掲載日 : [2016-08-15] 照会数 : 13403
<座談会>ヘイトスピーチ根絶へ…市民・行政の連携必須
出席者
有田 芳生(参議院議員)
李宇海(弁護士)
安田 浩一(ルポライター)
明戸 隆浩(社会学者)
司会=編集部
7月の東京都知事選にレイシストが出馬し、「選挙運動」と称して公然とヘイトスピーチを強行した。「対策法」施行後の新たな局面を迎え、ヘイト根絶のために今後、我われがなすべきことは何か、各界の有識者が話し合った。大阪市条例をモデルに各地で条例づくりを急ぐことで意見が一致した。
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都知事選利用したレイシスト
追い込まれたから出馬した 明戸
選挙運動に罰則適用は困難 有田
−−レイシストが都知事選挙を利用してヘイトスピーチの挙に出た。
有田 法務省の幹部とも相談したが、やはり現行法では何ともし難い。「これは選挙運動だ」と彼らが言った場合、そこでなんらかの罰則を講じるわけにはいかないので、残念ながら今の法務省の判断だとそういうことをやる人物に対して有権者に的確な判断をしてもらうしかない。
これからそういうことが起きていく前提で、それにどう効率的に対処できるかということは検討したいという。
名誉毀損に司法判断も
李 規制法には刑事罰はない。しかし、横浜地裁川崎支部がヘイトデモを禁止する仮処分を出した。だから、その限りではこの法律そのものを使ってではないが、司法判断は一応ある。京都朝鮮学校襲撃事件では、朝鮮学校という特定の団体とか、そこへ集まっている人たちに対して、名誉毀損なり侮辱が行われたので不法行為だと。
特定の人、特定の団体に向けてだったが、あの川崎の決定の画期的なところはヘイトデモが行われる近隣に韓国人がいる施設があれば、そこに直接向けられた罵詈雑言じゃなくても不法になるから、それを差し止めたというところに画期的な意味があった。その限りでは、この法律によってということではないが、法的手段はとれる。
安田 6月29日に桜井誠(在特会前会長)は東京都庁の記者クラブで出馬会見を行っている。元在特会、あるいは在特会関係者はこれまでも関西では市議選などに出馬して、その度に選挙運動に名を借りたヘイトスピーチを行ってきた。「これまで通りヘイトスピーチを使って選挙運動をやりたいだけではないのか」という旨の質問をしたら、彼は当然ながら「その通りだ」とはっきり答えている。
ただ、彼が今回出た理由の一つは、対策法が選挙運動の場でしか彼らができないんじゃないかと思わせるような、一定の圧力となったのは、少し前向きに考える必要があると思っている。
少なくとも一定程度ダメージは与えている。これから厳しくなるなということは在特会関係者も言っている。対策法を過剰に評価していて、その危機感が選挙運動に走らせた。
明戸 今回の桜井の得票が多かったか少なかったかという議論もあるが、ヘイト目的で選挙を利用したにすぎない場合には票がどうかは関係ない。
重要なのは、「選挙期間中は我々は無敵である」というあのフレームを崩すこと。法務省の勧告というのは効果としては不十分なところはあると思うが、ヘイトスピーチに普段も、選挙期間中もないということを示す手段にはなる。そこをどう見せるかということが一番大事かなと思う。
有田 対応は難しかった。だから今後の方向として昨年銀座でヘイトスピーチのデモがあったとき、無言で皆、ヘイト反対と掲げたサイレントカウンターはひとつの手かなと思う。
安田 そうですね。その抗議運動のあり方って大事だと思う。私が知っている限りで言うと、多くのカウンターと呼ばれている人は最初、都の選管に電話を入れた。かなりの数だ。「あれはヘイトスピーチじゃないのか」、「あんなことは許されるのか」と。ところが皆、失望している。まともに取り上げてくれないから。
今度は法務省の人権擁護局とかにヘイトスピーチの問題として電話を入れるんだけれども、そこで持ち出されるのは公職選挙法の壁、こちらもいろいろ検討しますという形だ。
李 反対側が萎縮してはいけないし、公選法を含めてよく研究する必要があると思う。
明戸 選挙期間中とそうでないときの違いは現場の警察の裁量によるところが大きいが、その点で言えばそもそもヘイト対策法もかなりの部分現場の裁量に支えられている。6月5日の川崎がまさにその例。今回はヘイト対策法ができた後の選挙ということで、どこが変わったのか、どこまでが変わらなかったのか、現時点では非常にわかりにくくなっている。
