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道半ばの公務員・国籍条項撤廃



 大学卒業程度を対象とした九九年度公務員採用試験が各地で始まった。いまや都道府県、政令指定都市の一部でも、自治省が「聖域」としてきた一般行政職を受験できる。門戸が広がりつつあるのは、国籍のために自己実現の機会を奪われてきた在日同胞として歓迎したい。

 政令指定都市でみると、九六年の川崎市を皮切りとして大阪市、横浜市、神戸市と広がっている。都道府県レベルでも神奈川県、高知県、沖縄県、大阪府と続き、三重県も今年度から開放に踏み切った。「自治体の裁量にゆだねる」とした九六年十一月の白川自治相発言も追い風の役目を果したようだ。

 しかし、その内容には疑問がある。川崎市では部長以上の管理職昇進はもとより、「公権力の行使、公の意思形成の参画」にかかわるものと判断している税金徴収員、食品衛生監視員など十五職種百八十二職務に外国籍者を任用しない。自治省見解に忠実に従ったこの「川崎方式」が、いつのまにか独り歩きしているからだ。


■公の意思形成への参画

 川崎市同様、大阪府でも本庁の課長以上や財政課、人事課と各部局の人事、予算担当などが「公の意思形成への参画」に、許認可や立ち入り検査、補助金・交付金の決定などの職務が「公権力の行使」にあたるとしている。一方、高知県などのように司法警察員としての職務につく狩猟に関する事務職、麻薬取締員、漁業監察員というごく限られた職務を除いて任用の制限を設けていないところもある。

 「川崎方式」が明らかになった当時、法相であった後藤田正晴元副総理が「あれは一番良くない。かえって差別を認めることになる。同じように一般行政職に採用されながら、将来いざ管理職を受ける段になったら、お前はだめだ、というのではひどい話だ」(日経九七年7月二十九日)と発言している。労働基準法第三条(均等待遇)、及び職業安定法第三条(均等待遇)は、いったん職場に採用された労働者が外国人だから初めから管理職に昇進させないとか、労働条件に制限を加えるようなことはしてはならないと明記している。


■職務につけぬ理由を明確に

 東京高裁でも、国籍を理由に鄭香均さんの管理職受験を認めなかった都の行為を違法とする判決を下した。この判例に忠実に従うならば、「川崎方式」を採用している自治体は、外国人がつけないとする職務についてその理由を明確にするべきだろう。

 自治省が自治体に国籍要件の遵守を求めてきたのは「外国人を採用した場合、将来、公権力の行使に携わる職につく可能性が高い」ということにある。しかし、自治省でも、どの職種が公権力の行使にあたるのかは「一律に範囲を画定することは困難」(七九年の政府回答)として自治体の判断にまかせている。自治体が法律でもない「当然の法理」を拡大解釈、「命令する人が外国人であれば一般の日本人が嫌がるだろう」ということを前提に「公権力の行使」を考えていたとするのなら、「外国人を排除、差別する結論が先にあった」と言われてもしかたあるまい。

 「川崎方式」は全国に先駆けて内閣法制局見解に風穴を開けた。外国人との共生のルールをつくろうとしたことも評価できる。しかし、あくまでも最低限の枠組みを示したにすぎない。川崎市が国際化に向かってさらに一歩前進するためにも、自治体はそろそろ「川崎方式」を絶対とする流れを変えていくべきであろう。

(1999.07.07 民団新聞)



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