掲載日 : [2016-07-27] 照会数 : 4738
<寄稿>金正恩に迫るICCの審判…金烈洙(誠信女子大国際政治学教授)
必罰の先例 直視を
ついに来るものが来た。金正恩が北韓の住民人権侵害主犯として烙印を押されたのだ。米国国務省は6日、北韓人権侵害報告書を発表し、金正恩らを北韓住民人権虐待容疑で制裁対象に含めた。
米が異例の制裁
今年2月に制定された対北制裁強化法(H・R・757)にともなう「北韓人権報告書」だった。米国財務省はこれを根拠に金正恩を含めた北韓の15人と主要機関8カ所を制裁対象に追加指名した。
これは事実としてものすごい衝撃を与えている。北韓を牛耳る金正恩と下手人すべてを制裁対象に含めたことも異例のことだが、反人道犯罪を罪状に制裁することが極めてまれだからだ。
北韓は金正恩が北韓幹部らと並んで制裁対象に含められていることに対して、予想通り激しいアレルギー反応を見せている。北韓外務省とインターネット宣伝媒体も連日誹謗攻勢と脅迫をしている。
国際社会が北韓の悲惨な人権蹂躙状態に怒り、関心を持ち始めたのは1997年、北韓の政治犯収容所の写真が日本の朝日新聞に掲載されてからだ。この後、現在の人権理事会の前身である国連人権委員会が2003年から、そして国連総会は05年から毎年、北韓人権問題を論議している。国連総会は05年から一年も欠かすことなく北韓人権決議案を採択した。
ついに国連人権理事会で13年3月、北韓の人権侵害実態を詳細に把握する目的でCOI(北韓人権調査委員会)を設置した。COIは北韓の人権侵害実態に対し1年間の調査をした後、14年2月、372ページに及ぶ分量の報告書を発表し、世界を驚かせた。
なぜなら北韓で起きている人権侵害の相当部分が「反人道的犯罪」(crimes against humanity)に該当するからだ。
国際社会の執念
この報告書の後の暴風は激しかった。14年開催された国連人権理事会はCOIの活動を継続するために、現場事務所設置を決定した。これにしたがい、15年6月、ソウルに「国連人権事務所」が設置された。この事務所の役割は、北韓政権が組織的に強行してきた反人道的犯罪の証拠を収集・保存し、徹底した真相調査と責任究明をすることにある。COIを恒久的な組織として出帆させたわけである。
国連総会と安保理も加勢した。14年9月、国連総会は北韓人権問題を国連安保理次元で論議し、人権侵害責任者を国際刑事裁判所(ICC)に提訴することを勧告した。
この後、国連安保理は昨年まで2年連続で北韓人権問題を公式討議した。国連安保理は北韓人権犯罪のICC提訴問題を論議し、今回、米国までも独自の金正恩制裁方針を明らかにしたほどで「金正恩のICC出頭」は時間の問題のようだ。
今年3月、国連人権理事会は「専門家グループ新設」を勧告する対北決議案を採択した。2人が任命され、6カ月間活動する「専門家グループ」は北韓政権の人権侵害に対する責任究明と処罰問題を担当するようになった。あわせて韓国国会も今年2月、北韓の人権問題を取り扱う根拠と機構を設ける北韓人権法を通過させた。
犯罪記録を蓄積
この法にしたがって新設された韓国の「北韓人権記録保存所」は北韓住民の人権状況を監視し、人権改善のために各種人権犯罪資料を収集・記録・保存する仕事を履行するようになる。北韓政権が犯した反人道犯罪を体系的に管理すれば、これを根拠に加害者処罰も可能だ。
カンボジアのキリングフィールド大虐殺の張本人たちは35年ぶりの14年、終身刑を受けた。ボスニア内戦当時、良民を虐殺した政治指導者ラドバン・カラジッチも21年ぶりに懲役40年刑に処された。北韓の良民たちの人権を蹂躙してきた責任者金正恩も住民虐待など、反人道的犯罪を止めなければ、必ずICC法廷に立つようになることを覚悟しなければならない。
このたび金正恩と一緒に新たに人権犯罪に加担機関として指名された党組織指導部・保衛部要員たちも金正恩の反人権犯罪を継続して幇助すれば「厳重な法の審判を受けることになる」と肝に銘じなければならない。審判の日は、それほど遠い先の話ではない。今決心しなければならない。
(2016.7.27 民団新聞)