掲載日 : [2016-06-22] 照会数 : 4527
連鎖反応恐れる北韓中枢…レストラン従業員の集団脱北事件
[ 朝鮮新報(6月8日付)が報じた朝鮮総連による駐日韓国大使館への抗議デモ ]
北韓の各機関や官営メディア、朝鮮総連が連日、浙江省寧波にある北韓レストランの従業員13人(女性店員12人、男性支配人1人)が4月に集団脱出し、韓国入りしたことについて、「集団拉致事件」だと中傷し、韓国政府に謝罪と送還を要求するキャンペーンを展開している。
「拉致だ」「送還せよ」
総連も動員 連日韓国中傷
北韓労働党の李洙墉副委員長が今月1日、習近平国家主席と会談するため北京を訪れた際、中国共産党対外連絡部の宋濤部長とも会い、13人は韓国当局により誘因・拉致されたと主張、合法的に居住する北韓住民の保護に格別な努力を求めたという。これは、事件が中国の黙認あるいはほう助によって起きたとの立場から、遺憾の意を表明したものだ。
これに対して中国側は、事件の具体的な経緯については触れず、原則的な立場を示すにとどめたという。中国外務省は事件が表面化した直後、「調査の結果、北韓の従業員は正規のパスポートによって合法的な出国手続きを踏み、中国を出た」と明らかにしていた。
北韓レストランは外貨稼ぎの手段として中国や東南アジア、中東地域に130店舗ほど展開されている。従業員は出身成分や忠誠心を基準に選抜されたうえ、徹底した思想教育と厳しい監視体制のもとに置かれる。
今回の集団脱出の特徴は、いわばエリートに近い層で起きたこと、互いに監視し合う職場仲間が意思統一をはかったこと、そして「合法的な手続きを踏んでの脱北」であったことの3点だ。北韓中枢に与えた衝撃は小さいはずがない。
北韓の関係機関やメディアは、「国家情報院主導の集団拉致」であるかのように主張し、「被害者」13人の送還や家族との面談などを求めるキャンペーンを展開する一方、国連の人権理事会議長と人権高等弁務官らに書簡を送り、「被害者」を家族のもとに帰すべく手を尽くすよう訴えている。
北韓はまた、韓国内の従北勢力を動員して13人の関連情報を開示するよう要求している。だが、この13人に限らず、注目度の高い脱北者についてはとくに、身辺保護や北韓の家族に対する配慮からも一定期間、関連情報を開示してならないのは鉄則中の鉄則だ。韓国当局がそれに応じるはずもないことをもって「国情院による企画脱北」であるかのように印象づけようとしている。韓国内の一部の従北メディアは「女性従業員の一人が北韓への送還を求め、断食をして死亡した」とまで報じた。
北韓中枢がもっとも恐れているのは連鎖反応だ。先月中旬には中国陝西省西安の北韓レストランから女性従業員3人が脱出し、今月1日までに韓国に到着したという。北韓レストランのほとんどで客足が遠のき、休業や閉店も相次いで従業員に動揺が広がっている。
総連は5月30日、駐日韓国大使館前でデモを行い、「人道主義と国際慣例に沿って女性たちと家族の直接対面を一日も早く実現せよ!」などと叫んだ。日本人拉致事件、北送日本人妻の里帰り要求にも沈黙したままの総連は、自らの醜態をまた一つさらした格好だ。
(2016.6.22 民団新聞)