掲載日 : [2016-03-30] 照会数 : 5753
ヘイトスピーチ看過せず人権救済申し立て…在日同胞ら3人横浜法務局に
【神奈川】川崎市で繰り返されるヘイトスピーチ(差別扇動行為)に業を煮やした市内の在日同胞ら3人が16日、横浜地方法務局川崎支局を訪れ、人権侵犯被害の申告を行った。特定地域でのヘイトスピーチをめぐって法務局に救済を申し立てたのはこれが初めてとされる。
被害を訴え出たのは、在日同胞の多く住む川崎市南部の臨海部で暮らす在日1世の趙良葉さん(78)、3世の崔江以子さん(42)とその夫の中根正一さん(53)。いずれも今年の1月31日、排外・差別的なデモ隊が集合場所とした市内川崎区の富士見公園でヘイトスピーチにさらされた。
申告書によると、趙さんは現場で「差別をしないで!」と訴えたのに対し、「ゴキブリ朝鮮人は出て行け」と自らの尊厳を傷つけられる言葉を浴びせられた。以来、ひどく落ち込んだ。娘や孫がこれからも差別にさらされ続けるのではないかと思うと眠れず、体調に影響が出ている。
崔さんは、自らの意思でヘイトデモに抗議するという中学1年の息子に付き添った。息子は「朝鮮人は日本の敵です」と言われ、これまで大切にしてきた韓日ダブルの出自を否定され、「体が半分にされたような気持ち。心がバラバラにされたようだ」と悔し涙を流した。
崔さんは「ぶち殺せ」と叫ぶデモ隊とわが子の流す涙を見て、「二重の苦しみ」を味わった。
中根さんは社会福祉法人の職員としてこれまで地域から民族差別をなくすために奔走してきた。それだけに、「妻と息子が激しい差別にさらされ、抵抗を余儀なくされている姿を見るのは耐え難い。激しいむなしさに繰り返し襲われる」と述べた。
川崎市でのヘイトスピーチは13年以降、12回を数えた。このうち直近の2回は、南部臨海部を標的としている。
3人は「ヘイトデモで人権と尊厳を傷つけられているのは私たちだけではない。川崎市南部臨海部に仕事や生活の根拠を持つ私たちの家族、友人、地域の高齢者、子どもたち、そしてその保護者の多くが深く傷つき、強い苦痛を感じている」と訴えた。
法務局はその場で調査を進めることを約束した。調査の結果、人権侵害が認められても、その救済措置に法的な拘束力はないが、川崎市にヘイトスピーチ根絶のための実態調査、および基本行動計画の着手を要望している地元の市民運動団体には大きな追い風になりそうだ。
(2016.3.30 民団新聞)