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民族共生教育に横やり

平塚市・人権講演会が中止に



 【神奈川】平塚市内の人権教育指定校となっている公立中学で開かれる予定だった「人権講演会」が、一部市民の介入を受け、急きょ中止に追い込まれていたことがこのほど明らかとなった。関係者からは、学校現場で取り組みが始まったばかりの民族共生教育の実践の行く末を心配する声が上がっている。

 人権講演会は平塚市教育委員会が97年に発表した「在日外国人(主として韓国・朝鮮人)にかかわる教育の指針」に基づき、毎年開催されている。3回目の今年は4日に予定していた。

 ところが、1日からインターネットの「日本茶掲示板」に「平塚市人権教育講演会をみんなで見学に行きましょう」とからかう文面が載った。同校は翌日、緊急の職員会議を開いて協議した結果、中止を最終決定した。

 平塚市の人権教育に反旗をひるがえす動きは、「平塚の教育を考える会」と称する会が旗揚げしてから表面化した。同会は平塚市の教育指針の凍結と学習指導要領に即した教科書の採択と教育を目指すことを「目標」としており、市教委に対しても9月と11月の2回にわたって同様の申し入れを行っていた。

 市教委によれば、申し入れに訪れた代表団は総勢十人ほど。「日本人が自国を誇りに思う教育をしなさい」などと自由主義史観と軌を一にする自説を主張、「偏っている教育をしている覚えはない」市教委との話し合いは平行線のまま終わったという。

 同会メンバーは講演会が開かれることになっていた4日にも学校周辺の団地などを回り、「児童・生徒を立派な日本人へ育てるという教育の目的が忘れ去られて」いると叫ぶビラを多数配布した。人権教育についても「わざと日本を批判したり、間違った内容を教えるもの」と非難している。

 「指針」が発表されたのは、平塚市内の学校で起きた学校ぐるみの民族差別事件がきっかけ。94年12月に結成された「在日韓国・朝鮮人との共生の会(金泰仁代表)」による2年余りに及ぶ交渉の結果、市教委も97年3月27日、「指針」を打ち出すとともに、「差別事件の報告書」を教師全員に配布した。

 「指針」の策定にも関わった神奈川県内の公立中学教諭、後藤周さんは「当事者の切実な訴えをきちんと受け止めて歩みだしたばかりの人権教育が、不当な暴力による介入でとん挫してしまうのは残念」と話している。

 また、「共生の会」の金代表(51)=団体職員=は「それぞれがそれぞれの立場で人を集めて自分の主張を述べるのは当然のことと思うが、結果的に人権講演会を中止させるのはいかがなものか」と静かな調子で抗議している。

(1999.12.22 民団新聞)



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