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参議院法務委員会

外登法参考人質疑



法改正案の修正を求めて国会に向かう市民団体(5/10)

 外国人登録法改定案と出入国管理及び難民認定法改定案をめぐる参議院法務委員会から、外登法についての参考人質疑(四月二十二日)の模様を会議録から抜粋した。参考人は一橋大学社会学部の田中宏教授と千葉大学の手塚和彰法経学部長の二人。


■定住実態にあわない「管理」色

▲服部三男雄(自民)

諸外国も日本と同じような常時携帯制度をとっていることをどう考えるか。


▲田中宏参考人

それぞれの国が自国民にどのような身分証明書制度をつくっていて、その身分証明書の携帯についてどうなっていて、そしてその国に居住する外国人にどうなっているか、そういうふうに物を考えることがまず基本。なぜ日本では自国民の身分証明書制度がないのか、むしろそちらのほうが私は問題だとさえ思っている。

 指紋が何で問題になったかというのは、外国人だけから指紋をとるから。韓国では自国民も取るし、外国人もとっていた。韓国では外国人から指紋をとるということが問題になる余地がない。

 私は学長の判こを押した身分証明書を持っているが、これはあらゆる意味で厳密な身分証明書ではない。外国人登録というのは存在そのものに証明書がくっつくという仕組み。外国人、いろんな人が入ってくるから身分をきちっとすべきだという議論があるが、入ってきた人が、いや私は日本人です、それではおまえ日本人の証明を出せといわれたらないんですから。そこのところをきちっと考えないと、外国人に常時携帯の義務を課すことの理屈というのが非常に問題だというのが私の基本的な考えだ。


▲千葉景子(民主)

登録証明書を携帯し、それを提示することで様々な行政サービスを受けられ、また自らの身分権利を証明できるという点でメリットがあるとするなら、それを持っていないということで犯罪と扱うというのはいささか問題があるように思う。


▲手塚和彰参考人

見せてほしいという権利を行使するときなんかそれがノーというときの処罰規定等などについては検討の余地がある。

参院社民党に署名を提出した市民団体の代表(5/10)


■「内外人二分」見直しを

▲田中宏参考人

外国人登録は管理一本やりの法律だったが、いまは外国人登録をしていないと、例えば児童手当てをもらえない、健康保険に入れない。構造が変わってきているわけです。

 法律の施行というのは、そのことに伴ってメリットがあれば守られるわけですね、理論的に。そうすると、刑罰に託す、そのことを守らせるために罰だけで追い立てていくという必要がそれだけ減るわけです。

 きちっと登録しておかないと不利益が生ずるということになれば、当然それだけ法自身が内在的に法を守らせる力を持ってきている。それが従前どおりの刑罰にのみ頼って法の遵守を外国人に迫るという構造、これがそのまま残っちゃっているんです。

 ですから、日本人が住居の移転を怠った場合には五千円の過料でいいのに、何で外国人が同じ手続きをしなかったら四十倍も、しかも罰金ということは過料ではありませんので、これは実は正確には四十倍にしてはいけないんですね。これは法律の専門家によると、それは四十倍にできない、掛け算ができないんです、過料と罰金は違いますから。そんなに格差をつけておく必要がどこにあるかという原点に立ち返って、やっぱり罰則というのは住民記録とのバランスを考えながら一遍総ざらいをすべきである。そうすると、常時携帯に刑事罰を科すということがいかにおかしいかということがおのずと見えてくるだろうと思います。


▲大森礼子(公明)

指紋押捺制度が今回で全廃されます。ただ、かつて指紋押捺を拒否したことで最入国許可が与えられず、そして特別永住資格が失われてそのままの状態の方が残っております。今回、全廃するのであれば、そういう方たちの救済措置もしないとこの問題は解決したことにはならないのではないか。


▲田中宏参考人

法律を執行している立場からみると、法律を破ってけしからぬという気持ちはわからなくはないですけれども、別の見方をすると法違反を重ねることによって制度が変わったということは、私はある意味では日本の歴史上かつてないことだと思う。 日本人と外国人との共存関係というのか、信頼関係という観点から考えると、お互いにそういう努力をして新しい知恵を切り開いたという点でそれ自体を全体として評価するというふうにもっていかないと、これは和解にならない。


▲大森礼子(公明)

常時携帯について手塚参考人に尋ねたい。特別永住者については格別な考え方をすべきではないか。


■永住者に罰則は過酷

▲手塚和彰参考人

異議ない。ただ、特別永住者も永住者も同様にすべきであろうと思います。


▲福島瑞穂(社民)

外国人登録証の常時携帯義務についてですが、自国民に身分証明書の携帯を義務づけず血統主義を採用し、かつ永住者についても、かつ二世、三世についても常時携帯義務を課している外国ははたしてあるのか。つまり日本と同じような国はあるのか。


▲手塚和彰参考人

アジア諸国や中南米はありません。欧米諸国は特に西欧はパスポート以外の身分証明書というのを持っている。更新はない。アイデンティファイすることは常時必要なんです。


▲中村敦夫(無所属)

私は外国人登録証の常時携帯義務は非常にこだわっている。手塚先生が常時携帯義務を正当化された理由のなかには行政サービスで便利だということもあった。しかし、これはごく特殊なケース。われわれも健康保険証だって普通は病院に行く時しか持っていかない。だからそういうので便利だという理由はあまりこれを擁護する理由にはならないのでは。


▲手塚和彰参考人

私は外国出張いたしますと、パスポートを忘れてはいけないという脅迫感を常に持っています。それから実際に提示義務も罰則もあります。ただ、その罰則の程度と行政の取り締まり、とりわけ警察権の行使が不適切であったということ、それが今日になっても尾を引いている。田中参考人がおっしゃられたように戦前から三世、四世というぐあいにおられるような方たちについては、簡単な証明ができれば、そのくらいの心証でもういいわけでありまして、やっぱり罰則まではきついかなということで、今後の課題だと私は思います。


