竹中大工道具館開館30周年記念
同質も異なる美意識
景福宮(韓国)、紫禁城(中国)、薬師寺金堂(日本)という東アジアを代表する宮殿建築を支える職人が手がけた建築模型や大工道具、設計図などをそろえた巡回企画展「日中韓 棟梁の技と心」が、24日まで東京・江東区の竹中工務店東京本店ギャラリーエークワッドで開催された。中国大陸、韓半島、日本列島へと伝わり、それぞれの美意識が育んだ建築文化の違いと共通点が観覧客の関心を呼んだ。11月から神戸で、来年1月には名古屋を巡回する。
企画展は竹中大工道具館(赤尾建藏館長、神戸市中央区)の開館30周年記念。
会場入り口には長さ4㍍、実寸大の救仁寺大祖師殿組物の模型。韓国の古建築界最高の大工として認定されている申鷹秀大木匠(重要無形文化財74号)が最も愛着を持つという建物だ。また、申大木匠がよみがえらせたソウル市の崇礼門(南大門)も10分の1の構造模型で展示した。
紫禁城は太和殿の組物(実物の5分の1)と、建物の配置や室内意匠の設計に用いる紙模型を紹介。中国の匠師・李永革氏の理念と設計術の一端を垣間見ることができる。会場奥の奈良の薬師寺東院堂の構造模型(2分の1)には線の美しさを極めようとする小川三夫棟梁のこだわりが感じられた。
各国の伝統建築は中国、韓国、日本の3カ国で共通する要素が残る一方、差異も歴然。最高級の建築である宮殿や寺社建築に用いられる代表的な木は韓国が赤松、中国は「楠木」、日本は檜。展示の見本を持ってみると、赤松の重さが際立つのに対し、楠木と檜は比較的軽い。木材を丸棒にする時、いったん八角形にしてから加工するのは3カ国共通だという。
赤松と楠木はたとえソリがあっても、「木が育った形のまま」その性質を生かして使う。韓国の屋根の際だったソリは特徴的だ。彫刻などの装飾が目立つのも韓国と中国。一方、日本は直線的でデザインもシンプルだ。竹中大工道具館の赤尾館長は「美の感じ方、国民性の違い」という。
赤尾館長によれば「気象条件も各国建造物に影響を与えている」という。雨を避けるひさしは日本が最も長い。しかし、韓国や中国も日本ほどではない。屋根を支えるため、棟から軒先に渡す垂木は、韓国が斜めなのに対し、日本はまっすぐだ。
アンケートで「日本と韓国、中国の伝統建築を同じ会場で見比べることができるのは貴重。どこが違い、どこに類似点があるのかを東アジア全体の視点で考えることができ、とても面白かった」との趣旨を書き残す来場者が多かった。
11月には神戸で
企画展は11月1日から12月28日まで神戸市中央区熊内町の竹中大工道具館で開催される。関連イベントとして11月29日、兵庫県立美術館ミュージアムホールに韓・中・日の棟梁が勢ぞろい。11時からシンポジウム形式で「技を語る」。11月30日には竹中大工道具館木工室で韓国と中国の棟梁による実演も。午前中が韓国、午後から中国。9時30〜16時30分、入館料500円(一般)。シンポ・実演は無料。同館(078・242・0216)。
(2014.10.29 民団新聞)