掲載日 : [2017-07-12] 照会数 : 6150
韓国テンプルステイ<7>八公山 桐華寺
境内の随所に見られる鳳凰信仰
銀海寺や元曉寺、冠峰如来座像(カッバウィ)などとともに、八公山(1192㍍)の中腹にたつのが桐華寺。新羅時代の493年に極達大師が創建し、当初は瑜伽寺と呼んだ。832年、心地大師が再建する際、冬にもかかわらず桐の花が美しく咲いたことから、名称を桐華寺にあらためた。
東大邱バスターミナルから30〜40分で着く。入口が2カ所あり、西側の大きな桐華門からは観光バスが行きかい、大勢の参拝者が出入りする。南側の鳳凰門が本来の一柱門であるものの、現在、こちらから参拝する人は多くない。しかし門前の、心地大師が彫ったといわれる磨崖仏座像は一見の価値があり、慈愛に満ちたやさしいほほえみが見る者の心をなごませる。
桐華門からは坂をのぼったところに案内所があり、日本語のできるガイドが親切に教えてくれる。境内の随所に鳳凰信仰がかいまみられ、鳳凰との少なからぬ縁を実感できよう。
本堂である大雄殿前の楼閣は鳳棲楼と呼ばれ、桐の木に巣をつくる鳳凰のシンボルだ。楼閣にのぼる階段におかれた大石は鳳凰の尻尾、丸い石は卵を表している。一柱門が鳳凰門であり、大雄殿天井には鳳凰が描かれている。真心こめて祈れば、鳳凰が飛び立つように極楽世界に行けると教える。
宿坊は独立した感じでやや離れているが、本堂までの林道は歩きやすい。ここで知り合った50代の男性医師は5年前に長男を交通事故で亡くし、もともとクリスチャンだったが、テンプルステイをしながら祈りを重ねるうちに気持ちがおちつき、3カ月間の休暇をとるなど、それまでの生活が一変したという。
宿坊の隣には「寺刹料理体験館」がある。担当の金貞姫ポサルニム(菩薩)に日本の精進料理との違いについて尋ねると、韓国ものに発酵食品が多く、エゴマ油をつかうので味に深みがでるとのこと。
1992年に建立された統一薬師如来大仏は高さ33㍍に達する。大仏前に並ぶ2基の石塔(高さ17㍍)とともに、いまやこの寺のシンボルだ。地下には仏教文化館を設け、韓国仏教の歴史や禅に関する資料を展示しているほか、座禅や茶道も体験できる。壬辰倭乱の際、四溟大師がここに嶺南僧軍司令部を設置したことから、大師の真影や遺品なども残されている。
早朝に山を散策。薬水庵の方からのぼって行く。新緑がかがやき、肌にふれる風が心地よい。高僧を祀る浮屠を安置した高台から周囲を眺めると、点々と浮屠が見られ、どこまでも続く松林、峰々の連なりから八公山の懐の深さが感じられる。
この日、境内には参拝者のみならず、僧侶の姿が目立った。尼僧も多い。3カ月間の修行「安居」の始まる日(旧暦4月15日)で、周辺地域の寺々から集まってきたのだ。同僚と再会する喜びか、これから続く仏との対座を控えてか、僧侶たちの顔は嬉々としているように見えた。
◇大邱広域市東区桐華寺1路1 (℡8253‐980‐7979)
安居 年に2回、僧侶が禅院につどい集中的に3カ月間参禅修行すること。夏安居は旧暦4月15日〜7月15日(盂蘭盆=うらぼん)、冬安居は同10月15日〜1月15日に実施される。1日に8〜12時間の精進に集中する。
宋寛(韓国文化研究家)
(2017.7.12 民団新聞)