展示総数1000点に
在日韓人歴史資料館(鄭進理事長、姜徳相館長)が開館して11月24日で満10周年を迎える。これを記念、200点以上にのぼる新資料を企画展示室で公開している。テーマは寄贈品展「ガラクタのなかのお宝」。また、常設展示室でも13日からサハリン同胞に関する資料など100点が新たに加わった。これで展示資料の総数は1000点を超え、いちだんと充実したものになった。
企画展で展示した新資料は、寄贈を受けながらスペースの関係でこれまで日の目を見なかったものばかり。なかには開館前の準備委員会当時に寄せられたものも珍しくはない。今回、「感謝を込めて」公開に踏み切った。企画展示室は寄贈者にとって「メモリアルホール」ともいえる。
落ち着いた色合いのチマ・チョゴリからは、年配の婦人の後ろ姿を垣間見ることができるようだ。愛知や大阪の同胞などから寄贈を受けた。全部で20着を超す。60〜80年代に着用された。大切に扱われてきたであろうことは手入れの良さからうかがえる。
伝統の刺繍を施した長い夫婦枕は53年、嫁ぐ娘が父親から贈られたもの。娘を思う在日1世の愛情が伝わってきた。
洗濯後の仕上げに使った2本の砧(パンマンイ)も。60年代ごろまで在日同胞社会では一般的に使われていた。東京・中野の蘇在鳳さん(80)は10代のとき、疎開先で母親と2人、一緒に布を叩いたものだと懐かしそうに振り返った。
1930年代に使っていたという火鉢、漢方薬を煎じたやかん、すり鉢とすり棒、長いキセルからも、これらを使用した在日1世の面影が偲ばれる。
展示品で目立つのが民芸品の数々。おそらく、韓国へ里帰りしたついでにお土産に買ってきたものだろう。故郷を懐かしむ気持ちは寄贈者が60、70年代に愛聴したという「韓国民謡」や李美子のLPレコードでも明らか。韓鎬善自選傑作集第1集軽音楽編のタイトルは「望郷の歌」だった。
会場内には「鳳仙花」や「木浦の涙」といった解放前の愛唱曲がバックグラウンドミュージックとして流れている。企画展示室を訪れた観覧者からは「昔の我が家に久しぶりに帰ったかのようで懐かしい」という感想が聞かれた。16年4月30日まで開催中。
記念事業も続々
常設展示室も大幅なリニューアルを進めている。姜館長は、「開館当初こそ時期を逸したと思ったが、資料館の存在が知られるようになってこの1、2年、さらに新資料が増えた。学芸員も使命感に燃えて育ってきた。いまになってようやく間に合ったとの思いだ」と話している。
10周年記念事業も目白押しだ。セミナー室で毎月開催してきた「土曜セミナー」の講演録の一部が冊子になった。タイトルは『朝鮮近現代史から日本を問う』。
収録テーマは「抗日・東学農民戦争、隠蔽された殲滅作戦‐日清戦争120周年にあてて」(井上勝生)、「明成皇后殺害について」(金文子)、「日韓関係からみた関東大震災朝鮮人虐殺‐国史を超えて」(姜徳相)など5編。1000円。
『図録』の改訂版も発刊に向けて準備中。11月21日にはセミナー室で大島渚監督の作品「絞死刑」(68年、尹隆道出演)を上映する。14時〜無料。要事前申し込み。
在日韓人歴史資料館(03・3457・1088)。
(2015.10.14 民団新聞)