件が起きた当時、在日韓国人が多住する大阪のある業者は「五百物件持っているが全部ダメ」と回答し、在日韓国人と結婚した女性は夫の名前で部屋を探すのに一年かかったという。今回の調査でも「基本的に無理があたりまえ」という仲介業者の声が聞こえている。そして仲介業者は「大家がうるさいので」と貸し主の責任だと逃げている。

 東京都でも、条例があるにもかかわらず、未だ業者および家主は外国人の入居をなかなか認めない。そして、日本名を名乗って入居しようとすれば、住民票を要求される。本名で申し込めば、外国人だからダメという、行政の批判を受ける断り方をせず、別の理由を付けようとする。


許されない不当な差別

 しかし、今回の調査に当たった高校生たちが「ショックでした」「外国人のつらさがよくわかった」と感想を寄せたことは、将来への大きな担保となるだろう。学生たちの人権意識啓発のために、このような調査活動を実施している学校は、ここだけではないようだ。その広がりが、将来の日本社会の国際化を推し進めることだろう。

 そして在日韓国人の側も、良き隣人として日本社会の中で共生していることをアピールしていこう。そうすることで家主や業者の認識を変えることができるのだから。

 その一方で、法的拘束力を求める活動も同時に進めなければならない。国際人権規約でも入居差別を禁じ、そして司法の判断からも明確なように、不当な差別は許されない。この認知を確立していくことが、差別がない社会をつくることにつながる。

(1998.12.02 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