民団新聞 MINDAN
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統一・財政経済・文化観光

韓国99年の展望を長官に聞く



 一九九九年の新年を迎えるにあたり、民団新聞では本国の三人の長官に、特に在日同胞に関連するテーマでインタビューを行った。財政経済部の李揆成長官には、IMF体制一年後の韓国経済の状況や韓日経済協力、在日同胞経済を、統一部の康仁徳長官には北韓政策の基本方針と北韓の核疑惑対策について、文化観光部の申楽均長官には、日本の大衆文化開放の影響や二〇〇二年のワールドカップサッカー大会韓日共催についても意見を聞いた。(聞き手=ペ・チョルン民団中央本部宣伝局長)



■康仁徳・統一部長官

南北韓、民間レベルの交流後押し
経済協力活性や離散家族再会も


●政府の対北政策は

 強固な安保を土台に、南北間の交流と協力を通じ北韓の変化を誘導し、南北関係を実質的に改善していくものである。

 統一は必ずや実現しなければならない最高の目標ではあるが、半世紀以上の対決と反目を繰り返してきた南北関係の状況を考慮してみる時、短期間内に統一を期待するのは難しいのが現実だ。

 現段階では即座の統一を追求するより南北間の平和共存から実現することの方が急を要するという判断により「平和と和解・協力の実現を通じた南北関係改善」を対北政策の目標に設定した。

 韓半島に平和を定着させるためには何よりも北韓の根本的な姿勢変化が必要であり、そのために北韓に武力による対南赤化統一実現が不可能だという事実を認識させ、北韓が自ら変化できる与件と環境を醸成することが重要である。


●金正日政権への評価と南北首脳会談の可能性は

 昨年九月五日に開催された最高人民会議第十期第一次会議で憲法改正を通じ、権力構造を改編しながら統治体制を整備し、正常軌道に進入していると評価されている。

 ただし、北韓の経済難、食糧難など政権を取り巻く環境が悪化している点など、今後それが金正日政権に不安定要因に作用するとみられる。

 現時点に於いて南北頂上会談の開催の可能性は予断すら誠に難しい。金大中大統領は就任辞をはじめ、度あるごとに南北頂上会談開催の意志を表明したが、北韓は現在までなんの反応も見せていない。

 政府は南と北の最高責任者が会い、南北間のすべての問題を虚心坦懐に論議すれば、南北関係改善の画期的な転機になるだろうと期待し、北韓の肯定的な呼応がある場合には、南北頂上会談はいつでも開催されるであろう。


●北韓の核開発疑惑への対策は

 KEDOを通じた北韓の軽水炉建設支援事業は、多少うよ曲折を経たが、比較的成功裏に推進されている。「ジェノバ合意」以後、過去四年間、KEDOは軽水炉供給協定、領事保護、通行・通信、敷地引受など北韓と軽水炉事業の着手に必要な重要事項に対し広範かつ具体的な協議をした。

 このような努力の成果として昨年八月に敷地準備工事に着工し、現在KEDOの勤労者百五十余人が百余人の北韓勤労者と一緒に軽水炉建設現場で共同作業を順調に進行している。

 北韓の核開発は韓半島だけではなく、東北アジアと世界の平和と安定を脅かす重大な挑戦行為であり、必ずや阻止しなければならない。去る九三年、北韓が隠密に核開発を計画している事実が全世界に知られ、途方もない衝撃をもたらした。幸いなことに「ジェノバ合意」を通して北韓は核開発を中断し、その代わり北韓に対しては軽水炉発電所を建設してあげることを約束した。

 このような「ジェノバ合意」は北韓の核凍結を維持するのに重要な役割を果たしている。


●対北支援の実績は

 北韓に対する人道次元の対北支援は、南北韓の和解協力関係の構築の次元で持続的に推進するという立場を維持しながら、政府レベルでは人道的次元でなされる国際機構の緊急対北支援に継続参与している。

 このような私たちの対北支援は、新政府になって三千百五十九万余ドルで、「政府レベル」ではWFPを通じ千百万ドル相当(とうもろこし基準五万トン)を支援し、「民間レベル」では南北赤十字間の直接支援を通じ、総二千五十九万ドル相当の食糧及び救護物資(とうもろこし基準十三万トン)を支援した。


●離散家族再会について

 離散家族問題は南北関係で他のどんな問題よりも優先的に解決しなければならない民族的課題であり、当事者の高齢化を考えると時間があまり残されていない事案である。

 この問題の根本的解決に向けて南北当局間または赤十字間会談など多様な経路の南北対話を推進していき、これとともに現在なされている民間レベルの交流を活性化するために交流経費支援及び手続きの簡素化など、行政的・財政的支援を一層拡大していく。

 合わせて離散家族情報統合センターを設置、離散家族関連の資料を統合し、データーベース化して家族捜しや面会所での面会、故郷訪問団の人選など、交流本格化に向けて、効率的に対処できる内部基盤も構築していく。

