民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
青春時代を祖父母の大地で



 私たちの願いのひとつは、子どもたちが民族的自覚を持ち、健やかに心豊かに生きていける社会を築くことにあります。

 本団は次世代の育成に向けて、青少年を対象にオリニ事業と土曜学校、春・夏季学校を、既成世代に対しては講座制民族大学やウリマル講座等、さまざまな事業を民族社会教育の一環として展開しています。その中で、もっとも成果をあげている事業が韓国の大学・高校へ進学する「母国修学制度」であります。

 民族意識の風化や祖国との相対化が指摘されている在日同胞社会にあって、母国修学生は未来を担う貴重な存在です。


■母国修学制度の意義

 母国修学制度は、次代を担う人材の育成に本団が本国政府に働きかけ、1962年に実現した制度です。これまでに延べ4500人に達する在日韓国人子弟が韓国の著名な大学で学び、韓国と日本の架け橋的存在として各界各層で活躍しています。

 現在の修学生数は、国際教育振興院調べによりますとソウル大、高麗大、延世大をはじめとする35校に、およそ300人が在籍し、民族素養を身につけようと学んでおります。この数には韓国語を習得するために短期間訪れている学生や交換留学生として大学に在籍する学生は含まれておりませんので実際はもっと多いでしょう。

 母国修学を選択する理由の多くは、「自分が韓国人であることを実感出来るようになりました。また辛さを克服する忍耐力と自信もつきました」(金公嗣母国修学生会会長の話)という、アイデンティティ(自己同一性)の確立にあります。このことは在日子弟の揺れ動く民族的葛藤の克服と結びついていることを意味します。

 青雲の志を抱き、多感な青春時代を祖父母(父母)の育った大地に立ち、失われた民族素養を回復しつつ、自己実現の勉学に励む。日本での進学では考えられない大きな負担を背負いますが、得るところまた大きいと言えましょう。

 在日韓国人が、在日韓国人として、在日韓国人らしく生きる上で必要な民族的素養と貴重な本国での生活体験を得るまたとない機会が母国修学制度なのです。


■よりよい環境をめざして

 しかし、障壁もまた少なくありません。本団は、有意義な修学生活をすごせる環境整備のために大使館の教育官室と母国修学生を受け入れる国際教育振興院とともにさまさまな努力を重ねてきました。

 まず、修学生たちのレベルアップです。国際教育振興院は「在外同胞の後継者の育成に全力を尽くす」という原点に立ち、特別補習や夏休みの補習を持つなど教授陣が陣頭にたち修学生の実力向上に努めています。また入学後の指導充実が何よりも重要との立場から中央民族教育委員会の李英秀委員長を中心に著名大学を歴訪し、在日同胞社会に対する理解を深めています。

 そして、修学生相互の情報交換と連帯を図る母国修学生会が修学生自らの努力で今年再建されました。すでに振興院内に活動拠点が設けられ、新入生歓迎会や研修会を開催し、後輩等を迎える体制を築いています。何よりも大事なことは、母国修学制度を正しく広報することです。今年も国際教育振興院の担当官を招き、福岡、大阪、名古屋、東京、仙台で説明会が行われます。

 各級組織に対しては、一人でも多くの志願者と保護者の参加を呼びかけてもらいたいものです。明日の同胞社会をうらなう母国修学生の育成に本腰をあげて取り組みましょう。

(1999.11.24 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