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未来のヒーロー育成へ

趙栄増・韓国ユース監督に聞く



 本選5回の出場を果たしながら未だ勝利を味わっていない韓国。2002年大会のホスト国となる韓国は是が非でも悲願の1勝を、そしてベスト16を達成しなければならない。若手の育成を担っている韓国ユース代表監督の趙栄増氏に展望などを聞いた。


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■世界とアジアのレベル

 >>毎回期待されながらも韓国が未だ悲願の1勝を成せないのはどこに問題があるのか。

 趙 はっきり言って世界とアジアのレベルの違いだ。世界の壁がいかに高いかを韓国は肌で感じている。しかし、この壁を乗り越えるための長期的なプランを立ててこなかったことが大きな原因だ。

 青少年たちを10年、20年先を見据えた計画で、運動能力、経験、環境など、世界レベルに追いつくために必要なものを養っていかなければならない。


■長期的育成プラン必要

 >>青少年代表の育成を担う趙監督にとっても、2002年W杯に向けた若手の台頭が待ち望まれるが。

 趙 韓国サッカー界が大きく若返りを見せているのは確かだ。昨年の世界ユース・ナイジェリア大会に出場したメンバーや、五輪代表メンバーの中から2002年W杯代表の可能性が高い有望な選手が数人いる。

 代表的な成長株として李東国、金殷中、高鍾秀、安貞桓があげられ、2002年では彼らが中心的な役割を果たすことになるだろう。


■子どもたちのためにも環境整備を

>>子どもたちの育成に対する韓国サッカー界の課題とプランは。

 趙 とにかく韓国の子どもたちは昔から、時間と場所さえあれば、いつでもサッカーをやっていた。しかし、これからは環境を整えることが必要だ。芝グランドの増加や、子どもたちに夢を持たせることが大切だ。サッカーがうまくなれば世界的に有名な選手になり、経済的にもビッグになれるんだという希望を持たせ、その夢に向かって技術的な成長が加わっていけば、世界レベルのプレイヤーが多く誕生するだろう。

 しかし現在、韓国サッカーには制度的な問題がある。クラブチームとは違い、小学、中学、高校といった学校レベルでのチーム構成が中心だ。ともに全国大会で優秀な成績を納めた学校に所属した選手だけが上(名門校)に行くという「一本釣り」のシステムになっている。このことが底辺層の育成・拡大に大きな障害となっている。この改善がいち早く望まれる。


■国民に根付いたプロサッカー

>>一時期、低迷しかけた韓国プロサッカー(Kリーグ)が昨年、史上初の観客200万人を突破するという、人気ぶりだが。

 趙 原因はいくつかある。まず、2002年W杯に向けた国民たちのサッカー熱。2番目に、Kリーグのレベルの向上によって、好ゲームが続いていること。3番目は人気スターといわれる若手選手の活躍ぶりで、中・高校生ファンが急増したことだ。そしてなによりも韓国にプロサッカーというものが完全に定着したことだ。さらに、マスコミのサッカーに対する関心の高さも大きな要因だ。


■在日同胞の後援が韓国サッカー発展に

 >>在日同胞も2002年W杯成功への一助になりたいと「後援会」を発足しましたが。

 趙 在日同胞の後援活動は大変うれしいこと。募金ももちろんだが、韓日の架け橋としての役割を果たしていくものと信じているし心強い限り。このような後援活動は韓国サッカーの発展にも大きな励ましになると思う。祖国と在日同胞と日本の連帯がさらに深まっていけばうれしい。


趙栄増(チョ・ヨンジュン)

 1954年8月18日生まれ。国家代表選手10年間。86年メキシコW杯に出場。81年に米国プロサッカーリーグに入団。83年韓国プロリーグの発足に伴い、LGに入団し4年間の現役を送る。以降、LG、現代のコーチ、LGの監督を経て99年から青少年代表監督に。

(1999.08.15 民団新聞)



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