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武力挑発を排し恒久平和を



 6月15日の朝、緊張の続く黄海海上で韓国と北韓の艦艇による銃撃戦がついに発生した。

 北韓艦艇は今月7日に海上の軍事境界線となっている北方限界線を越えて韓国側領海を侵犯し、一週間以上も南北韓双方のにらみ合いが続いていたが、この問題について国連軍と北韓軍の将官級会談が予定されていたその日に、韓国側に向けて火を噴いたのである。

 対話による緊張緩和を拒否し、軍事行動に走った北韓は、一体何の企図でこの時期に世界の耳目をコソボ紛争から韓半島に引き寄せたのだろうか。

 去る5月25日から米国のペリー対北政策調査官がクリントン大統領の親書を携えて平壌を訪れ、核やミサイルなどの大量殺傷兵器の開発・輸出の放棄などの遵守と引き替えに、食糧支援や日米との関係改善を図る、いわゆる「一括妥結案」を提示したばかりである。

 また、6月21日には1年2カ月ぶりに南北次官級会談が開かれるという矢先であった。この会談を開く前提として韓国は北韓に肥料20万トンの提供も約束し、すでに積み出しを始めている。


■危険な金正日政権の瀬戸際政策

 不幸中の幸いと言うべきか、韓国は金大中政権が掲げた「包容政策(太陽政策)」の原則の一つ、「いかなる軍事的挑発も許さない」との安保体制を堅持し、領海侵犯を艦艇が体当たりで防ぐギリギリの作戦で「第2の6・25」には拡大させなかった。とはいえ、北韓が誘発した同族間の武力衝突で、またも尊い同胞の命が無惨に散った。韓国国防省の推定では北韓側に約80人、米国防総省の推定でも30人の死傷者が出たという。

 かつての南侵トンネルが示すように、北韓は表向きには南北対話のポーズを取りながら、裏では要人テロや戦争準備に奔走する国である。最近では核やミサイル、軍事力を誇示しながら、自分たちに有利な外交を進めるのを常套手段にしている。

 そして、二枚舌の事実が発覚すると「南の自作自演」と声高に逆宣伝を始めるその手口で今回の艦艇による交戦についても韓国側に責任を転嫁した。さらに、16日の朝鮮中央放送は、同日付の北韓の労働党機関紙などが、「軍事力が最後の外交カード」だ、と論説したことも明らかにした。

「南北合意書」の精神に立ち返れ

 92年に発効した「南北基本合意書」が、今になって失効したわけではない。相互不可侵も明記してある。にもかかわらず、北韓が一方的にそれを破棄して武力挑発や軍事的緊張を煽るのは決して許されるものではない。それは単に韓半島だけに限定された地域の問題ではなく、世界平和を脅かす最大の暴挙だからである。

 北韓は今年夏にもテポドン2号を発射するのではないか、という見方が出ている。20日に終わったドイツのケルンサミットでは、主要7カ国とロシアが北韓のミサイル実験について「深く憂慮」すると表明している。一方の手で食糧を求め、もう一方の手には剣をちらつかせる北韓は、もはや国家の名に値しないが、それでも韓国にとって同じ対話のテーブルにつく平和統一の相手には間違いない。

 われわれ在日同胞は強い怒りを込めて、北韓にこれ以上無謀な挑発を止めるよう要求するとともに、南北当局には平和統一というわが民族の至上課題実現のために人類の英知を結集した自制と冷静な対応を求めたい。

(1999.06.23 民団新聞)



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