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よみがえる解放後の在日運動史

故・朴慶植氏の遺産を復刻へ



文化センターアリランに置かれた当時の資料

■現存の一次資料復刻へ

 【埼玉】在日同胞史研究家、故朴慶植氏の収拾した解放後の在日同胞団体の息吹を伝える貴重な一次資料の数々が、『在日朝鮮人関係資料集成戦後編』(全7巻10冊構成)としてまとめられる。編さんに取り組んでいるのは埼玉県川口市内にある文化センターアリランに集う研究者たち。第一巻の『朝鮮人連盟関係資料』は来年初めにも不二出版から刊行される予定。

 朴氏が半生をかけて収拾したのは、解放直後の朝鮮人連盟発足当時から今日に至る在日同胞運動史に関わる書籍、新聞、雑誌などの刊行物、ビラ、チラシ、大会報告書など。朴氏は、これらを体形的に整理、展示できる「在日同胞歴史資料館」の建設を夢見て一部目録作りにも入っていたが、志半ばにして昨年の2月、不慮の事故で亡くなった。

 朴氏の死後、遺族は資料の散逸を恐れて所蔵資料を受け入れてくれる場所を探していたところ、受け入れスペースなど条件的に最も整っていたジ賀県立大学に「寄贈」した。大学側では早速目録作りに取り組んでいるが、このうちのビラ、チラシ、大会報告書などの一次資料については昨年、文化センターアリランに委託した。ダンボール箱に詰め込まれていた膨大な資料の数々は、2トントラック1台を優に満たすほどの量だったという。


■資料集全7巻10冊に編纂

 文化センターアリランでは、朴氏と共に「在日朝鮮人運動史研究会」を構成していた若手研究者が、目録の編さんに取り組んできた。そのうちに「遺志を継いで本を出そう」ということで一致、貴重と思われるものを『資料集』に収めることになった。

 先ず第一巻から第四巻まででは朝鮮人連盟結成と分裂に至る経過が、中央委員会議事録・報告書などで語られる。

 第3巻の『在日本大韓民国居留民団・在日大韓青年団関係』では中央報告書のほか、韓国動乱に際して「民団東京本部非常対策委員会」の発表した「北緯38度線の事変に際して再び日本国民諸賢に告ぐ!」(1950年7月15日)といった文書も見られる。

 第4巻では朝鮮人連盟解散から民戦結成までをまとめた。なお、1955年の総連結成以降の資料については著作権の問題にぶつかるために見送られた。

 このほか、『戦後初期在日朝鮮人名鑑・年鑑』(第五巻)、『教科書・教育関係雑誌』(第六巻)、『朝鮮人刊行雑誌・新聞』なども貴重な復刻資料といえるだろう。

 いずれも当事者が自ら記帳し、発行したものばかりというのが大きな特徴だ。研究者の1人、樋口雄一さんは「戦後の在日朝鮮人の資料ではこれほどまとまったものはなかった」と話している。復刻にあたっては資料コピーとともに簡単な解題もつけていくという。

 第1巻は朴氏の3回忌にあたる来年の2月までに刊行し、墓前に捧げることにしている。

(1999.07.07 民団新聞)



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