民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
「希望と繁栄の新たな千年開こう」

光復節・金大中大統領慶祝辞



■希望と繁栄の新たな千年開こう

 敬愛する国民の皆さん!

 きょうは光復54周年を迎える日であり、新しい1000年を前にした20世紀を結ぶ8・15慶祝日です。

 この意義深い場を借りて、まずは国をとり戻すために犠牲となった先烈への感謝と冥福を祈ります。また国民の皆さんに心から愛と尊敬のごあいさつを申しあげます。

 われわれは今日、一つの時代を締めくくり、新しい時代を開く転換期に立っています。この歴史的な時点で私は、過ぎ去った我が民族史を振り返るとともに新しい1000年の未来に対して皆さんと一緒に考えてみようとします。

 大韓民国の過去100年は一言で挫折と不屈の献身が交差した時期でした。

 朝鮮王朝末、為政者らは世界の大きな流れを悟ることができず、近代化を無視しました。彼らは党争に時間を費やしました。改革的な指導者もいましたが、国民とともに改革を推進するのに失敗しました。その結果ついにわれわれは恥辱の植民地国家に転落してしまいました。

 しかし、我が国民は最後まで挫折しませんでした。 国を失ったその瞬間から解放の日まで独立のための武装闘争を繰り広げました。最後まで臨時政府の法統と看板を守りました。このようなことは世界の植民地史で例のないことです。いかに荘厳で誇らしいことでしょうか。

 解放後、想像もしなかった国土分断と韓国動乱を経験しながらも、我が国民は屈しませんでした。全国民が一つになって共産侵略から国を守りました。また戦争の廃虚の上に漢江の奇跡を成し遂げました。

 半世紀にわたった独裁体制下でも民主主義のために我が国民の犠牲と献身は続きました。その犠牲の結果、ついに1997年12月18日、アジアでは珍しく国民の投票で与野間の政権交替を成し遂げました。

 しかし、どういうことでしょうか。政権交替のその瞬間からわれわれはIMF体制の経済危機に見舞われました。しかしわれわれはまた立ち上がりました。政府と国民が一つになって6・25動乱以降の国難である外貨危機の克服を成し遂げました。このような私たち国民の底力は世界を驚かせました。

 今日、20世紀の最後の光復節にあたり、われわれは堅く誓い合うべきです。近づく21世紀には朝鮮王朝末のような歴史の流れに背を向けたり、また内部争いと対立で跳躍の機会をのがしてはだめです。


 尊敬する国民の皆さん。

 私は国民と歴史の前に必ずこの地に民主化を成し遂げると約束したことがあります。このために私は過去四十余年間あらゆる迫害と死の恐怖の中でも国民の皆さんとともに闘いました。ついに政権交替を実現することによってこの約束を守ったと考えます。

 IMF危機状況下、大統領に就任し、私は国民の底力に対する確信があったからこそ、1年半の内に外貨危機に打ち勝つと約束し、またこの約束を守ることができました。

 対北韓政策においても安保を土台にした包容政策を一貫して推進し、韓半島の戦争危機を減少させるという約束を守っています。そして北韓の西海での挑戦を初戦に阻止しました。南北交流にあっても相当な進展を成し遂げました。北韓の伝統的な友邦であるロシアと中国を含め、韓国の包容政策に対する全世界の支持を得るのに成功しました。

 しかし、私が守っていない約束もあります。まさに内閣責任制の問題です。皆さんもご存知の通りこの約束をした当時にはIMF危機が予測できない状態でした。今でも経済不安は続いています。南北関係は少しも目を離すことができないほど微妙で複雑です。

 その上、政治は今揺れるだけ揺れて国会が内閣制を受け入れるだけの態勢が整っていないと思います。あらゆる世論調査結果を見ても、国民の多数が今の時点で内閣制を望んでいません。それで内閣制を合意した自民連と相談した結果、この問題を延期することに合意しました。

