民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
共生と平和の願い、広島から世界に

平和公園内で初の韓国人慰霊祭



民団広島本部を代表して
追悼の言葉を述べる朴義鍾団長

■慰霊碑建立から29年ぶり実現

 【広島】広島市中区の広島平和記念公園で5日、第30回韓国人原爆犠牲者慰霊祭が行われた。公園内での慰霊祭は、公園西側の本川橋沿いに建てられていた碑の移設が実現して以来、初めてのこと。民団広島県本部関係者は、わずか数百メートルの距離を移動するのに29年間の歳月を要したことに感慨深げな表情を見せていた。

 この日の慰霊祭には、遺族のほか、内外からの来賓も含め300人余りが参列した。まず、民団広島県本部を代表して朴義鍾団長が「慰霊碑の移設を契機に、これからも平和の尊さと反核の願いを世界に発信していきたい。安心してお眠り下さい」とあいさつ。

 続いて、朴浚圭韓国国会議長の追悼辞を金ボンホ同副議長が代読、同じく金鍾泌国務総理から寄せられた追悼辞を金セキ圭駐日大使が読み上げた。この後、辛容祥民団中央本部団長が追悼辞で、慰霊碑の移設にあたって在日二世が担い手となったことを称えた。

 慰霊碑には今年新たに死亡が確認された31人の同胞名簿が朴団長の手で奉納された。広島市内での原爆による死没者はこれで2558人となった。続いて、婦人会広島県本部が原爆犠牲者慰霊歌を斉唱して霊を慰めた。

 この後、参列者全員が菊の花を手向け黙とうした。駐広島総領事館からチョ・ギュテ総領事、民団中央本部からは河ビョンオ議長、張煕東監察委員長も献花した。

 同慰霊碑は、「公園の外にあるのは差別」と訴え続けてきた民団広島県本部関係者の長年の訴えを受け、市が公園内への受け入れを表明、今年7月に移設が実現した。同21日の移設完工式には民団中央本部を代表して金容雨副団長が出席した。


■小渕首相も韓国人慰霊碑参拝
 歴代首相初、民団の働きかけで実現

 【広島】広島市の平和記念式典に出席のため広島入りした小渕恵三首相は6日、平和記念公園に移設されたばかりの韓国人原爆犠牲者慰霊碑に立ち寄り献花した。1970年に碑が建立されて以来、日本の首相が訪れたのは初めて。

 被爆者代表から要望を聞く会に出席した小渕首相に、民団広島県本部の鄭達男国際部長が「(公園の外から内へ)碑の移設がかなった。首相も立ち寄ってくれれば慰霊になる。彼らは日本国のために働き、犠牲になったのだから」と求めた。小渕首相も快諾した。

 正午すぎ秋葉忠利広島市長と平和記念公園に到着した小渕首相は、碑銘を読んだ後、一礼して白ユリの花束を献花、十秒近く深く頭を下げた。


■民団中央団長の追悼辞
 英霊の願い、2世の代で

 日本の軍国主義がなければ強制徴用もなかっただろうし、懐しい故郷の地で温かい家庭を持って幸福に暮らしていたことでしょう。それが20歳前後の若き青春を一度も花咲かせることなく、悲惨にも惨事に遭ってしまったことを思うと、気の毒で悲痛な気持ちを押さえきれません。

 ただただ亡国民の運命を慨嘆するばかりです。たからこそ今日、我々はこの地で尊敬を受けながら暮らして行かねばならないのです。

 それで私たちは1946年10月3日に在日韓国民団を創立し、数多い差別と闘ってきました。その中で特記できる運動が指紋押捺撤廃運動の成功でありました。現在は私たちの法的地位を確立するために、地方参政権獲得運動を94年から積極的に展開しています。

 また、我が本国では一生を民主主義と人権のために戦ってきた金大中大統領の国民政府が誕生し、大統領自らの哲学と信念のもと、私たちの地方参政権獲得運動の成就のために積極的に取り組んで下さっています。

 金大統領は昨年10月7日、日本公式訪問時にも私たちの参政権実現のために日本政府に対し声を掛けてくれました。従いまして地方参政権は近い内に必ず立法化されます。そのときは、我が在日同胞がこの地で地域住民として誇りを持って日本で共存共栄しながら、子々孫々まで韓国人として堂々と繁栄できることと思います。これこそが亡くなった英霊たちの願いをかなえることだと思います。

 韓国人原爆慰霊碑に関しては29年前の建立当時、平和記念公園には入れず、やむなく本川橋西詰めに建てざるをえませんでした。その当時の建設委員長であった張泰煕民団広島本部顧問、原爆対策委員会の姜文煕委員長をはじめとした民団幹部と有志、及び遺家族のみなさんの恨みは言葉では語り尽くせぬものでありました。

 しかし、今日、平和の象徴で聖地ともいえる平和記念公園に移設されたことによって慰霊碑の問題は終結を迎えました。

 権養伯移設準備委員長および朴義鐘民団団長ら移設準備に関わったのは二世です。一世ができなかったことを二世たちの手で成し遂げたことは、我が在日同胞全体と将来に対して大変な鼓舞的なことであります。

 恨みの多い英霊たちよ!

みなさんが受けた差別と侮蔑を我が時代では尊敬と繁栄に変え、一世でできなかった事を二、三世が受け継ぎ必ず成就できるようにしますのでどうぞ安らかにお眠り下さい。

(1999.08.15 民団新聞)



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