掲載日 : [2016-06-22] 照会数 : 4315
「対北制裁」呼応広がる…〞対話攻勢〟にも緩まず
[ 韓ロ外相会談後に成果を強調する尹炳世外相(左)とラブロフ外相(13日) ]
国内の資産を全面凍結…スイス・ロシア
「労働者」全員送り返す…東欧諸国
北韓に対する国際社会の制裁強化は、北韓の対話攻勢によっても緩む気配がない。国連安全保障理事会が採択(3月)した制裁決議2270は異次元の厳しさを備えており、過去初めて、北韓体制に確実な影響を与え得るとの認識が浸透してきたのに加え、韓米両国による独自制裁や外交努力の影響も奏功している。
幹部工作員を拘束
中国当局は今月初め、北韓と国境を接する丹東市を拠点にした北韓労働党の幹部工作員を拘束し、5億円近い人民元と金塊を押収、この幹部の指揮下にあった貿易担当者2人を追放したことがこのほど明らかになった。3人は軍事に転用可能な電子機器など、制裁対象品目の密輸に従事していた。
拘束・追放は、李洙墉労働党副委員長が第7回党大会の内容を説明すべく習近平国家主席と北京で会談(1日)し、帰国(2日)した数日後とされる。習主席が北韓要人と会談したのは3年ぶりで、李副委員長は金正恩党委員長のメッセージを口頭で伝え、関係修復を探ったとされる。このタイミングでの摘発は、韓半島非核化に向けた制裁実施への強い姿勢を示すものだ。
中国が決議2270の履行策を正式に施行したのは4月5日。北韓からの輸入額はこの4月、前年同期比で19・3%減にとどまった。3月中の駆け込み輸入分が税関や統計処理の遅れによって4月の統計に反映された可能性もある。5月の統計が待たれるところだ。
4月にジェット燃料など25品目を輸出禁止リストとして発表した中国は14日、軍事転用が可能な磁石、超強力鋼、塩化アルミニウムなど40品目を追加した。民生用は除外されるため抜け道が多いとされる貿易でも、制裁網は着実に整備されており、中国人密輸業者の逮捕も続いている。
米国は2月、制裁に違反した企業や政府を米国の金融システムから締め出すことを可能にする法律を成立させた。これは中国の国有銀行による北韓の口座凍結や、スイスとロシアが5月、国内にある北韓の機関、団体・個人の資産を全面凍結する強硬な金融制裁につながった。北韓中枢による資金隠匿、贅沢品取引の拠点とされてきたスイスの影響は大きい。
さらに米国は、北韓を資金洗浄の「主要な懸念先」に指定、第三国の口座を利用した資金調達を断ち、国際金融システムからより孤立させるべく制裁を強化すると発表(1日)、すべての政府と金融当局に米国と同様の措置を講じるよう呼びかけている。
韓国はこの間、北韓と友好関係にある国々への外交に力を入れてきた。朴槿恵大統領は5月、イランに続いてアフリカ3カ国を歴訪し、経済協力拡大の道を開く一方、制裁決議の履行に協力を求めた。北韓と軍事技術交流のあるイランとの首脳会談では韓半島の非核化で合意し、ウガンダとは30年間続いた北韓との軍事協力協定の終了を確認した。ウガンダはこれに基づき、50〜60人いた北韓の軍・警顧問団を撤収させた。
ロシアも踏み込む
今月に入っては尹炳世外交部長官がキューバを訪れてロドリゲス外相と公式としては初めて会談(5日)し、国交正常化へ大きく踏み出した。続いてロシアを訪問、ラブロフ外相と会談(13日)し、「両国間の多角的な協力の増進において北韓がもっとも大きな障害物」との認識で一致した。北韓問題に触れることさえ避けてきたロシアも踏み込んだ印象だ。
中国・ロシアの反対で決議2270に盛り込めなかった北韓労働者の海外送出にもブレーキがかかっている。これも、米国が3月に発動させた大統領令の波及効果だ。ルーマニア、ブルガリア、チェコなどは自国内の北韓労働者に全面帰国措置をとり、ポーランドもビザ発給を中止した。韓国当局によれば、北韓の労働力輸出は50カ国余に最大で6万人、年間で220億円以上を稼ぐという。
北韓に対する制裁効果は着実に表れているとはいえ、体制改革を促すにはほど遠い。北韓は核開発の「凍結」を掲げて対話攻勢をかけ、米国が今年11月に、韓国が来年12月に迎える大統領選挙に向け揺さぶりに出てくる可能性が高い。国際社会のいっそうの協調拡大が望まれている。
(2016.6.22 民団新聞)