 理由はどうであれ、国民の皆さんに心配をかけた点に対しては申し訳なく考えます。皆さんの理解を求める限りです。


尊敬する国民の皆さん。

 これから私たちは新しい決意で21世紀を準備しなければなりません。何よりもまず政治を正さなければならないのです。

 今、韓国の政治は自ら改革していく見込みが見えない状態です。政治が国の発展を先導するのでなく、むしろ足を引っ張っています。政治改革は私たちにとって最も急ぐ仕事になりました。地域党構図から抜け出し全国政党化のための選挙制度が必要となります。今のような地域分割構図ではこの国の未来が暗いだけです。

 選挙公営制を強化しなければなりません。金を使わない選挙を定着させて選挙不正の根源を断ち切らなければなりません。政党法を改正して政党の組織と運営体系を簡素化させ、費用を最小限にしなければなりません。政治資金法を改正して政治資金を透明にし、透明性をもって使わなければなりません。

 国会法を直して常任委中心の国会から本会議中心の国会に作りあげねばなりません。そうすることですべての国会議員がすべての国政審議に責任感を持って参与する生産的な国会を作らなければなりません。

 議会政治が討論と相互協力の場になり、多数決原則によって憲法の通り運営される国会にならなければなりません。強行通過も表決阻止もなくさなければなりません。

 一部で言われる私の大統領選挙資金に対して一言申し上げます。私の大統領選挙資金は歴代政権のもとで権力機関による数えきれない捜査がありましたが、不法なことは一つもありませんでした。もちろん政治資金をもらって使いました。しかし、明確に申し上げることは、私は決して不正をしたり不法な政治資金を受け取って使ったことがありません。

 人権と民主主義を発展させるために改革立法を必ず成立しなければなりません。民主化と人権保障は私の一生の変らぬ所信です。誇らしい人権国家を作るという決意で「人権法」を制定して「人権委員会」を設置します。

 変化する南北関係をまともに反映できていない「国家保安法」も改正します。人権侵害の素地がある部分も改正します。「腐敗防止法」の制定も必ず推進していきます。法制定に先立ちまず大統領直属の「反腐敗特別委員会」を構成します。腐敗との訣別なしに国政の改革はありません。私は万難をものともせず断行します。国民の皆さんの積極的な支援が必要です。

 公正な法執行を通じて明るくて正しい法治をより一層発展させます。そのため司法制度を成立させようと現在、「司法改革委員会」で改革作業を推進しています。これとともに「統合放送法」「民主有功者報償法」「疑問死真相糾明特別法」「非営利民間団体支援法」などを改正、または制定することによって改革政府の正統性をより明確にしていきます。

 次にこの頃論議されている新党に対して申し上げます。

 韓国の政治がそれなりの役割を果たしていないことに対しては、執権党としてまずその責任を痛感しています。

 与党の国民会議から新しく生まれ変わります。それによって国民に信頼と希望を与える党になります。

 新党は中産層と庶民を中心とした改革的国民政党として登場します。人権と福祉を重視する政党になります。地域構図を打破する全国政党になります。21世紀の知識基盤時代を率いていく政党になります。信望ある人士と各界の専門家、活力ある若年層を全国的に迎え入れます。

 改革的保守勢力と健全な革新勢力まで迎え入れ幅広い政党を作ります。女性指導者を積極的に迎え入れて女性比例代表議席の30%を配定します。


 尊敬する国民の皆さん!

 あわせて私たちは成功できる経済繁栄を成し遂げなければなりません。

 過去1年半の間、金融、企業、公共、労働等の四大部門の構造改革に力を注ぎ、私たちは世界を驚かすほどの経済回復の成果を成し遂げました。これは国民と政府が力を合わせ努力した結果です。しかし、まだ半分の成功にしかすぎません。改革をより一層強く進行させる必要があります。

 特に財閥改革に力点をおきます。韓国経済の最大の問題点である財閥の構造改革なしでは経済改革を完成させることができません。今は市場が財閥構造を受け入れない時代です。量の時代でなく質の時代です。今後無限競争の世界で成功するためには、財閥の集団ではない個別企業が独自に世界超一流の競争力をもたなければなりません。

 財閥改革のためにその間推進してきた透明性向上、相互支給保証の解消、財務構造の改善、業種専門化、経営陣の責任強化等の五大原則が今年末まで必ず達成されなければなりません。

