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地方参政権問題、一日も早い国会審議を



 現在、衆議院の「政治倫理及び公職選挙法改正特別委員会」に付託されている、「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等の付与に関する法律案」は、与党側が「もう少し勉強したい」という理由で実質審議を先送りしている。

 国会で本格的な審議が始まらない大きな理由は、与党内の議論が一つに集約されてないから、というものである。

 自民党では、党内推進派幹部が池田行彦政調会長に在日韓国人の地方参政権付与の早期実現を要請しているが、池田政調会長は、「党の選挙制度調査会長に具体的な作業を進めるよう指示している。私に任せてほしい」と答えている。

 すでに日本政府では、野中広務官房長官が「いつまでも放置してよい問題ではない」として、自民党内の早期取りまとめを要請している。だが、肝心の党選挙制度調査会の検討会議では、賛成意見とは別に「外交、治安、地域問題にもかかわる」「帰化条件の緩和を検討すべきだ」などの慎重意見があって結論が出ていない状況である。


政治的決断をすべき時

 八月十三日までの延長国会は九九年度補正予算案、国旗・国歌法案などの重要法案が目白押しである。永住外国人の地方自治体参政権問題については与野党間の温度差もあり、今国会での審議入りが微妙だ。

 一方で朝鮮総連の執拗な反対運動もあり、与党幹部も苦慮しているようだ。森喜朗自民党幹事長は、「日韓首脳会談で再三議題にされている。小渕首相からも党内を早急にまとめるよう指示されている」と述べ、政治決断の時期にきていることを示唆しているが、党内の慎重派をまとめ切れていないのが現状のようだ。

 付与慎重派は、国政と地方自治体レベルの選挙権を混同し、国民主権の立場から外国人住民に参政権を付与することに感情的に反発しており、「ほしければ帰化せよ」という意見である。

 また、北韓を支持する朝鮮総連傘下同胞が十万人以上おり、ミサイル問題や日本人拉致、工作船等の問題もあり、彼らに選挙権を与えるのは治安上問題があるという危険論である。外国人住民は何をするかわからない「害国人」であるという誤った意識ほど、排他的で日本の国益を損なう考えはないだろう。


与党が率先して解決を

 私たちは開かれた日本社会を望んでいる。私たちが要望している地方参政権は、一言でいえば「住民としての資格をください」というものだ。長く住む在日韓国人住民に対し、住民としての資格として地方自治体レベルの参政権を付与することは国際大国、日本の民主主義の成熟を示すもので、すでに四年前に最高裁も憲法上禁止されていないと判断しているものである。  日本を守ろうという意識が過度になって、国際化ではなく、逆の国粋化に向かっていくことは厳に避けなければならない。

 すでに千四百自治体議会が定住外国人の地方参政権の確立を政府に求める意見書等を決議しており、この数は日本の人口比で見ると七二%以上となっている。

 大きな流れは付与の方向にある。自由党の小沢一郎党首はこの問題について、「リーダーがきちんと決断しないと解決は難しい。大統領は過去の問題を乗り越えようと決断した。今度は日本人自身が決断し、誠意を示すべき時だ」と答えている。

 本団としては、戦後一貫して日韓親善に尽くしてきた与党が率先してこの問題の解決にあたることを切に願っている。

(1999.7.21 民団新聞)



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