民団新聞 MINDAN
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国のシンボル



 じっとしているだけでも汗が流れ出る季節。一万人以上の観客が見守る中、ラグビー韓日定期戦の第一戦が行われた。ウィンタースポーツの代名詞とも言われるラグビーをなぜ湿っぽくて暑苦しい梅雨の最中にやるのか、わからないまま同じフィールドに立っていた。

 両国の選手入場で場内の雰囲気は高まり、いよいよ両国の国歌が流れる厳粛な瞬間。韓国側の選手たちは右手を胸にし愛国歌を待つ。

 「トンヘムルグァベットゥーサニ」と始まるはずの愛国歌が、主催側のミスであまり耳慣れていないイギリス国歌が流れてしまった。一瞬何が起こったのか、韓国サイドと選手たちは右手を胸にしたまま動揺する様子。その後、主催側は慌てて韓国の国歌を流し、試合は始まったが、私の心の中では尾を引くような何かが残っていた。

 歴史も浅い韓国チームが東京のど真ん中で国際経験豊富な日本チームとスクラムが組めるだけでも気持ちが高ぶるのに、私の期待感にいきなり冷水をかけられたような気がして仕方がなかった。

 韓日両国のラグビー交流を通じて、アジアのラグビーを盛り上げようという立派な趣旨のもとこのようなミスは致命的な汚点として刻まれる。

 韓国人にとって国歌、国旗は民族を一つにしてしまう不思議なパワーを持つ。それは、在日韓国人にとっても言うまでもないことだ。

 賛否二分する「君が代・日の丸の法制化」の激論が連日飛び交う一方で、このような出来事は謝罪の場内アナウンスで簡単に水に流してしまうものではないはずだ。

 日頃の小さな積み重ねが、二〇〇二年に韓国と日本を一体化するのではないかと思いながら、複雑な気持ちでラグビー場を後にした。(H)

(1999.7.21 民団新聞)



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