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外登法改正、抜本解決されず可決

参院本会議、「常時携帯」を放置



■「罰金」を「過料」に

 外国人登録法の一部を改定する法律案が一部修正のうえ21日、参議院本会議で可決された。民団側が日本法務省に修正を強く求めてきた項目の一つである永住資格者に対する外国人登録証の常時携帯義務撤廃こそ認められなかったものの、登録証不携帯時の刑事罰が取り除かれ、行政罰(過料)へ変更された。不十分な修正とはいえ、常時携帯制度の全廃に向けた糸口だけはつかんだといえる。

 修正案が成立すると、これまでのように警察が登録証不携帯を理由に現行犯逮捕するということはできなくなる。これは常時携帯義務制度の根幹を揺るがしかねないだけに、外国人を管理、取り締まる側の警察、公安は最後まで抵抗してきた。しかし、民団側も「最低限譲れない線」として、自民党をはじめとする各党に陳情を繰り返した結果、修正案に盛り込まれた。

 また、指紋押捺拒否を理由に最入国許可を得られずに米国へ出国、88年に帰日した時点で協定永住資格を奪われた崔善愛さんに対する永住権の現状回復措置も盛り込まれた。崔さんは生まれ育った日本で新規入国者として180日から半年、さらに1年の特別在留許可を受け、現在は3年ごとに在留期間を更新している不安定な身分に置かれていた。

 一方、刑事罰の廃止と並んで民団側が強く求めてきた常時携帯義務の撤廃については、国連の規約人権委員会からの再三にわたる勧告にもかかわらず、修正案に入らなかった。付帯決議では「永住者に義務づける必要性、合理性について十分な検証を」求めているものの、見直しにあたっての期限は付いていない。

 法案を可決した20日の法務委員会席上、賛否の討論に立った社民党の福島瑞穂議員は「少なくとも永住者、特別永住者については常時携帯義務を撤廃してほしかった。法案は極めて不十分」と強い憤りを表明した。ただし、罰則の軽減など一部主張は認められたとして、修正案には賛成に回った。

 なお、外登法とともに法務委員会で一括審議されてきた入管法案については「外国人を犯罪者と見ている」として社民、共産党などが強硬に反対を表明したが、賛成多数で原案どうり可決された。

 両法案はこれから衆議院で審議される。


■要望反映されず遺憾
 外登法改正案可決で民団が談話

 外登法と入管法の一部改定案が参議院法務委員会で可決された20日、民団中央本部は徐ウォンチョル・国際局長名の「談話文」を発表した。全文は次のとおり。

◆◇◆◇◆◇

 本日、「外国人登録法」及び「出入国管理及び難民認定法」の改定案が参議院法務委員会で可決された。 この間、生活実態に見合った措置として、本団が要望してきた永住資格者に対する外国人登録証明書の常時携帯義務制度の廃止について、一切の改正がなされなかったことに強い憤りを禁じ得ない。

 去る92年、衆・参議院法務委員会で「外国人の人権を尊重して、適切な措置を講ずる」とした附帯決議の精神がこの度の改定案でなんら反映されなかったことは遺憾である。

 常時携帯義務を残すために、特別永住者のみに対し外国人登録証明書の不携帯時の刑事罰である「20万円以下の罰金」を、「10万円以下の過料」という行政罰に改めたのは、何ら抜本的な解決につながるものではない。また、この度の附帯決議の各検討事項に期限の明示がなく、その実効性を憂慮せざるを得ない。

 日本政府に対する国連の規約人権委員会の最終見解を考慮せず、また特別永住者の歴史的経緯に配慮せず、定住外国人の日常生活に不当な制限を継続するこの度の改定に本団は改めて抜本的改正を強く要望するものである。

(1999.05.26 民団新聞)



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