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民族学校生、国立大受験に道

文部省が「大検」受験資格緩和へ



■迂回措置以前残るが
 民族学校認知に一歩前進

 学校教育法第1条に定める「学校」ではないとして民族学校在学・卒業生に大学入学資格検定試験(大検)の受験資格を認めてこなかった日本文部省は8日、来年度から大検の門戸を広げると発表した。この結果、民族学校出身者でも18歳に達していれば2001年度から国立大の受験・入学が可能となる。

 東京韓国学校、京都韓国学園及び朝鮮学校などは「各種学校」の扱いを受けているため、日本の中学に相当する課程を修了していても義務教育修了とは見なされてこなかった。大学を受験するためには毎年夏に行われる大検に合格する必要がある。その場合も通信制や定時制の高校に通い、大検の受験資格を得ることが前提となっていた。

 民族学校出身者の金海永さんの場合、県立の定時制高校に日曜ごとに通い93年、京都大学に入学した。その後、「同じ高校生なのに朝鮮学校に通っているからだめというのは納得できない」と95年8月、国連人権委員会差別防止小委員会で「制度もカリキュラムも日本の公立校とほとんど変わらないにもかかわらず、卒業生に受験資格を与えないのは高等教育を受ける権利をスタートから奪うものだ」と発言している。

 これに対して、日本政府の代表は「日本政府の教育に対する正当な理解がなされていない」。「正規の日本学校」には性別、国籍を問わず入れるとの趣旨の発言をしている。

 発言の根拠としているのは、民族学校の存在を認めず日本の学校への就学を義務づけた「朝鮮人学校の取り扱いについて」と題する文部省学校教育長通達(1948年1月24日付け)と、「日韓法的地位協定における教育関係事項の実施について」「朝鮮人のみを収容する教育施設の取り扱いについて」だ。

 この文部事務次官通達は各自治体知事と教育委員会委員長に宛てて1965年12月28日付けで出ている。内容を見ると、韓国籍=協定永住権を取れば日本の公立小・中学校で日本人と同様の手続きで学べ、卒業後は日本の上級学校への受験資格を認める。民族学校は私立学校としても、各種学校としても認可すべきではないとするもの。ここには文部省の露骨な政策的方針が透けて見える。

 しかし、共生社会構築がいわれるなか多くの自治体が民族学校を各種学校として認可していった。国立だけがかたくなに門戸を閉ざす中、30を超える公立大、私立大に限っては220以上の大学が外国人学校の卒業を受験資格と認めている。文部省は、各種学校の認可すら認めていなかったために受験資格を制限するという自己矛盾的状況に陥っていた。これでようやく世間一般の水準に一歩近づいたといえる。


■大学院受験も可能に

 大学院の受験資格の緩和などを検討してきた文相の諮問機関の大学審議会は、受験資格に制限を設けず各大学院が個別に判断すべきだとした同大学院部会の報告を了承した。これにより、ほとんどの国立大で門前払いされてきた朝鮮大学校や外国大学日本校の卒業生に対し、本年度の入試から門戸が開かれる。

 報告は、大学院で学ぶ意欲と能力がある22歳以上の人に、広く大学院の入学資格を与えるべきだとしている。

 文部省は8月上旬、同審議会からの答申を受け、来年4月の大学院入学に向けた今秋からの入学者選抜に間に合うよう法令などの改正を進める方針。


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■大学入学は実力次第、「大検」不要では

 洪性豪さん(東京韓国学校校監)の話

 高校の進学クラスを担当するようになったとき、文部省には何回も足を運び、なぜこんなことになっているのかと問いただした。あれから24年ぶりの門戸開放となる。感無量だ。しかし、大検が本当に必要なのかどうか、いまだに疑問に思っている。大学に入れるかどうかは本人の実力次第ではないか。大検を受けなければ希望の大学を受けられないのはどう考えてもおかしい。

■一歩前進だが…遅きに失した

 李虎雄さん(京都韓国学園校長)の話

 今回の措置によって二つあった垣根が一つ取り払われたことになる。各種学校である本校にとっては、国立大学受験のために通信制高校に入学するという迂回をする必要が無くなったので一歩前進と受け止めるものの、遅きに失したと思う。

 残るはもうひとつの垣根である大検合格を必要としなくとも、本校を卒業すれば国立大学受験が可能となるようにさらなる配慮を求めたい。

(1999.07.14 民団新聞)



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