 一方、現代が推進中の金剛山観光事業と開発事業が本格的に推進されるのに伴い、多様な国内企業が対北経済協力に参与できると予想され、これは南北経済協力の活性化につながると思われる。


●統一問題に対する在日同胞の役割は

 日本の地で長い歳月を苦労しながらも各界各層で成功を収め、懸命に生きている七十万同胞に、まず致賀と激励の言葉を贈りたい。また、日本にいても祖国の平和と統一に多くの関心を持ち、努力されていることも統一業務をあずかる長官としてありがたく思う。

 相当数の朝総連系同胞が訪韓し、発展し、成熟した韓国の姿を見ていただいたと思う。朝総連同胞の皆さんも和解・協力の大きな喜びを共に分かち合えるよう希望する。



■李撥成・財政経済部長官

経済関係、年2%成長見込む
証券・金融市場、外国人投資拡大へ


●IMF体制一年後の韓国経済の状況は

 この一年間の韓国経済は、歴史的な大転換期を過ごした。これは私たちが先進国として飛躍するには、いつかは経験しなければならない過程であり、いつの日にか成功するための保障であると確信している。

 この間、金融構造調整、企業構造調整、労働市場の柔軟性確保、公共部門の改革など四大部門を中心に経済改革を真剣に推進した結果、金融・外貨市場が安定し、外貨保有高も史上最高を記録する一方、経済回復の兆しも現れ始めた。

 ご存じの通り、一昨年末、韓国経済は外貨保有高が枯渇し、換率が急騰し、国家信用度は投資不適格水準に下落するなど国家不渡り危機の直前にまで陥った。

 政府はこのような外貨不足から始まった信用失墜と失業増加につながる金融危機の進行過程を勘案し、段階的に対応してきた。

 このような努力の結果、金融・外貨市場は安定の兆しを見せ、回復した。

 実物経済はマイナス成長が持続するなど依然難局だが、最近、産業生産の減少幅が鈍化し、輸出が増加するなど景気回復の兆候が見える。

 このような成果を反映して対外信用度も次第に改善されている。


●金大統領訪日後の韓日両国の経済協力関係は

 昨年十月の金大統領の国賓訪日は、未来思考的な両国の経済協力関係発展の重大な契機になった。

 十一月末には韓日両国の閣僚たちが薩摩焼四百年の祝祭を契機に、鹿児島県で歴史的な第一次韓日閣僚懇談会を開催した。

 このような協力の雰囲気と両国がアジア経済で占めている位置と発展セン在力を鑑みた時、これからも相互利益の基礎となる両国間の経済協力が一層加速化されるものと考えられる。


●韓国経済回復のために在日同胞ができることは

 一昨年末、外貨危機で大きな経済的困難に陥った時、在日同胞の自発的な本国送金運動は、韓国国民のすべてが危機克服のため一つに団結する契機になった。在日同胞が見せてくれた熱い同胞愛に深く感謝する。政府はこの間、経済各分野で全面的な構造調整の推進とともに、外国人投資制度を画期的に再編し「企業によい環境」を作るために多くの努力を果たしてきた。これからも在日同胞企業家たちの積極的な対韓投資をお願いする次第だ。


●日本の長期的な不況と在日同胞経済への打撃は

 日本経済が長期間、停滞し、金融機関の経営条件が悪化したことによって在日同胞の経済活動にも多くの障害をもたらしたと聞いている。

 特に、同胞金融機関である在日韓国人信用組合が不良債権過多などで多くの困難を迎えていることを知っているが、同組合が構造調整を通じて危機を克服することを重ねて祈願する。

 在日韓国人信用組合の正常化問題が円滑に解決するためには、先ず不良債権の縮小などの努力と信用組合間の統廃合など、韓信協の構造改革措置が先行されねばならないと考えられる。

 韓国政府もこの間、数回にわたり日本政府の配慮を促しており、これからも韓日両国間の金融協力方案などで事案を継続して論議してゆく方針だ。


●今年の韓国経済の展望は

 昨年の韓国経済は大幅なマイナス成長が避けられなかったが、九九年には年間で二%水準の成長率が記録できる展望だ。


●外国人投資制度で大きく変わった点は

 昨年二月に出帆した「国民の政府」は、当面の外貨危機を根本的に解消し、企業の構造調整促進及び失業問題の解決などのために積極的な外国人投資誘致政策を推進してきた。

 特に、外国人投資に関する規制を大幅に緩和して多様なインセンティビュー制度の拡充に努める一方、KOTRAに外国人投資支援センターを設置し、ワンストップサービスを提供するようにした。

 また、外国人に対する内国民待遇及び自由な投資を保障するため、業種開放を拡大し、投資自由化率を九九%まで広げ、土地取得及びすべての形態のM&Aを認めた。外国人の株式取得限度の廃止及び短期金融商品の完全開放など、証券・金融市場に対する外国人措置を拡大し、二〇〇〇年末までには外貨取引も全面自由化にする計画だ。

