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<布帳馬車>小説『1984年』がえぐる北独裁
2010-03-10
 イギリスの小説家ジョージ・オーウェルの『1984年』は、言語とそれが掌る思考を含め、人間の全生活を支配する全体主義国家を描いた1949年完成の未来小説でありながら、北韓の国家体制の本質を知る上で驚くほど多くの示唆を与えてくれる。例えばこうだ。

 「実際には民衆の必要物は常に少なめに見積もられ、結果、生活必需品の半分は慢性的な不足に陥っている。この現状は好結果と見なされる。なぜなら、窮乏が一般的という状況では、わずかな特権でも一層の重要性を帯び、かくしてある集団と別の集団との区別はさらに明瞭になるからだ」

 この全体主義国家では少なくとも餓死者は出ていない。だが、窮乏生活のなかで特権層もそうでない下層階級も、独裁者の慈悲にすがる構造はまったく同じだ。北韓のエリートは世界一般では取るに足らない下賜物でも、飢餓線上に喘ぐ民衆を尻目に特権意識を満足させ、独裁者に忠誠を捧げる糧としてきた。

 しかし、経済制裁によってさすがの独裁者も特権層への下賜がままならない。食糧さえ減らされた軍・警の規律は緩み、特権層の脱北者も明らかに増えている。オーウェルはこうも言った。「体制の真の危険とは唯一、有能であるがその能力を十分に生かしきれておらず、権力に飢えている人々から成る新しい(中略)階層集団の中で、自由主義と懐疑主義が育っていくことだけである」。

 北韓にもこうした不遇なエリート層は確実に存在する。外部世界とのチャンネルも多様になった。悪腫を自ら取り除かなければ、自分や民衆に未来がないとの考えも煮詰まりつつあろう。息をのむ思いがする。(J)

(2010.3.10 民団新聞)
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