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北送同胞の人権に対処を

朝日国交正常化交渉に際して



 村山富市元首相を団長とする超党派の日本国会議員訪朝団と北韓が合意した無条件での国交正常化交渉の早期開催勧告を受けて日本政府は、20日にも朝日国交正常化交渉再開に向けての局長級予備会談を北京で開く方針を固めました。同時に食糧支援や日本人拉致疑惑についての両国赤十字協議も前後して開かれようとしています。


■朝日の国交正常化交渉へ

 91年から始まった朝日交渉が92年11月の第8回交渉で北韓が席を蹴って以来7年ぶりの再開になります。中断していた7年間には、朝日情勢に大きな変化がありました。特にテポドン・ミサイル発射、日本人拉致事件は日本にとって大きな衝撃となっています。

 朝日関係の正常化は北東アジアの平和と安定のために歓迎されることです。また韓米はもとより、経済発展に力を入れている中国も、朝日交渉の再開を評価しています。

 しかし、朝日が国交正常化交渉を進めるに当たって、在日同胞としては10万人におよぶ北送同胞の安否を抜きにして考えることはできません。「地上の楽園」という美辞麗句を信じ、北韓へ帰っていった同胞たちは、生き地獄の中に置かれました。多くの同胞が収容所に送られ、生死も定かではありません。脱北に成功した北送同胞からも、抑圧と貧困にあえぐ悲惨な状況が報告されています。

 14日は北送事業が開始されてちょうど40年目に当たります。もちろん「北送事業」は北韓と結託した朝鮮総連が積極的に推し進めました。しかし、「日本政府はやっかいな朝鮮人を日本から一掃することに利益を持つ」などとした、長く隠ぺいされていた日本赤十字の内部文書からも明らかなように、日本政府にも一端の責任はあるといえます。

 他方、拉致という暴力を使って、いわれなき日本の人々を連れ去るという北韓の暴挙は、日本の市民感情に拭いがたい不信感としてあります。日本政府は調査の結果、7件10人が北韓に拉致されたと報告しています。新潟の海岸から連れ去られた横田めぐみさんは、当時13歳の中学1年生でした。たった13歳の少女が連れ去られ、すでに20年以上が経過しています。


■生死確認と自由往来実現を

 今後の協議で北韓は、食糧援助を先行させたい意向を示しており、日本は国交正常化と人道的問題を並行して進めたいと求めていると言います。交渉の過程で日本側からは北韓のミサイル、核疑惑、拉致問題が提起されるでしょうし、北韓側からは過去の植民地支配に対する補償問題が出されるでしょう。しかし、朝日国交正常化交渉を進める上で、北韓の人権問題を抜きにしては考えられません。特に在日同胞にとっては北送同胞の存在を絶対に無視できません。北韓に渡った父母や兄弟の安否について数多くの肉親が日本の地で身を焦がしているからです。

 対日国交正常化交渉に際して北韓が、人権問題に手を着けず、過去の植民地支配に対する補償金を求める考えだけで進めるならば、どこまでも「無法国家」という呪縛から逃れることはできないでしょう。そして日本政府に対しては、交渉の過程で北送同胞らの人権状況についても、毅然とした態度で対処して欲しいと願わざるをえません。北送同胞の生死の確認と自由往来実現は、日本の責任の一端からしても解決されなければならない問題だからです。

(1999.12.15 民団新聞)



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