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O区の人権週間



 世界人権宣言が採択された12月10日までの7日間が、毎年「人権週間」である。期間中は各地でキャンペーンが催され、早朝のK駅でも「考えよう、あなたの人権・私の人権」と印刷されたティッシュが大量に配られていた。

 家に届いた区報も人権特集号で、「子供の人権を守ろう」「女性の地位を高めよう」「部落差別をなくそう」等、九つの啓発重点目標が掲げられていた。ところが驚いたことに、外国人の人権に関するコピーが全く見当たらないのだ。「国際化時代にふさわしい人権を育てよう」という項目はあるが、どこか歯切れが悪く、必ずしも外国人を指すとは言い切れていない。

 法務省人権擁護局が10月に発行した冊子『人権の擁護』の冒頭には「すべての人々の人権が尊重される、平和で豊かな社会が実現することを目指す」とあるが、本文の解説によれば外国人への人権侵害は、言語や習慣の違いに起因する入居差別や公衆浴場でのトラブル等に過ぎない。すなわち、ニューカマーの人々に限定されているのである。

 外登法の常時携帯や入管法の再入国許可制度の問題、戦後補償や公務就任権等については黙殺しており、そこには特殊な歴史的背景や地域住民としての密着性を持つ、旧植民地出身者の人権問題を「もはや存在しない」としようとする意図が感じられる。

 O区に生まれ育った数10年間、地域行政に対し特別な不満を抱いたことはない。指紋拒否の時には、むしろ住民である私の側に立ってくれたとさえ思う。だから国はいざ知らず、街のキャンペーンが不充分なのは、単に技術的な事情であると信じたい。

 近々、本庁舎で開催される「人権啓発パネル展」が、自主的で開かれた内容であることを期待しながら・・・。(S)

(1999.12.15 民団新聞)



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