安田 今後どうやって運動をしていくのか、運動はできるのか、選挙は使えるのか使えないのか、自分の支持率はどれだけあるのか。桜井は今回、複数のリトマス試験紙を抱えて選挙に出たんじゃないか。選挙を通じて、対策法の効果や人々の反応を〞試して〟いたのではないか。対策法は実際に効果は出ていると思う。
しかし選挙でこの対策法の理念や意味が通じないという状況はやっぱりおかしいと思う。対策法に書かれている自治体の責務みたいなものは、選挙においても適用されるべきだ。選挙というのは地域で行われるものであって、地域のなかで例え選挙といえど、そうしたヘイトスピーチの流布をどこまで許していいのかってことを自治体も真剣に考えてほしい。
五輪にらみ東京条例を
李 既存の法律をできるだけ使うというのは大事なことだと思うし、これから法律自体に禁止規定を求め続けていかなればいけないと思う。東京五輪もあるので、最低限、大阪なみの条例を東京でつくるということは必要だ。
明戸 先ほど安田さんも指摘していたが、ヘイト対策法で予想以上に効果が出ている、ということはあらためて確認する必要があると思う。過剰反応も含めて明らかにヘイト側にそういう反応が出ている。
古谷経衡さんの分析(東京新聞8月4日付「こちら特報部」記事)で彼らは追い込まれたから出馬したんだというのがあったが、それはたぶん正しいだろう。先に対策法の効果があって、部分的なある種の抜け道探しのひとつとして選挙があったと思う。
有田 追い込まれて彼らはここしか道はなかった。それがひとつだ。だから選挙にはこれから出てくる。
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「対策法」成立の意義
「差別あり」認めた点大きい 李
当局責任もっと追及すべき 安田
−−対策法成立の意義について改めてどう思うか。
李 ヘイト対策法に禁止規定が入らなかったという点で様々な批判はありえるが、成立に至る経緯が非常に重要で、歴史的な意味が日本社会と在日社会にあったと思う。つまり、この社会に民族差別・人種差別があると認めた法律であること。国連がこれまでさんざん勧告を出してきても、日本政府は「そういう差別はないんだ」と口をぬぐってきたが、それがもう許されなくなった。
心ある日本人と私たち当事者が力を合わせて法律を成立させた。その基盤を大切にしなければならないと思う。民族差別があるということを日本社会が公然と法によって認め、許されないと確認したことが大きい。この基盤を大事にして運動を拡大、継続していかなければならない。ここで終わらせないでどんどん市民運動としても立法運動としても継続していきながら、政治の世界に働きを強めていく。
最初の頃言われていた「在日特権」というデマカセに対して対抗言論をつくることが遅かった。反論しようにも、あきれ果てて反論できない状態が続いたが、そうではなくてねばり強く虚偽を暴いていく。被害の実態もアピールし続けていかなければならない。
日本で初の「反差別法」
有田 国会に40年いたベテランの江田五月さんから「よくできたね」と評価された。そういう実績のある元法務大臣などの評価が象徴的だった。自民党、公明党の中の様々な流動的な要素も含めて、東京五輪を何年か後に見据えたことなのだが、やはり全国の多くの民団、解放同盟、公明党を含めた力の結果だと思う。現場で抗議した人を含めて。
日本で初めての反差別理念法であることは事実だ。それがヘイトデモが結果的に中止せざるを得なかったことを含めて、予想外の力を発揮しつつあると思っている。ただし、私たちが出した野党案、人種差別撤廃施策法案に比べれば大きな問題点を抱えている。
−−国会での動きをどうつくるか。
有田 今日本でヘイトスピーチがあるということを政府が認めたのに加えて、来年の3月に向けて法務省を中心に外国人の人権問題の調査を今やっている。来年3月の段階で日本に「人種差別がある」ということになると、当然論理的に言っても歴史的に言っても、人種差別撤廃条約を日本に具体化する法律がなければならないという方向に進んで行かなければならない。