 さらに系列金融会社を通した財閥の金融支配を防止します。産業資本の金融支配を防止してこそ財閥改革を成功させることができます。循環出資と不当なインサイダー取引を抑制して、変則相続を徹底的に防止します。

 私は韓国歴史上、初めて財閥を改革して中産層中心に経済を正しくした大統領になります。

 最近国内外で憂慮している一部財閥に対しても、明確な原則によって厳正に処理して「第二の起亜事態」のような事が決して起こらないようにします。

 21世紀、世界一流の国家として跳躍するためには知識基盤、経済を作らなければなりません。

 このためにはコンピュータとインターネット等の情報活用が重要となります。韓国が世界でコンピュータを最もよく活用する国にならなければなりません。

知識経済時代には中小・ベンチャー企業と文化・観光産業のような知識サービス産業の発展が必要です。これとともに伝統産業の農業と繊維、電子、自動車産業等、あらゆる産業においても知識を活用して付加価値を高めていかなければなりません。

 知識を活用した農漁民の成功事例の通り、全国民が新知識人になれるように努力しなければならないのです。

 私は就任以来1年半間、外貨危機の克服に全力を注いできました。今後も任期中には世界一流の経済発展と健全な経済体制を成し遂げるために全力を尽くします。

 昨年、一人当り六千八百ドルに落ちた国民所得を来年には一万ドルの水準に引き上げて、2002年までは一万二千ドルの水準まで向上させて行きます。

 また、来年には失業者を百万人以下に減らします。2002年までは200件の就職先を創出して事実上の完全雇用を実現します。

 韓国は国際収支黒字をずっと維持し、さる10数年間の債務国から抜け出し近いうちに世界で数少ない純債権国家になります。

 尊敬する国民の皆さん。 清らかな国、正義の社会を作るのに先頭に立ちます。正しくて有能な人が成功し、弱者にも公平な機会が保障される社会にならなければなりません。

 申し上げた通り不正腐敗の清算に全力を尽くします。

 地域利己主義を打破しなければなりません。私は大統領として人材登用においても、予算配分においてもいかなる地域差別もしなかったし、今後もそのようなことは決してないはずであります。

 公平な課税を通じて経済的社会的正義を実現します。税政改革の基本になる金融所得総合課税実施を推進します。

 変則的な相続と贈与を通じた不当な相続が代々続くことがないように税制を改正し、脱税所得に対しては厳重な責任を問います。また俸給生活者の税負担を減らし高所得階層の所得源を明らかにさせます。

 絶対多数の国民が中産層になるように力を尽くします。中産層の育成と庶民生活向上を目標に、人間開発中心の生産的福祉政策を積極的に繰り広げます。

 「国民基礎生活保障法」が国会を通過しました。今や生活保護対象者の生計、教育、医療等、基本生活を制度的に保障できるようになりました。

 勤労能力と意欲があるすべての国民には職業訓練と生涯教育の機会を提供して、就職が斡旋できるように協力します。

 老人、病弱者、少年少女家長等に対する関心と支援を大幅に増やして、障害者の雇用とリハビリを促進するための法と制度を整備します。

 医療保険、雇用保険、国民年金、産災保険等、四大保険制度を内実化させ、国民が一生安心して生活できるように社会保障制度を確立します。

 住宅普及率を任期中に100%に上げます。中産層と庶民の住宅確保を助けるために、住宅購入資金と賃貸資金に対する融資支援を大きく増やします。

 農漁民の所得を高めます。生産者が適した価格を得るように農水産物流通部門をまず最初に改善します。

 農漁業者負債の金利引下げを実施しています。これと合せて農漁民の連帯保証を「農林水産業者信用保証基金」の保証に変えます。

 21世紀の知識基盤時代に世界一流国家隊列に立つことができるように教育改革を徹底して実施します。教育立国を実現しなければなりません。

 乳児教育から大学教育に至るまで、お金がなくて教育を受けられないことをなくします。すなわち来年から経済的に困難な中高校生40万人には学費を無償支援をし、大学生30万人には長期低利融資が受けられるようにします。

