民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
常時携帯・罰則制度残したまま

永住者無視した外登法の一部改正案



■今通常国会で審議へ

 外国人登録法の一部を改訂する法律案の骨格が、このほど日本法務省を通じて明らかになった。改訂法案では、指紋押捺制度の全廃が盛り込まれるが、民団をはじめとする永住者側から強い要望の出ていた外国人登録証の常時携帯義務や刑事罰規定、定期登録確認などの廃止には触れない方針だ。出入国管理および難民認定法の一部改訂案と併せ、三月初旬には今通常国会に上程される。


■不法入国・残留者をターゲットに

 日本政府が今通常国会で成立を目指す外登法一部改訂案は、「外国人の人権を尊重し、外登法の目的を含めて見なおす」とした一九九二年の国会付帯決議に基づく。日本法務省ではこの二年間、有識者から意見を聞き、諸外国の例も参考に様々な角度から検討を重ねてきたという。

 指紋押捺制度の全廃は確かに一歩前進だが、これは本人の同一性確認に指紋を唯一絶対視してきたこれまでの法務省の主張が自己破綻したものともいえる。


■91年の韓日覚書は反映せず

 なによりも問題なのは、九一年の韓日覚書で運用の在り方をも含め適切な解決策を検討すると確認され、民団の改正要望や国連の規約人権委員会からも法改正を勧告されている常時携帯制度をあくまで維持しようとしていること。住民基本台帳法などの罰則制度と比べて格段と苛酷な重罰制度についてもなんら改善の跡がみられない。

 日本政府は「過去三年間、不携帯として検察官に事件送致された人員はいずれも二十人未満で推移している」(規約人権委員会第四回報告書)と、「常識的かつ弾力的運用」を強調している。

 しかし、当事者からすれば近所に買い物に行くにも常に持っていなければならないという重圧感と、極度の拘束感を強いているという事実は変わらない。罰則の面では、現在五年毎の定期確認登録をうっかり忘れるだけで「一年以下の懲役・禁固または二十万円以下の罰金」を科している現実がある。


■常時携帯はニューカマー対策で残す

 常時携帯について日本法務省入国管理局の山神進登録課長は、「不法入国者、不法残留者が量的に増加しているいま、合法的滞在者かどうか即時に把握する必要がある。制度としての廃止は難しい」と述べ、運用面で配慮していく考えをあらためて強調している。罰則についても引き続き維持していくと表明した。また、定期登録確認制度の廃止についても「他人の登録証を使う人がいないわけではない。ニューカマーで若干増えている。制度として廃止するわけにはなかなかいかない」という。

 今通常国会は、八〇年代から始まった在日韓国人らの指紋拒否闘争以来、四回にも及んだ外登法改正作業の実質的最後の機会となるものとみられている。日本法務省が条文化・法文化を終えるとしている二月末には、「改正案」の是非をめぐって論議が巻き起こりそうだ。


■今回提出される外登法改定案(骨子)

 (1)非永住者に対する指紋押捺制度の廃止―現在、一年以上日本に在留し、永住資格のない外国人は指紋押捺の義務を負う。その数、外国人登録者数百四十八万人のうち在留期間、年令などから推定して約六十万人強とみられている。永住者同様、写真・署名・家族登録の三点セットで本人確認を行う。

 (2)都道府県の機関委任事務の廃止―地方分権の推進とともに、都道府県と市町村に機械的に割り振ってきたものをやめる。国は大枠を決め、市町村の自由度を高める。

 (3)登録原票について一定範囲の開示制度の新設―外国人本人、または代理人、親族、および国や地方公共団体が職務上必要としたとき限定的に認める。

 (4)永住者・特別永住者の登録事項の一部削減―現在の二十項目のうち、とりあえず、(9)職業、(20)勤務先をなくす。日本社会での定着性にかんがみて必要なしと判断した。

 (5)永住者・特別永住者の切替期間の伸張―五年ごとの定期確認登録を七年ごとに伸張する。

 顔写真の経年変化からして、正確性を維持するにあたって七年でも差し障りなしと判断した。

 (6)居住地変更や在留資格変更の際の代理申請範囲の拡大―登録証明書の交付を伴わない事項に関しては、同居の親族にまで代理申請できると改めて明示する。現状を追認したものにすぎない。

(1999.01.20 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