民団新聞 MINDAN
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介護保険に同胞高齢者の実状反映

大阪市嘱託の鄭さんが民団支部巡回



民団支部を巡回し聞き取り調査を
計画中の鄭貴美さん
(市の専門相談窓口で)

 【大阪】大阪市が西区の市高齢者総合情報相談センターに在日韓国・朝鮮人高齢者のための専門相談窓口を設置してから四カ月が経つ。相談内容からは、介護保険制度から置き去りにされたままの在日一世の戸惑いが見え隠れする。窓口で面接や電話で相談を受け付けている在日同胞二世は、在日高齢者の実態とニーズを受け入れるためには出張相談が必要と判断、近く民団各支部巡回に乗り出す考えだ。

 「在日韓国・朝鮮人のための福祉相談」窓口は、同センター会議室の一室に設けられている。10月からの介護保険制度の要介護認定実施を前に在日高齢者の相談が増えると予想されることから、在日同胞二世の相談員2人を嘱託として採用した。

 9月2日以来の相談件数は20件余り。この多くが無年金者だった。「介護に金額はどのくらい必要なのか」と、保険料などの支払いに不安感を募らせているお年寄り。なかには「車いすやベッドはどこで購入すればいいのか」というものもあった。これら日常生活用具は行政に相談すれば無料で借りられるが、在日同胞には情報が行き届いていなかった。

 相談員の1人、鄭貴美さんは「まして一世たちは文字の読めない人も多い。二世の私たちが在日の高齢者(の実態)を把握して情報などを提供、相談に応じていかなければならない」と話す。

 鄭さんは、相談内容を残す記録表についても、在日同胞の置かれた特殊な境遇を反映できるよう一部書式を改善した。名前は通名と本名併記に。国籍、出身地、渡日歴、職歴、近隣との交流の状況なども新たに書き加えられるようにした。聞き取りのなかで、同胞お年寄りが、生活の本拠としている生野区を離れたがらないでいること。近郊に住居を構えた子息と同居せず、あえて独り暮らしに甘んじている事情も分ってきた。

 鄭さんはさらに正確な実態を把握するためには出張調査が欠かせないと判断、民団大阪府本部と相談のうえ近く支部巡回に乗り出すことにした。

 鄭さんは大阪府立勝山高校を卒業後、看護学校で准看護婦資格を取得した。病院勤務を経て、6年前から在宅サービスセンターに勤務するようになり、これまで多くの同胞家庭を見てきた。こうした経験から「同胞お年寄りの実状を体系的に把握し、いま必要なものを見定めて、それを実現していくことが求められているのではないか」と強調している。

 同センターの利用時間は火曜日、木曜日とも午後1時から4時まで。対象は原則として大阪市内在住者。相談にあたっては予約が必要。問い合わせは電話06(6543)8181へ。

(1999.12.15 民団新聞)



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