そのことを国会レベルで言えば、これから臨時国会、通常国会での法務委員会を中心にした質問の中で、ヘイトスピーチ解消から人種差別解消へというような法律をつくる世論をつくっていこうと思う。それはやはりヘイトスピーチ対策法ができた教訓から学べば、学者、ジャーナリスト、弁護士、それから団体のさらなる地道な行動が、条例をつくることも含めて必要になっていくし、それが現実を変えていくんだと思う。
社会の空気徐々に変化
安田 メディアの世界が一番遅れていると思う。やはり表現の自由を前にすると、それ以上一歩も前に進まないという状況がメディアにはまだまだ多い。本当に愕然とすることがあるが、メディアの中でも表現の自由の問題に関わっている弁護士が、私からすればヘイトスピーチの問題を全然理解してくれていないなと思っていたが、最近は意外なことを言いだした。どこまで信念をもって言ったかわからないが、「表現の自由が大事だ。乱用の危険性」と言っておきながら、「でもそれを理由に何もしないというのは、ぼくらもできなくなっているんだ」と。
「例えば、東京都の場合だったら、大阪のように学者や弁護士や法曹関係者で第三者委員会をつくって、ヘイトに当たるのであれば、積極的に規制を加えるということをやったほうがいい」というようなことまで言いだした。少しずつ空気が変わってきているのは事実だと思った。
−−在日はどう受けとめていると見るか。
安田 私の昔からの知り合いの在日コリアンは、運動圏にいない人が多かった。普通に商売をやったり、サラリーマンだったりで、彼らはいまだに私とはヘイトの話はしない。見たくないし、聞きたくないというのが圧倒的に多いのではないかと思う。カウンターの現場にいるコリアンは、在日コリアンの社会から見ればほんの一部分であって、普通に市民活動をして社会に溶け込んでいる人は、この問題に正直言って触れたくない。当然だと思うし、こんなの見て落ち込みたくないだろう。自分の存在を否定されるような言葉をわざわざ浴びに行くような人はいないわけだ。
だから、この問題はやはり民団とか団体は別だけど、在日コリアンに直接的に立ち上がって何とかしろと言うつもりもないし、言ってはいけないことだと思っている。
私は、社会の側でどうにかしなくてはいけないという気がする。その場合、今使える武器として、対策法をがんがん使うしかない。少なくともこれに自民党は賛成しているわけだ。小池都知事も稲田防衛大臣もみんなこれに賛成したことになっている。
であるならば、一つできることは「対策法の理念を守れ」ということをまず政治家や首長に「あなた方はこれに賛同したのだから、その責任を果たせ」ということを地域レベルで言い続けることが大事だと思う。これに反することがあれば、きちんと正していかなければならないという義務、責務があるんだということをもう少し強く言い続けてもいいんじゃないか。
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理念から実践に向けて
「人種差別禁止法」の実現を 安田
地方条例を全国に広げよう 明戸
−−急いで取り組む課題は何か。
安田 地方条例の整備も必要だ。それと、禁止規定がないということを問題にし続けていかねばならない。最終的な目標は国連の人種差別撤廃条約に基づいた人種差別禁止法、それは野党法案に基づいたものに練り上げていくか、あるいは新たに禁止法をきちんと成立させるか、対策法を入り口にした上でさらに本来もっていた理念に近づけていくかということを、市民レベルで学習、議論しながらもっていくことが大事じゃないかと思う。
「対策法は選挙に関しては役に立たない」ということではなくて、もう少し動きとしてきちんと使えるようにしなければならない。現状でも十分使えることがいっぱいあると思う。
明戸 朝日新聞に頼まれて表をつくったことがある。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本で人種差別禁止法とヘイトスピーチ規制、ヘイトクライム法がどこの国にあって、どこの国にないのかを「〇×」で示した表だ。日本はすべて「×」だった。今回ヘイト対策法ができたわけだが、しかし日本のヘイトスピーチのところを「○」にできるかと言えばそれはできない。
ドイツとかフランスとかイギリスでは、ヘイトスピーチ規制と言えば刑事規制を指すからだ。とはいえ日本の場合、「×」だったものが変わったことは間違いないから、「△」にして注をつける形にした。