 政府はこれからも新たに導入した外国人投資制度を定着させる一方、投資環境の改善に継続して取り組む計画だ。



■辛楽均・文化観光部長官

韓日関係、観光収支黒字に
98年度35億j、熱い同胞愛に感謝


●日本の大衆文化の開放以降の影響は

 今回の開放により「HANA―BI」や「影武者」のような日本映画が韓国で上映され、国民が開放の効果を肌で感じることができたことは韓日両国の文化交流史上で画期的なことだ。

 この措置は世界化、開放化という国際潮流の中で、より成熟した韓日関係を構築して、長期的に韓国の文化産業の競争力と自生力を強化することにその目的を置いている。ただ、開放により青少年の情緒に否定的な影響を与える部分に対しては、各種審議機構を積極的に稼働して濾過していくよう計画している。


●韓国大衆文化の健全な育成方案は

 今回の開放措置を契機に、日本の大衆文化が一方的に流入することを受動的に防ぐという次元を超えて、韓国文化産業の競争力強化と日本市場への進出の契機になるよう努力する。

 このために文化産業を代表的な知識基盤産業として設定し、汎政府的な次元から国家基幹産業に育成するため、文化産業振興の長期計画を立てている。

 また、日本で韓国音楽の拡大、ビデオ、ゲームなど情報センターの開設運営、インターネットホームページ開設など、多岐にわたる方法で韓国の文化商品の日本進出を積極的に支援していく計画だ。


●二〇〇二年W杯の準備状況は

 二〇〇二年ワールドカップサッカー大会は、二十一世紀に入って最初に開かれる世界最大のスポーツの祭典であるとともに、アジアで韓国と日本が共同で開催する大会であるだけに、不幸だった過去の歴史を整理して未来思考的で成熟した同伴者関係に発展できる契機になると考えられる。

 八八年ソウルオリンピックなど国際競技大会の開催経験を充分に活かし、大会を準備する組織委とこれを支援する政府、そして大会の成功を念願する全国民の心が一つになるならば、日本に劣らず成功するものと考えられる。

 これまで大会準備のために九七年一月、「二〇〇二年ワールドカップサッカー大会組織委員会」を発足させ、九七年十二月に十カ所の開催都市を選定した。このうち八都市はすでに着工しており、二〇〇一年十二月までにはすべて完工する予定だ。

 ソウルオリンピックの時に、在日同胞が送って下さった関心と声援は、大会の成功的開催において実に大きな力となったことを覚えている。同じように二〇〇二年大会の成功的開催のために、韓日間の協力も重要だが、在日同胞の声援と積極的な参与が何よりも重要だと考えている。

 ボランティアとして案内、通訳など、大会運営に直接的に参与するのはもちろん、民間レベルの交流推進や日本の主要都市と韓国十開催都市間の姉妹結縁推進など、民団にとって意味のある事が多いものと考えられる。


●日本人観光客の誘致は

 九六年度と九七年度の場合、観光収支の赤字がそれぞれ十五億ドル、十一億五千万ドルだったが、政府による海外観光客誘致の積極的な努力とIMF体制による内国人の海外旅行減少で、九八年度には三十五億ドル以上の黒字を達成するものと期待されてる。

 特に、日本人観光客が高い増加率を示しており(昨年対比一五%増加)、これはひとえに日本人観光客の誘致に力になった在日同胞の関心と、熱い同胞愛のおかげだと感謝している。

 日本は依然、私たちにとって最も重要な観光市場で、九七年の場合、海外へ旅行した日本人観光客の約一〇%(百六十七万人)が韓国を訪問した。長期的にその比率を二〇%(三百万人)まで伸ばすようにする計画である。

 そのためには日本人観光客の利便増進のための観光案内所の拡充、漢字が表記された観光案内道路表示板の設置、案内地図の制作を推進しており、日本人の関心を引くいろいろな観光商品も持続的に開発してゆく計画だ。


●在日同胞への期待は

 まず、民族史の不幸を全身で経験され、わが民族特有の勤勉性と教育熱であらゆる苦難を乗り越え、日本社会の中で大きな成功を遂げた皆さんに永遠の尊敬と感謝の意を伝えたい。

 韓国は経済危機によってこの間、築いてきた国家イメージが失墜しただけでなく、遠い異国で祖国の発展を念願している皆さんにも迷惑をかけた。

 政府は一日も早く、古びた経済構造を全面的に改革し、韓国文化の力量をいっそう増進させ、再飛躍の足場を築くために最善の努力を尽くしている。

 韓日両国間の友好促進と、特に韓国文化の日本進出のための架け橋の役割を引き受けて下さるよう皆さんにお願いしたい。

(1999.01.01 民団新聞)



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