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永住者への配慮欠く外登法案



 日本による植民地支配下の韓半島から一世たちが渡日して八十年、いま在日韓国人は五世代を数える。これからも代を継いで日本に定住し、共生社会の一方のパートナーたらんことを願っている私たちに、もはや「管理」は似つかわしくない。

 参議院法務委員会で「外国人登録法」と「出入国管理及び難民認定法」の両改定法案の審議が続いている。両法案はあいも変わらず「国民」と「外国人」という「二項対立」を軸につくられている。日本における外国人の地位・処遇問題を考えるとすれば、最も数の多い旧来者(オールド・カマー)と戦後経済事情などで移入してきた新来者(ニュー・カマー)との間には厳密な線引きがなければならないはずだ。にもかかわらず、この「外国人」というカテゴリーに在日韓国人をはじめとする特別永住者・永住者を投げ込んでしまったところにそもそも無理がある。地域社会の構成員として生活している外国人住民という視点がまったく欠落しているからだ。


■常時携帯制度で極度の拘束感

 「外国人登録法」改定案についてみれば、非永住者に残っていた指紋押なつ制度を廃止する。永住者の外国人登録・確認申請についても五年から七年に延長することになった。こうした「改正」の一方で、法目的の根幹ともいうべき「外国人管理」ついては頑強に固持する姿勢を変えていないのはどうしてなのか。

 「外国人管理」の端的な例が常時携帯制度であり、そして重罰制度、および登録証の切替制度だ。常時携帯制度については「常識的・弾力的運用」(八七年の国会付帯決議)で送致件数は大幅に減少している。九二年から九四年までの過去三年間に司法警察員から検察官に事件送致された人員は二十人未満で推移している。一九八〇年代まで警察官による職務質問が日常かつ無差別に行われ、年間一千〜四千人もの外国人、とりわけ在日韓国・朝鮮人が「法違反者」に陥れられ苛酷な刑罰を科せられてきたことを考えれば運用改善のあとが見られる。

 しかし、この「常識的かつ柔軟な姿勢」も「統一した運用の基準のようなものを示すことは大変困難である」(奥村警察庁警備局外事課長、一九九二年三月二十七日、衆議院)という。登録証常時携帯と提示義務が法制度として維持されることは、その恣意的運用を現場の警察官に全面的に委ねることであり、在日外国人を二十四時間監視下に置いて重圧感と極度の拘束感を強いていることに変わりはない。

 しかも証明書の常時携帯を刑事罰をもって強要していることは、国連人権規約自由権規約第一二条の「移動の自由」を実質的に奪うことになる。一部の不法在留者または不法就労者を見つけ出すためとはいえ、日本に定住の基盤を築いている在日韓国人まで一律に網をかけるのは乱暴だ。


■定住性、歴史性ふまえ修正を

 罰則も不法所持だけで二十万円、提示拒否には「一年以下の懲役もしくは二十万円以下の罰金」はあまりにも苛酷だ。在留期間九十日未満の短期滞在者が「旅券」不携帯と提示拒否で「十万円以下の罰金」のみなのに対しても、明らかに整合性を欠く。住民基本台帳法の場合は、本人にかかる罰則として事実確認の際の質問・文書提示を拒否したとき「五万円以下の罰金」、それ以外の虚為申請などは「五千円以下の過料」にしか過ぎない。

 両改定法案が在日韓国人の生活実態とその歴史的経緯に見あったものに修正されることを望む。

(1999.05.12 民団新聞)



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