掲載日 : [2017-05-10] 照会数 : 7750
韓国舞踊・チャンゴ教えて40年…卞仁子さんが大阪に続き東京のYMCAで
[ 在日本韓国YMCAのチャンゴ教室で指導する卞仁子さん ]
在日韓国人2世の舞踊家、卞仁子さんは舞踊活動と平行して後進の育成にも力を入れてきた。1978年、関西韓国YMCA(大阪・東成区)に韓国舞踊とチャンゴ教室を、84年には在日本韓国YMCA(東京・千代田区)にチャンゴ教室を創設し、指導を行ってきた。講師歴は今年で40年になる。今月27日、東京・中野区の梅若能楽堂で開かれる、韓国伝統舞踊公演「女舞(YOMU)」に弟子らと共に出演する。
公演(27日)でサルプリ舞
11年9月、東京の日本橋劇場と大阪の山本能楽堂で、卞仁子さんの還暦記念公演「光風霽月」が開かれた。「扇の舞」「杖鼓舞」など7つの演目で「サルプリ舞」には深い思いを寄せる。80年代後半、重要無形文化財第97号「サルプリ舞」保有者である李梅芳さんに師事し、最初に教わった作品だ。
「サルプリ」は、払うことのできない恨(ハン)を解き、魂を浄化させるという意味がある。絡み合った喜怒哀楽の感情を、踊り手は自身の生きざまと合わせて、内面の世界を表現しなければならない。「私なりの踊りとは何か」。毎日、問答を繰り返した。
ある日、李梅芳さんから「踊りの本質を悟らなければならない」と指摘された。以来、鍛錬を積みながら、独自の世界を創り上げた。
卞さんは、10歳から韓国伝統舞踊を習い始めた。チャンゴは大阪の西成民団支部が開講していた舞踊とチャンゴ教室に顔を出し、手作りのバチを使って叩き方などを覚えたという。
大学進学の際、舞踊留学を目指すが、親に反対された。梅花女子大学(大阪・茨木)入学後、舞踊を習う場所はなく、一人悶々とした。同大卒業後、解放前に朝鮮・日本、欧米などの舞台で活躍した舞踊家、崔承喜の愛弟子だった金白峰さんの元を訪ねた。指導は伝授助教が行った。
「壁にぶつかって、ここで始まりか終わりかと真剣に悩んだ」。帰日当日、金白峰さんが背中を叩きながら「『また、いらっしゃい』と声をかけてくれた」。
その後、親の反対を押し切って、76年から1年半の舞踊留学を果たす。舞踊は金白峰さんに、チャンゴは李正範さん、金容培さんなどに師事し、磨きをかけた。
当時、日本では韓国伝統舞踊を教える人はいなかったと話す。卞さんが母校の金剛学園で、中学生から教えたのも同じ理由からだ。
公の場で教え始めたのは78年、関西韓国YMCAに韓国舞踊とチャンゴ教室を創設してから。84年に在日本韓国YMCAにチャンゴ教室を開いた。自分の役割として、また民族教育として教えたいという思いがあった。
韓国で踊るという夢が叶ったのは10年8月、ソウルの韓国文化の家(KOUS)で開かれた、韓国文化財団保護財団主催の公演「パンクッ」だ。チャンダンのリズムに合わせ、チャンゴを肩にかけて軽快に踊る卞さんの「杖鼓舞」は、力強さとしなやかさを併せ持つ。
企画・演出の陳玉燮さんから「韓国でも杖鼓舞を踊る人はたくさんいるけれどもぜひ、あなたの踊りで」と誘われ、昨年まで連続3回出演した。
「女舞」の公演では、「年を重ねると内に秘めた味が出てくる」という「サルプリ舞」を踊る。韓国の一流楽士たちの演奏やサムルノリの演奏に合わせて踊る演目も楽しみだ。出演者には「心をひとつにして楽しくやろう。そういう気持ちは舞台にも出る」と声をかけている。
「これからもいい踊りをしたい」。卞さんの変わらぬ思いだ。
韓国伝統舞踊公演「女舞」17時開演。前売り5000円、当日5500円。チケット問い合わせは関口(080・5196・7988)。
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はがきに郵便番号、住所、応募者名前、年齢、電話番号を記入の上、〒106‐8585 東京都港区南麻布1‐7‐32 民団新聞社「女舞チケット」係。17日必着。当選者に郵送。
(2017.5.10 民団新聞)