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映画「家族シネマ」

朴哲洙監督に聞く



朴哲洙監督

 在日同胞二世の作家、柳美里さんの芥川賞受賞作品「家族シネマ」(朴哲洙監督)が東京でロードショー公開されている。原作が一度バラバラになった家族関係の修復の難しさを描いたのに対し、映画では家族の関係の中での個の尊厳を主張する。朴監督に制作の狙いなどを聞いた。


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 深刻なテーマを、パワフルで笑いにあふれた作品に仕上げている。映画化にあたってのコンセプトは「小説の持っているどんよりした雰囲気をどう映画化するのか。いろいろ考えた末、これはブラックコメデイーではないかと考えた。テーマは同じでも、映画では別の表現方法を使った。これは映画の持っている強さでもある」


 ◇◆原作のどこに魅力を感じたのか

 「現代家族のなかで、家族を構成している個人が解体していくのは、避けられない現実であり、必然的な部分だと思う。そうである現状を、一断面を見せてみようと思っていた。原作者と私の間で家族を見る視点が共通していたといえる」


 ◇◆そこに監督の家族観が垣間見えるようだが

 「家族のつながりで結束させようとしたり、従属させたりするのではなく、一人ひとりの自由意志を生かしていく。(家族の中で)自分が担わなければならない部分はしっかりと担いつつも、個の自由を尊重したい。それこそが誠実さの現れではないか。在日同胞の皆さんは柳美里氏の原作と聞いて、同胞家庭の否定的で痛みのある家族の現実を描いたのではと思うかもしれませんが、決してそうではない」


 ◇◆原作の映画化を巡っては大変な争奪戦になったと聞くが

 「版権を持つ講談社には韓国と日本から十数件のオファーがあったと聞いて一度はあきらめた。しかし、それぞれについて講談社がリサーチ調査し、その結果を柳美里氏のもとに送って判断を求めたところ柳氏自身が「『301・302』を撮った朴監督を」と推薦してくれた。おかげで原作料も安く押さえてくれて映画化することができた」


 ◇◆日本の大衆文化開放の先陣を切って上映されたにもかかわらず、韓国での反応は芳しくなかったのではないか

 「これまではストーリーテラーものをずっとやってきたが疲れた。観客にこびることなく、自分のための映画をやりたかった。新しい形式、新しい素材で。だから、韓国での観客動員には期待していなかった。にもかかわらず、一部の朴哲洙大好き人間や批評家からは『朴監督の代表作になるのではないか』との声もあった。これからもこうした新しい試みを続けていきたい」


 ◇◆日本の大衆文化開放措置についてどう思うか

 「遅すぎた。韓国と日本はいまやお互いに避けていては何もできない。幸いにも環境がそろったいま、相互協力、尊重、理解を基にお互いにとって生産的な交流を進めていけば、そこから限りないエネルギーが生まれてくるだろうと信じている」

(1999.10.06 民団新聞)



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