そういう意味で、あえて学者的立場から各国の比較で見た場合、お世辞にも十分な法律だとは言えないというのが一方にある。ただ、もう一方で有田さんの奮闘や自民党の変化などを見ていて、たとえ不十分だとは言え、まさかこのスピードで通るとは、との驚きもある。
しかもヘイト側には予想以上に効果が現れているのは確かだ。そういう意味では、小さな一歩だが本当に重要な一歩だと改めて思う。
−−地方条例づくりが大事だと。留意しなければならない点は。
明戸 その上で今後必要なことは、まずは地方条例をつくることだ。川崎がすでに動いているし、他の自治体もありうると思う。
また条例と言った場合には大阪のヘイトスピーチ条例があり、具体的に使えるかどうかという点で言えば、大阪方式のほうがやりやすい場合もあるだろう。大阪的なものをうまく生かしつつ、各地で条例なりそれに近いものをどれだけつくっていけるか。
大阪方式で流れつくれ
2014年、最初に国立市で国にヘイト対策を要請する意見書が出たが、1回目は大変だった。それに対する攻撃もすごくあった。それから2件目、3件目が出て年内に2桁、その後は数えられないくらいになった。最初のいくつかは大変だが、あとは流れができてくる。
条例なので意見書と違って簡単にできるわけではないが、地方というのはいったん流れができるとそれにならって進んでいく。
その流れをどういうふうにつくるかだ。とはいえ流れをつくる時に変な流れをつくってしまうと、不十分な条例ばかり量産されることになって、それはまずい。どれだけ具体的な内容を盛り込んだ形で流れをつくっていけるか、そこが非常に大事だ。
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新たな変化の兆し
根づかせたい闘う民主主義 有田
市民運動と連携民団に期待 李
−−対策法は浸透しているか。
安田 空気が劇的に変化したとは言いにくい部分はあると思う。ニュースにはなったし、記事にもなったが、それがどこまで理解されたのか。まだまだこれからだと思う。
むしろこれから周知徹底させる。これは行政にどんどん宣伝してもらうしかないと思う。「私たちの国では、私たちの地域では地域として自治体としてヘイトスピーチを許さないんだと、認めないんだという責務が生じました」ということを、われわれもどんどん言っていかなくてはならない。
取材してみても、ヘイトスピーチという言葉の流通はもう終わったと思っている。
なくす義務自治体側に
ただ、一方で危惧するのは長崎県平戸市の市長が堂々と自分のSNSで桜井支持みたいなことを訴える。そういう首長がいる。本来自治体の首長になった以上、ヘイトスピーチをなくす努力をしなくてはならない義務があるにもかかわらず、桜井がどれだけ得票するかということが市民社会の力量を示すことだみたいなことを書いて、批判を受けてもまったく意に介さない首長がいるわけだ。これは対策法の理念をまったく無視している。
−−ネット上でデマを撒き散らすことを止める手立てはないのか。
李 地震などの災害の際に、デマが流された場合、まず行政がデマに惑わされないようにとの広報をすることが求められる。規制法の趣旨からして当然の責務だ。
判決で予想超す賠償金
有田 熊本地震の時に、「ライオンが逃げた」とツイッターで書いて逮捕された事例がある。朝日新聞の元記者の娘さんを殺すという匿名の事例も裁判で予想以上の損害賠償が出ている。そういうことをひとつひとつ積み重ねていくことが大事だと思う。面倒な話だけれども。
安田 この裁判では当初、原告側の請求額は100万円だったが、「200万円に相当する」との判決が出た。裁判官がこれは悪質だからもっとつりあげたほうがいいと。
これはそういう空気をつくりあげたこのヘイトスピーチ対策法に関わった人の成果だとして、もっと注目してもいいんじゃないかと思う。
明戸 ヘイトスピーチという差別の問題のフレームもあるが、もう少し広く名誉棄損なども含め、ネットの特徴であった匿名性の問題に対する雰囲気がこの間、相当変わってきていると思う。
以前だったら「ネットのことだし」と流されることが多く、これは社会でも司法でもそうだった。それがこの1年くらいで変わってきたなという感覚がある。そこには当然ヘイトスピーチの問題も入ってくるわけで、「匿名だから何を言ってもいいんだ。ネットだから問題ないんだ」ということが許されない空気がかなりはっきり出てきている。
