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21世紀の自画像



40年かけ収集の絵画を公開した陳昌植さん

 13日に姫路市美術館で開幕した「ミレー、コロー、バルビゾンの巨匠たち展」はフランス絵画を愛好する人士から圧倒的な支持を受けている。

 というのも96点のうち89点が日本初公開という前代未聞のコレクションだからだ。40年間にわたってバルビゾン派の絵画をコレクションしてきたのは在日同胞実業家・陳昌植さん(66)。在日同胞の三世だ。絵画以外にも朝鮮朝白磁、高麗青磁など古陶磁にもすばらい収集品がある。

 80数年前、祖父は慶尚南道馬山の地から玄界灘を越えて姫路にたどり着いた。第二次大戦中、父は日雇い人夫。母はドブロクを売って糊口をしのいだ。6畳と4畳半に3世代13人が暮らす少年時代。

 14歳の頃、夕暮れの農場で農夫婦が大地に祈っている「写真」が部屋にかかっていた。有名なミレーの「晩鐘」の印刷物だった。

 「こんなに人の心を引きつける絵があるものか」。大人になって一生懸命働いて、写真でない本物のミレーの絵を持ちたい、と強く心に念じた瞬間だった。しかし、その思いは意外に早く達せられた。

 ミレーの「泳ぐ人」を手中にしたのは30歳の時だった。夢見続けてきた思いが実現した興奮は今も忘れないという。以来、国内外のオークションを通じて温かで写実的なバルビゾン派の絵画を収集してきた。

 自らの趣味で収集し始めただけに、日本では匿名を通した。海外の一部で名前が上がっていたに過ぎず、貸出も一切断ってきたためコレクションはベールの中に置かれていた。

(1999.11.24 民団新聞)



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