民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
在日同胞の生活権を拡充しよう

望まれる抜本的対策



 九一年の韓日法的地位協定再協議を経て入管特例法が施行され、在日韓国人が子々孫々にわたって日本に永住することが、制度的に保障されるに至った。外国人登録法も改正され、特別永住者の指紋押捺が廃止されるなど、私たちの法的地位問題はこの時点で大きく前進したと言えよう。半面、その他の生活上の処遇問題に関しては、残念ながら実質的な進展は見られなかった。ここでは生活上の処遇問題、すなわち「生活権拡充運動」の大きな柱である公務就任権と、無年金高齢者・障害者への特別給付金の現状をまとめてみた。


■公務就任権

国籍条項撤廃相次ぐが「制限付き」早期是正を

 「日本国籍者以外は公務員に就任できない」もしくは、「外国籍者は一定条件のもとでならば、採用できる場合がある」などと定めた規定は、日本の地方公務員法のどこにもない。外国人が地方公務員になることを妨げる法律は、実際には一切存在しない。

 その地方公務員法によれば、地方自治体の一般職 (議員などの特別職以外の全ての職)の任命権は「法律に特別の定めがある場合を除き、地方公共団体の長にある」となっている。

 たしかに都道府県・政令指定都市などでは、「人事委員会の意見を聞かなければならない」と定められているが、原則的には自治体長こそが採用・任命・昇進などの人事を決定する権限を持っている。

 従って、国籍条項撤廃に消極的な地方自治体が、外国人を排除する為に用いて来た「当然の法理」「公権力の行使」云々は、法律的根拠のない、あいまいな理論に過ぎない。

 換言すれば、国籍条項を設定している地方自治体長は、自らの人事権を放棄していると同時に、「法律に基づいて進められる行政」という憲法の基本理念に反しており、憲法一四条「法の下の平等」と同二二条「職業選択の自由」に抵触していると言えよう。

 九六年、全国の都道府県・政令指定都市の中で初めて、川崎市は一般事務職の受験資格から国籍条項を撤廃し、門戸を開放した。同年十一月、白川勝彦自治大臣(当時)は記者会見で、国籍条項見直しの意向を示し、それ以前の自治省見解を修正している。

 この二つの「追い風」以後、一般事務職採用試験から国籍条項を撤廃する自治体が増加し、中でも都道府県・政令指定都市級の自治体が続いたことにより波紋が広がり、今後もさらなる門戸開放が期待されるところだ。

 現在、一般事務職から国籍条項を撤廃している都道府県、政令指定都市及び県庁所在地は別表の通りだが、これらの多くが、現在のところ「公権力の行使」にあたらない職種については開放する、としているに過ぎないことを指摘しておく。もちろん大きな前進ではあるが、開放したと言っても任用制限付きであることから、上記したもともと法律に定められていない国籍条項を、法の精神に則って撤廃するという本来の在り方には、まだまだほど遠いからである。

 その意味から、今後とも本来的な公務就任権の獲得を、めざしていかなければならないのである。


■高齢者・障害者給付金

自治体が独自に支給 国民年金法の改正不可欠

 八二年の改正により、定住外国人にも加入の道が開かれた国民年金制度だが、制度施行後に本土から復帰した、沖縄の人々に対したような経過措置が取られなかった為に、多くの無年金外国人高齢者・障害者を残し、未解決のまま今日に至っている。

 民団は継続して国民年金法の無年金者に対する抜本的改正を求める一方、それが実現するまでの間、何らかの救済措置が講じられるよう各地方本部を中心として、地方自治体に対する独自の福祉的な手当の支給を要望して来た。

 こうした実態と要望を踏まえ、地方自治体としての立場から無年金の外国人住民に対して、独自の特別給付金を支給しているところが別表の様に多数あり、九八年十二月一日現在、高齢者特別給付金が四百八十三個所、障害者特別給付金が四百四十二個所の自治体で支給されている。民団の運動が実った結果だ。

 特別給付金の正式名称は自治体により様々で、受給するには普通、申請の必要があり、また所得額や他の公的年金を受給しているか否かなどの一定の資格が定められているが、詳細は直接、各自治体の窓口(福祉課など)で確認できる。

(1999.01.01 民団新聞)



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