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金剛山観光の申し込み

在日同胞600人殺到



金剛山観光の募集のポスター
(日韓観光で)

■一部に不安定要因も

 韓国籍同胞に対する金剛山観光の解禁が伝えられ、在日同胞社会でも「最後の秘境」への関心が高まっている。いち早く今年の3月に「金剛山観光案内センター」を社内に設置するなど観光客の掘り起こしに努めてきた東京の旅行会社「ニッカンワールド」(金珍寧社長)には、在日同胞を中心にすでに600人近い仮予約が寄せられているという。しかし、北韓側が日本籍者については難色を示しており一部不安要因もある。

 予約申し込みは東北地区から南は沖縄まで、全国各地から30〜50人単位で届いているという。希望者は金剛山に特別な感慨を抱く60歳以上の在日同胞1世が中心。2世でも比較的年配の人たちからの申し込みが目立つようだ。


■正式発表は10月28日以降

 日本からの日程は四泊5日が基本パターン。まず各地の空港からソウル入りして一泊する。翌朝、シャトルバスで東海へ。東海では現地でのトラブルを未然に防ぐための事前教育を受ける。夕方、旅客船に乗船して北韓側に入港。金剛山観光は一夜明けた早朝から始まり、2日間の日程。費用はスタンダードクラスの船室利用で十六万円前後になりそうだという。

 ニッカンワールドは金剛山観光が動き出した昨年夏ごろから現代商船側と水面下で接触、在日同胞社会からのツアー参加の可能性を打診してきた。現代側も日本と韓国を結ぶ同社のこれまでの実績を高く評価、正式認可を前にした今年3月になって日本からの観光客送り出し窓口として認定していた。


■25日の出発は延期

 現代側からのお墨付きを得た同社は、社内に「金剛山観光案内センター」を設け、プロジェクトチーム組んで需要の掘り起こしに努めてきた。同社では早ければ5月、遅くとも7月には金剛山観光が実現できるものと期待していた。

 しかし、セン水艦事件などの思わぬアクシデントのため、日本からのクルージング実現が冬場の11月にずれこんだ。すでに仮予約している在日同胞観光客の中にも、寒さを理由に年内の出発を先延ばしする傾向が見られるため、同社ではまず、山岳サークルなどのスポーツ団体を中心に新たな需要を掘り起こしていく方針。日本からの金剛山観光に拍車がかかるのは、来春以降と見られている。

 現代商船から19日、ニッカンワールド社に入った連絡によれば、北韓側が日本籍者の入国に難色を示しているという。

 25日に日本からの団体ツアー第一陣を送り出す予定だった同社は急きょ取りやめた。同社では28日以降に予定されている現代商船からの返事を待って正式にツアーの募集に入ることにしている。

 問い合わせは03(3593)1101、株式会社ニッカンワールドまで。


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金珍寧・日韓観光社長

□■日韓観光・金社長に聞く■□

>>在日同胞の金剛山観光が現実のものとなり、特別な感慨があるのでは。

 「胸がドキドキするね。やっとこれで本当に統一に向けて、或いは南北交流に向けて我々も実質的に一歩踏み込んで、進んだなと感じる。いままでスタートラインに立って、待って待って待たされていたからね」 ここまでくるまでには紆余曲折もあった。この間、実現を危ぶんだことは。

 「これは間違いなく実現するという信念があった。もう(実現の)方向へ向いていたから。スタートラインに立っていれば"ヨーイ・ドン"が出ると思っていた」

 そもそも旅行業に進出したのは、南北の平和と交流を民間レベルで少しでも後押ししたいとの信念からだったと聞くが。

 「北と南は直接にはなかなか仲良くなれないから。我々南が、いわゆる北を支持している共産圏と仲良くすること。そうすれば氷が溶けて双方にいい影響を与えられるからと考えた。モスクワ五輪の年に旧ソ連、アジア競技大会開催を前にしては、中国にアタックしてきた。幸い感触もよく、旅行ルートを開拓できた。モスクワ五輪こそ幻に終わったが、共産圏交流を通して結果的に韓国との国交実現に向けてレールを引けたのではないか。そしていよいよ最後の残りだった北韓との間でも実現できた。もううれしくて」

>>共産圏交流にかけるそうした熱意はどこからくるのか。

 「我が国の発展を阻害、国民を不幸にしているその根源にあるのは、南北の分裂状態だと思う。このために政治も経済も社会も、正義というものが実現できないでいる。分裂状態にかこつけて、何でもできちゃうからね。これはいかんということで、我々はいち早く統一を実現しなければならないと思うようになった」

>>金社長のそうした熱い思いが、周囲にはどう受け止められてきたのか。

 「業者仲間からは『つまらないことに精力を費やして、まるでドンキホーテではないか』と冷ややかに見られた。しかし、一生懸命にやってきたからこそ、在日同胞も理解してくれた。モスクワ五輪のときは、組合員の反応がよかったようで関西興銀からは切符を全部くれとさえいわれた。どれだけ勇気づけられたか分からない」

>>金剛山観光が実現したことで在日同胞社会の和合・交流への期待も高まるが。

 「金剛山の次は平壌に行けるようになる日のくることを念願している。総連系同胞が南に行けるように、少なくとも在日同胞ぐらいは自由に往来できるようにできないか、というのが私の念願だ。それができるようになれば、板門店を通して本国でも往来が始まりますよ」

(1999.10.20 民団新聞)



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