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キムチの国際規格めぐり

韓日がせめぎ合い



■伝統製法にこだわる韓国

 韓国の伝統的漬け物といえばキムチ。最近は日本でもキムチブームが巻き起こり、日本の漬け物を凌駕してナンバーワンの地位にある。本来は白菜、唐辛子、塩など自然食品だけを使って漬けるキムチだが、最近になってやや雲行きが怪しくなっている。

 というのもキムチの国際規格を定める過程において日本側が添加物の使用を求めてきたからだ。発酵によって得られる粘り気ももち米や小麦粉で出そうという点など、韓日間で規格の相違点は多い。本格的キムチを製造してきた在日同胞の業者からは反発の声も上がっているようだ。

 そもそもキムチの国際規格をめぐる韓日交渉は、96年3月に東京で開催された国際食品企画委員会(CODEX)地域開発部会アジア部会で韓国の農林水産部などが提案したのが発端だった。その際に日本の農林水産省が規格づくりへの参画を表明したため、企画案の共同作成が始まった。


■添加物の使用求める日本

 CODEXは、食品の国際貿易の円滑化と消費者保護を目的に、国連食糧農業機構(FAO)と世界保険機構(WHO)が合同で96年に設立した委員会で、現在百四十六カ国が加盟し食品貿易の国際規格を定める機関。規格が制定されると加盟国は規格に準じた国内整備が義務づけられる。

 韓国が規格化を求めたのは「世界に冠たるキムチ」の発明国として当然のこと。しかし、日本側はキムチの国内生産が年々増加の一途をたどっており、韓国側規格で進めば、日本のキムチがキムチにあらずと認定されてしまいかねない危機感が背景にあったといわれる。

 現在まで両国の合意は次のように進んでいる。

(1)日本は韓国より温暖なため発酵海産物は腐敗しやすい、と任意原料とした

(2)発酵海産物を使えば自然に出る粘り気をだすためにもち米、小麦粉の使用

(3)日本の浅漬け嗜好のため酸味を出すために乳酸、クエン酸使用

(4)辛みを下げるためにパプリカの使用

(5)発酵につれ自然に出るしょうゆ味を補うためしょうゆの使用

―などを認めた。


■にせものキムチが公然化

 これらは韓国では使用されず、発酵海産物を使ってしっかりと発酵させればいずれも必要ないもの。韓国の伝統キムチにこだわる関係者からは「これではインスタント・キムチではないか」という声も多い。

 本来の伝統キムチは、白菜、唐辛子、塩、海産物など土地柄にあった様々な材料を入れて漬け込むわけだが、重要なのは自然乳酸発酵させること。乳酸菌が多く含まれることで整腸・抗菌作用が生まれると同時に味に深みが増す。

 しかし、最近では韓国でも核家族化が進み、その時々に買って食べるために浅漬けキムチが流行しつつあるのも事実だ。韓国側関係者の中にも世界のキムチになるには日本側の要求を容れることもやむを得ないという人も。まず貿易のパイを大きくしようという考えからだ。

 しかし、日本の旨味(化学)調味料がアジアを席巻し、伝統的調味料がすたれたように、商品化が巧みな日本のキムチが本来のキムチに取って代わるのではないかと危惧する人もいる。

 この問題を追いかけている月刊『焼肉文化』の朴健市社長は「キムチモドキを本物のキムチと勘違いしないでほしい」と伝統製法の正統性を訴える。

 日本の居酒屋でもキムチを置いていないところがないほどキムチが普及したように、規格が定まれば今後は世界にキムチが出荷されるという状況も遠くはなさそうだ。

 伝統的製法を守ろうとする韓国側と日本風のキムチづくりを取り入れようとする日本側。せめぎ合いはまだ続きそうだ。

(1999.05.26 民団新聞)



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