掲載日 : [2017-01-26] 照会数 : 5421
風土・歴史感じさせる逸品…薩摩焼15代沈壽官新作展
[ 「薩摩六種彫総透香爐」の前に立つ沈壽官さん ]
薩摩焼15代総帥、沈壽官さんの新作展が23日までの1週間、東京・中央区の日本橋三越本店美術特選画廊で開催された。東京では3年ぶり。
展示品は根強いファンを持つ香炉をはじめ花瓶、茶碗、置物など約70点。息をのむような超絶技法で造り出した「透かし彫り」。素地に赤など鮮やかな絵を上絵付けした豪華絢爛な「錦手」や「金襴手」。なかには小さな動物をアイテムに使ったものも。「捻り物」と呼ばれる人形などの置物細工はどれも生き生きとした表情を見せている。
これらのスタイルを確立したのは江戸期から明治時代に活躍し、薩摩焼中興の祖ともいわれる第12代。今回は特別に明治時代の作品を中心とする19点が沈家伝世品収蔵庫から運び込まれ、別のコーナーで紹介された。
三越伊勢丹の工芸担当で、今回の企画展を担当した平岡智さんは、「窯がいまのように精度が高くないなか、これだけ緻密な仕事ができたのはすごいこと。これは15代にも受け継がれている。この技術の高さが沈壽官窯の特徴」と高く評価している。
15代沈壽官さんも12代の世界観から影響を受けたと話す。「もともと質朴だった薩摩焼が華麗な世界に達したのは12代から。重層的に装飾を施すことによってさらに立体化していける。薩摩焼の可能性を広げた人だといえる」。
一方で、「世界に類のない白い陶器である薩摩焼の美しさをいかに伝えるのかが大事。装飾は素地の素晴らしさを引き立たせるためのものであって、12代の主眼もそこに置かれていた」と話す。
薩摩焼の初代、沈当吉は豊臣秀吉の朝鮮侵略の際に薩摩藩17代藩主島津義弘が連行してきた80人以上の陶工の一人。見知らぬ地で祖国を偲びながら陶器の原料を山野に求め、美しい焼物「薩摩焼」を造り出した。
(2017.1.25 民団新聞)