民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー

再びシュプレヒコールを



 秋の夜長に考える。未来を生きる「在日」の子どもたちのために、ぼくら大人には何ができるのだろうか、と。

 在日外国人を縛ってきた外国人登録法の指紋押捺制度が、今年になってようやく一般外国人からも撤廃された。

 ぼくらがまだ若くて輝いていたあの80年代、外国人を犯罪人扱いする指紋の強制に、ぼくらは指紋拒否やハンストで抵抗し、文字どおり体を張って闘った。まだ幼かったぼくらの弟、妹たちやこれから生まれて来る子どもたちを、法に名を借りた人権無視の悪法から守るためだった。

 人差し指の自由を守るために指紋を拒否して逮捕された仲間は、数人の官憲に羽交い締めにされて十本指の指紋を採取された。

 苦痛に耐えなくてはならなかった彼の悔しさと彼を守りきれなかったぼくらの無力さ。屈辱感に流した涙の数は、そのままぼくらの傷になった。集会にデモ、ビラ撒きに署名運動、そしてハンスト。ぼくらは街頭に出て法改正のシュプレヒコールを叫び続けた。

 あれから15年の月日が過ぎ、ぼくらは今、地方参政権が「在日」を生きるのに必要な権利だと要求している。戦後生まれのぼくらの世代は、義務と権利が民主主義の根幹をなす両輪だと教わった。

 自分たちが生きる社会で自分という存在が当たり前に認められ、人生を意義あるものにするためには、自分の声を社会に反映させなくてはならない。それは民主主義の対極に位置する、他者の意見を強持ての表情や怒号で圧殺する暴力装置と人間を幻惑する金権体質からわが身と在日同胞社会を救うことでもある。

 地方参政権が大詰めを迎えている。ぼくら大人は一丸となって、もう一度子どもたちのために捨て身になろう。(C)

(1999.10.20 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