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オリニたちに韓国の絵本を

日本語版になってお目見え
「カチ・ホランイ」シリーズ全5巻



日本語版になって人気を呼ぶ
韓国の絵本「カチ・ホランイ」シリーズ

 「むかしむかしトラがタバコをすっていたころ…」で始まる韓国の民話絵本が、関西地区を中心に静かな人気を呼んでいる。昔話の原型をそのまま活かしつつ、在日韓国人や日本人の子どもたちが手軽に楽しめるよう日本語で翻訳されている。

 「韓国の文化を身近に感じられる」と、一部の保育所、幼稚園、小学校などでは、授業で読み聞かせに活用している。

 この民話絵本は「カチ・ホランイ」シリーズとして、韓国の図書出版ポリムが九七年に出版した。日本では大阪の民族教育文化センターが昨年六月、ポリム出版との間で代理店契約を結び、シリーズのうち現在五冊までを日本語版など六カ国語で販売している。

 テーマは、勧善懲悪ものばかりか友情、「協同」の尊さをベースにユーモアとペーソスを盛り込んだもの、大人が読んでもホロリとさせられるラブロマンスなどもあり、バラエティに富んでいる。絵も、それぞれ別な作家が、個性を競い合っている。

 民族教育文化センターでは、「韓日文化交流が盛んに行われる今日、子どもたちに等身大の韓国の姿を提供し、自然に韓国の文化に親しんでもらいたかった」と話している。

 定価は各巻千八百円。問い合わせは同センター、06(6779)4911まで。


■おにのかなぼう(鄭車俊・作、韓炳浩・絵、仲村修・訳)

 親思いでまじめな農夫の話(1)と、欲張りでなまけ者の農夫の話を対照的に描いた(2)の二部構成。前後どちらからも読むことができる。正直もののお百姓は福をもらい、強欲なお百姓は罰を受けるというのが基本のあらすじ。

 韓国民族が創造した独特な想像の産物であるトッケビ(鬼)が出てくる昔話のなかでも最もよく知られているのがこの作品。打てばなんでも出てくるトッケビの金棒が子どもたちの好奇心をそそる。


■五人の小さなごうけつ(梁載洪・文、李春吉・絵、仲村修・訳)

 素手で岩をつかんで投げる豪傑、鼻息で大波を起こす豪傑、オシッコで海をつくる豪傑、船をかついで歩く豪傑、鉄の靴を履いて歩く豪傑―。旅先で出会った五人の豪傑が友達となり、冒険の旅に出る。

 知らずのうちに虎のすみかにたどり着いた五人の豪傑が、五匹の虎たちとの間で命をかけて三つの競争に挑む。

 虎と豪傑たちとの間で繰り広げられる駆け引きと知恵比べがみもの。特徴をとらえたキャラクター、虎もユーモラス。


■お日さまとお月さまになったきょうだい(李圭喜・文、沈美娥・絵、仲村修・訳)

 二人の兄妹を家に残し、お祝いに出掛けたオモニは帰り道、峠の行く先々で虎に遭遇する。その都度、おみやげにもらったお餅を差出し難を逃れるが、限りあるお餅は底を尽き、ついにオモニは虎の餌食になってしまった。

 オモニに変装した虎は、今度は残された子供を食べてしまおうと家の中にまで入り込む。兄妹はからくも木の上に逃げ、空から降りてきたロープに救われるというストーリー。東洋思想をにじませながら描く、韓国独特の昔話。


■アズキがゆばあさんとトラ(趙大仁・文、崔淑姫・絵、市場淳子・訳)

 アズキ畑で虎に襲われそうになったおばあさん。とっさに機転をきかせ、アズキの実る秋まで食べられるのを待ってもらう。

 アズキの取り入れも終わり、おいしいアズキがゆもできた。しかし、おばあさんは毎日、泣き暮らしていた。見るに見兼ねた栗、犬の糞、雉、臼などが一杯のアズキがゆと引き替えに虎を見事撃退する。

 弱者が力をあわせれば強者に立ち向かえる「協同」の重要性を教えてくれる。多様な擬声語も楽しい。


■七夕のお星さん(李美愛・文、柳愛路・絵、市場淳子・訳)

 愛し合い、祝福のうちに結婚した、空で暮らすチンニョ(織女)とキョヌ(牽牛)の二人。しかし、なかむつまじさゆえに、チンニョは機織りを、キョヌは畑仕事を忘れてしまう。

 腹を立てた天の神は、二人を遠く東西の果てまで引き離してしまう。七月七日の七夕の日、二人は歩いて天の川までたどり着く。

 地の国では二人の再会をかなえようと、天の川にカササギの橋を架ける。大人でもほろりとさせられる韓国版「七夕伝説」。

(1999.02.03 民団新聞)



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