| 授賞式であいさつする萩原さん |
■選考委員5人満票で
第30回大宅壮一ノンフィクション賞(財団法人日本文学振興会・安藤満理事長)の贈呈式とパーティが16日に帝国ホテルで開かれ、『北朝鮮に消えた友と私の物語』で受賞した萩原遼さんが、この日のために在日同胞があつらえてくれたという洋服に身を包んで登壇した。
萩原さんは過分な評価と感謝を述べた後、「全土が強制収容所と化した北朝鮮という闇の中に閉ざされている帰国者の真実を、白日のもとに引き出すことができたのも在日と知り合えたから。日本人も在日も彼らの悲劇を忘れず、日本の地を踏むことができるよう声をあげ続けよう」と喜びの声をアピールに替えた。
5人の選考委員を代表して作家の立花隆さんは、「萩原さんの作品は満票ですんなり決まった。エピソード一つひとつが作りものでないすごさを持ち、同時代を生きる者に歴史の暗部を照らす厚みのある作品だ」と賛辞を送った。
式には萩原さんが共同代表の1人として関わる「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の小川晴久、金民柱両共同代表や同関西支部の山田文明・大阪経済大教授らのほか、RENKの金英達代表、大谷大学の鄭早苗教授、朝日放送の石高健次報道部長ら関係者がお祝いに駆けつけた。
同著は在日同胞を北韓の生き地獄に追いやった「北送事業」や済州道の「4・3事件」にメスを入れた作品。昨年11月末に文藝春秋から出版され、去る4月13日に受賞が決まった。著書『朝鮮戦争』で同賞の候補にあげられたことのある萩原さんにとって、うれしい初の受賞となった。
(1999.06.23 民団新聞)
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