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一世の声なき声を代弁

同胞の介護保険でシンポ



現場の実践から見た同胞高齢者介護の
問題点を指摘するパネリスト

■同胞の特殊な境遇に配慮を

 【大阪】来年4月に迫った介護保険開始を前に「在日外国人高齢者の介護保険と福祉を考える」シンポジウムが13日、大阪のとよなか国際交流センターで開かれた。シンポには介護の現場から在日同胞2、3世らがパネラーとして参加、ともすると見落とされがちな在日同胞1世高齢者の声なき声を代弁した。

 今回のシンポは、在日同胞2、3世10人を委員とする「メアリ(こだま)・豊中市コリアン高齢者福祉の会」(朴昌換委員長)が呼びかけ人となり、実行委員会を構成して開催した。

 同会は在日同胞高齢者が「ふるさとの匂いのする、自由で心が通いあうやすらかな老後を生きてもらいたい」と豊中市在住の李亥鎮さんが発案、今年9月に発足させたばかりのボランティア団体。将来的には地域で在日同胞のためのデイ・サービス施設の運営を夢見ている。

 シンポには、在日同胞の介護福祉士、障害者支援ボランティア、介護相談センター相談員ら5人がパネラーとして参加した。

 特別養護老人ホーム「園田苑」に介護福祉士として勤務する柳照明さんは、在日同胞が長らく行政の福祉サービスから排除されてきたため、介護保険制度の存在が行き渡っていない現実を指摘。「市のアピールが大事。市独自で制度を作って市民運動の中で提案することが有効」訴えた。

 また、大阪市の嘱託として、市が西区に開設した窓口で在日同胞高齢者の相談にあたっている鄭貴美さんは「大阪市が作成した韓国語版による介護保険の説明書ですら、日本の植民地統治下で育った1世には読めない。在日同胞の実態を知らないままサービスだけが先行しているのが現状だ」と指摘した。

 一方、在日同胞の生活基盤のぜい弱さを指摘する声もあった。大阪府民族講師会共同代表で、障害者支援ボランティアにも取り組む文茂康さんは「帰化した人は各種年金が支給されているが、在日同胞の多くは制度的な無年金状態に置かれている」と述べ、見直しを求めた。

 会場との討論では、各パネラーが「在日同胞は何らかの障害を抱えたり、病気になったりすると、韓国語しか出てこない1世が多いことを知ってほしい。在日同胞の置かれた現状と問題点を、これから私たち2、3世が代弁していきたい」と締めくくった。

 シンポ終了後、実行委員会を代表して朴昌換さんは「地域で生きる住民として在日韓国人高齢者の違いを認めてもらいたかった。これからもボランティアの輪を広げ、少しでも目標に近づいていきたい」と抱負を述べた。

(1999.11.17 民団新聞)



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