▲服部三男雄(自民)

諸外国も日本と同じような常時携帯制度をとっていることをどう考えるか。


▲田中宏参考人

それぞれの国が自国民にどのような身分証明書制度をつくっていて、その身分証明書の携帯についてどうなっていて、そしてその国に居住する外国人にどうなっているか、そういうふうに物を考えることがまず基本。なぜ日本では自国民の身分証明書制度がないのか、むしろそちらのほうが私は問題だとさえ思っている。

 指紋が何で問題になったかというのは、外国人だけから指紋をとるから。韓国では自国民も取るし、外国人もとっていた。韓国では外国人から指紋をとるということが問題になる余地がない。

 私は学長の判こを押した身分証明書を持っているが、これはあらゆる意味で厳密な身分証明書ではない。外国人登録というのは存在そのものに証明書がくっつくという仕組み。外国人、いろんな人が入ってくるから身分をきちっとすべきだという議論があるが、入ってきた人が、いや私は日本人です、それではおまえ日本人の証明を出せといわれたらないんですから。そこのところをきちっと考えないと、外国人に常時携帯の義務を課すことの理屈というのが非常に問題だというのが私の基本的な考えだ。


■指紋押なつ拒否者の救済も

▲千葉景子(民主)

登録証明書を携帯し、それを提示することで様々な行政サービスを受けられ、また自らの身分権利を証明できるという点でメリットがあるとするなら、それを持っていないということで犯罪と扱うというのはいささか問題があるように思う。


▲手塚和彰参考人

見せてほしいという権利を行使するときなんかそれがノーというときの処罰規定等などについては検討の余地がある。


▲田中宏参考人

外国人登録は管理一本やりの法律だったが、いまは外国人登録をしていないと、例えば児童手当てをもらえない、健康保険に入れない。構造が変わってきているわけです。

 法律の施行というのは、そのことに伴ってメリットがあれば守られるわけですね、理論的に。そうすると、刑罰に託す、そのことを守らせるために罰だけで追い立てていくという必要がそれだけ減るわけです。

 きちっと登録しておかないと不利益が生ずるということになれば、当然それだけ法自身が内在的に法を守らせる力を持ってきている。それが従前どおりの刑罰にのみ頼って法の遵守を外国人に迫るという構造、これがそのまま残っちゃっているんです。

 ですから、日本人が住居の移転を怠った場合には五千円の過料でいいのに、何で外国人が同じ手続きをしなかったら四十倍も、しかも罰金ということは過料ではありませんので、これは実は正確には四十倍にしてはいけないんですね。これは法律の専門家によると、それは四十倍にできない、掛け算ができないんです、過料と罰金は違いますから。そんなに格差をつけておく必要がどこにあるかという原点に立ち返って、やっぱり罰則というのは住民記録とのバランスを考えながら一遍総ざらいをすべきである。そうすると、常時携帯に刑事罰を科すということがいかにおかしいかということがおのずと見えてくるだろうと思います。


▲大森礼子(公明)

指紋押捺制度が今回で全廃されます。ただ、かつて指紋押捺を拒否したことで最入国許可が与えられず、そして特別永住資格が失われてそのままの状態の方が残っております。今回、全廃するのであれば、そういう方たちの救済措置もしないとこの問題は解決したことにはならないのではないか。


▲田中宏参考人

法律を執行している立場からみると、法律を破ってけしからぬという気持ちはわからなくはないですけれども、別の見方をすると法違反を重ねることによって制度が変わったということは、私はある意味では日本の歴史上かつてないことだと思う。 日本人と外国人との共存関係というのか、信頼関係という観点から考えると、お互いにそういう努力をして新しい知恵を切り開いたという点でそれ自体を全体として評価するというふうにもっていかないと、これは和解にならない。


▲大森礼子(公明)

常時携帯について手塚参考人に尋ねたい。特別永住者については格別な考え方をすべきではないか。


▲手塚和彰参考人

異議ない。ただ、特別永住者も永住者も同様にすべきであろうと思います。


▲福島瑞穂(社民)

外国人登録証の常時携帯義務についてですが、自国民に身分証明書の携帯を義務づけず血統主義を採用し、かつ永住者についても、かつ二世、三世についても常時携帯義務を課している外国ははたしてあるのか。つまり日本と同じような国はあるのか。


▲手塚和彰参考人

アジア諸国や中南米はありません。欧米諸国は特に西欧はパスポート以外の身分証明書というのを持っている。更新はない。アイデンティファイすることは常時必要なんです。


▲中村敦夫(無所属)

私は外国人登録証の常時携帯義務は非常にこだわっている。手塚先生が常時携帯義務を正当化された理由のなかには行政サービスで便利だということもあった。しかし、これはごく特殊なケース。われわれも健康保険証だって普通は病院に行く時しか持っていかない。だからそういうので便利だという理由はあまりこれを擁護する理由にはならないのでは。


▲手塚和彰参考人

私は外国出張いたしますと、パスポートを忘れてはいけないという脅迫感を常に持っています。それから実際に提示義務も罰則もあります。ただ、その罰則の程度と行政の取り締まり、とりわけ警察権の行使が不適切であったということ、それが今日になっても尾を引いている。田中参考人がおっしゃられたように戦前から三世、四世というぐあいにおられるような方たちについては、簡単な証明ができれば、そのくらいの心証でもういいわけでありまして、やっぱり罰則まではきついかなということで、今後の課題だと私は思います。

(1999.05.19 民団新聞)



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