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採用内定者に戸籍の提出要求

横浜の大手百貨店が就職差別



高卒内定者に就職差別

 【神奈川】神奈川県内で新規高校卒業者の就職内定者に対し、戸籍謄本や身元保証書などの提出を求めていた企業の存在が明るみに出た。横浜市教育委員会では、学校側が「重大な就職差別の問題であること」を見抜けなかった事態を重視、市内の各公立中・高等学校に改めて進路指導体制の見直しを指示した。

 戸籍謄本の提出や身元調査は差別選考につながる。文部省と労働省の制定した「全国高等学校統一応募用紙」でも、九六年度改訂からはそれまで都道府県名で記していた本籍地ばかりか、家族欄までも削除した。これは日本には戸籍謄本のない在日同胞や、同和地区出身生徒などが本人の能力や適性に関係ないことで排除されないようにするためだ。

 しかし、学校側にこうした認識はなく、問題となった民間企業が生徒に提出させた戸籍謄本と身元保証書などの社用紙を持参して二度にわたり謝罪に訪れた際、進路指導担当者はてん末を校長に報告することはせず、職員会議でも取り上げなかった。横浜市教育委員会では、今回学校側が差別選考をチェックできず、就職差別を現実のものにしてしまったことに強いショックを受けている。

 問題となる差別選考をしていたのは横浜市内の大手百貨店。九七年九月、県内他都市の採用内定者が通知書に記載されていた提出書類に疑問を持ち、学校側に申し出たことから明らかになった。県が事実調査したところ、採用内定者のなかには横浜市内の市立高校生もいたことから、県が横浜市教委に連絡したもの。

 横浜市教委では「就職差別にかかわる事件報告」(A4判八ページ)を作成、今年二月に入って市内五百校からなるすべての同和教育担当者に配布、差別選考をチェックできる校内進路指導システムの確立に向けて年度末の多忙な時期にもかかわらず今月十二日を期限に全教職員を対象に校内研修、意見集約を図るよう指示していた。


外国籍者を巧妙に排除
日立就職差別事件と同類

■解説

今回の「就職差別にかかわる事件」は同和地区出身者だけに向けられたものだけでなく、在日同胞に対する就職差別でもあった。しかし、報告書にはそうした視点はすっぽり抜け落ちている。

 企業が就職内定者に戸籍謄本や住民票を求めること、これは日本国籍者だけを採用すると宣言したようなもの。たとえ採用試験で合格したとしても、在日外国人は該当する書類をそろえられないために就職できないからだ。

 横浜を舞台にした日立就職差別事件の朴鐘碩さんがそうだった。本名で受験すれば合格できないだろうと思い日本名で受験し合格した。しかし、戸籍謄本を求められても提出できない。内定を取り消され抗議したら、本名を書かなかったことを虚僞記載とし内定取り消しを正当化された。

 内定者に戸籍謄本を求めたこと、これは戸籍謄本が提出できない、本籍欄が記入できないすべての人たちに対する明らかな差別事件である。しかし、報告書は「差別に関わる事件」として、明確に差別事件とは言い切ってはいない。

 横浜市は九一年に制定した教育基本方針で「在日」の人権保障や民族差別を克服する教育、「進路保障を含む教育行政の役割」を具体的に盛り込んでいる。この基本方針の精神はどこかへ置き去りにされてしまったかのようだ。

(1999.03.17 民団新聞)



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