法務省内も反差別同調
李 法務省の前のガラスの掲示板に「ヘイトスピーチを許さない」というポスターが並んだり、川崎のヘイトデモにも同じ文言を訴える法務省の電光掲示板を備えた車が出た。一昔前なら考えられない、法務省がそんなことするなんて。それは本当に大きな力がつくられた結果だと思う。
−−公職者のヘイトもあったが。
明戸 ネットに関して付け加えなくてはいけないのは、熊本地震の際に小坪慎也行橋市議会議員が差別デマを肯定したととられかねない発言をしたことだ。
日本は人種差別撤廃条約の4条を留保しているが、厳密に言うとそれは(a)(b)の留保であって、(c)の公職者に関する規定は留保していない。こうしたことをふまえれば、小坪議員の発言は公職者でない人が行った場合よりも強い責任が問われることになる。もちろん匿名の陰に隠れてやっている人たちに相応の対応をするというのも重要だが、それ以上に公職者への対応が急務だと思う。
李 今、石原慎太郎が都知事だったら、「三国人」発言はできなかっただろう。
明戸 確かに。あれは典型的な扇動発言だった。
地域住民が堂々と批判
安田 アメリカ大統領選でトランプに対するカウンターがすごい。人種差別的な体質を民衆レベルで許さないという動きはいいと思う。ああいう形でレイシストに対しては、多くの地域住民がみんなで堂々と批判できるような社会を実現させたい。
明戸 トランプの事例はある種参考になる。日本の公選法には細かくいろんな「べからず」が書かれているが、アメリカの場合はかなり事情が違う。実際トランプの集会に反対するカウンター側の人たちが入って抗議したりしているし、これはひとつの参照事例としてありうると思う。
有田 ドイツに「闘う民主主義」という概念がある。今回の選挙でのヘイトスピーチの現れ方は、桜井たちも初めての経験だったが、カウンターにとってもこれだけの規模の選挙は初めての経験だから、もう一回カウンター精神に基づいて、闘う民主主義としてどうこれから対処していくか。
来年都議選に出てくるだろうから、今から充分検討しなければならない。
明戸 EU(欧州連合)の議会選挙が2014年にあって、極右政党がかなり躍進した。その際、どの国のどの政党の誰が差別発言をしたかという報告書をNGOがちゃんとつくっている。今回の都知事選でもネットなどで監視活動が行われたが、それをなるべくきちんとした形で残しておく。それをその後裁判などになった時にどれだけ参照できるか。選挙というのは公選法で守られているとも言えるけれど、まとめて記録しやすいというところもあるので、はっきりした証拠になる。そういう記録の部分も重要だ。
立候補させない運動も
−−レイシストを立候補させないための方途は。
有田 東京都の条例を早く打ち出すための動きを政党レベルにも働きかける。差別問題では公明党、共産党、民進党も一致できるわけだから、そこに早く働きかけていくことをしなくてはならない。
川崎、神戸、京都、福岡もやろうとしているが、大阪に続いて東京も舛添前知事がやろうとしていた。下準備はあったのだから、早くつくる。そういう世論をつくっていくのが大事だ。1年あればできる。
許さないぞ常識形成を
安田 選挙運動でレイシストにヘイトスピーチをやられることが問題だ。これをどうするかを真剣に考えなくてはならない。条例をつくることが最優先課題で、それはひとつのアピール「東京都民はヘイトスピーチを許さない」というのは反対のしようがない。頭の中がヘイトの政治家であっても。
「あなたヘイトスピーチを認めますか、認めませんか」と言ったら、首相だろうが防衛大臣だろうが、「認める」とは間違っても言えないはずだ。どんどん堀を埋めていくことが大事じゃないかと思う。
明戸 新都知事に対して、オリンピックに向けてヘイトスピーチの問題は外面的にまずいということを訴えていく必要があるだろう。外面を気にする人ではあるから、そこを突いていくのが有効だと思う。
李 都条例の成立が重要だし、選挙運動に名を借りたヘイトスピーチをも許さないという常識の形成が必要だ。すでに大手メディアは問題にしている。日本人の市民運動と連携しながら、民団もさらに力を尽くさねばならないし、そう決意している。いままでの大きな成果を基に、さらに積み上げていくべきだし、積み上げることは十分可能だ。
(2016.8.15 民団新聞)