 また、庶民層の託児保育費に対する支援を増やします。大学入学制度を直して、2002学年度からは過度な入試競争を脱し、無試験を原則とする多様な入学選抜制度を必ず実施していきます。

 開発と環境の調和を通した生活の質の向上を図ります。水害防止等、災害に対する根源的な対策を強化して人命被害と経済的損失が繰返されることがないようにします。

 国民の生活の質を上げるために、生活の中で簡単に楽しめる文化芸術の環境とスポーツレジャー施設を育成します。


 親愛なる国民の皆さん。

 これから南北関係に対して申し上げます。

 韓半島の平和実現のためには安保と和解をともに定着させなければなりません。

 私は戦争抑止のために安保を何より徹底します。西海交戦で立証された通り包容政策は安保を軽視する宥和政策ではなく、安保のために韓米共同防衛体制を強硬に維持していかなければなりません。

 一方、南北間の平和と協力のために包容政策を引続き推進します。「国民の政府」が出帆して以来、何回にわたり北韓の挑発がありましたが、政府は韓半島の平和のために南北間交流協力政策を揺るぐことなく継続して維持しました。その結果、今日相当な水準の南北交流の成果を上げています。

 そして既に申し上げた通り、中国やロシアを含んだ全世界が韓国の包容政策を支持しています。これは韓半島の平和はもちろん私たちの安保にも大きく寄与しています。

 「国民の政府」は南北間の政府次元の交流を希望します。北韓は同族間の対話は拒否しながら米国との協商だけ固守する不合理な態度を捨てなければなりません。韓半島問題は南北当事者間で解決しなければなりません。米中等、全世界がこのように主張しています。私たちはいつでも南北当局者間の対話に応じる用意があります。北韓を物心両面で支援する用意もあります。

 尊愛する国民の皆さん。 近づく新しい1000年には、韓国が世界の一流国家隊列に並ぶことのできる基盤を造成していきましょう。21世紀は人類の歴史上、最大の激変期になるはずです。21世紀は知識基盤の世紀です。

 国土の広さやお金や資源の有無は重要ではありません。知識と情報、そして文化の創意力が国家の運命を左右します。私たちの未来がここにかかっています。

 このような点で21世紀は韓国人に絶好の機会になるでしょう。私たちには高い教育伝統と長い間の中国の影響圏下でも中国に同化しなかった文化の底力があります。

 これから私たちは新しい1000年の主体になる若者たちに関心と愛情をより一層注ぐ必要があると考えます。 私たちは若者達に新1000年の主人として使命を自覚するように鼓舞しなければなりません。若者たちのための知識基盤社会、文化創造の機会、そして生活の質を高める環境作りに力を入れなければなりません。


 尊敬する国民の皆さん。

 韓国は今、成功と危機の分れ目に立っています。

 私は単任制大統領として国民の期待に応じる大統領になるために最善を尽くします。大韓民国が世界一流国家にそびえ立つ新たな1000年のために、私は必ず成功する大統領になります。

 私は一時的な人気にこだわりません。国民を天のように敬い、歴史の審判を恐れながら、信念と所信を持って国政を運営して行くつもりです。

 IMF危機が訪れた時、私は国民の皆さんがこの危機の川を渡れる橋になると申し上げました。私は今もう一度国民の皆さんが希望と繁栄の新しい1000年へ渡っていける丈夫な橋になろうとします。

 皆さんが信頼と希望の中でこの橋を渡っていけるように政治を改革します。経済を繁栄に導いていきます。社会正義を透徹に実現します。安保と和解の対北韓政策を推進します。そして21世紀の一流国家に向かう希望を育てます。

 政府と国民がともに頑張ってこそ国が立ち上がります。私たちが願う第二の建国を成功させることができます。子々孫々に誇らしい祖国を引き継ぐことができます。

 私も渾身の努力を注いでいきますので、国民の皆さんの情熱を持った参与をお願いします。

 ともに手を繋いで力強く進みましょう。

 有難うございました。


1999年8月15日  大統領 金大中

(1999.08.18 民団新聞)



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