掲載日 : [2020-05-27] 照会数 : 7078
韓日相互の文化理解へ副読本…京都国際学園『関西に残された朝鮮通信使の足跡』発刊
京都国際学園(李隆男理事長、朴慶洙校長)は中・高校生向けの社会科副読本『関西に残された朝鮮通信使の足跡』(218㌻、写真)を発刊した。カバーしたのは朝鮮通信使にゆかりの深い兵庫、大阪、京都、滋賀の2府2県9カ所。それぞれ地域概観、関連人物、疲れ取りの宿、残された遺跡、コラム、エピソードで構成。写真と図版をふんだんに使い、生徒の視覚に直接訴えかけてくる。同校の授業「韓国地歴」のなかで活用する。
朴校長と金英芝教頭に同学園の社会科教員が加わり5人で分担。それぞれ足かけ1年間かけて現地でフィールドワークを重ね、韓・日両国語併記で執筆した。
著作権の関係から関連の遺跡・遺物の多くは担当教員自ら現地で撮影した。金英芝教頭は「写真にはこだわりがある。何回も撮り直したので、時間がかかりました」と振り返った。
朴校長は冒頭の「朝鮮通信使概観」を担当。朝鮮通信使の現代的意義を次のように記した。
「今日、韓日両国がお互いに克服しなければならない問題が多数存在します。この中でも歴史認識と慣習の相違、民族感情などが最も大きな課題として挙げられます。朝鮮通信使を通して、相互の文化に対する理解を深めることが第一歩になります」。
これは江戸時代の儒学者・雨森芳洲が対朝鮮外交で大事にした「誠信交隣」、すなわち「つねに相手の立場を考えて、ふたつの国の間にあった歴史や文化の違いによく気付いた上で交わる」とも相通じる。朴校長は「この本を通して韓国と日本が、互いに理解して協力する必要があることを感じてほしい」と語った。
本書は韓国教育部が主管する在外韓国学校・教科書執筆公募事業の一環で開発された。監修は金顕博士(京都産業大学)と京都造形芸術大学の仲尾宏客員教授。
1000部を印刷。関西地域の民族学校のほか、朝鮮通信使の研究や韓国史の授業など教育的な目的で活用する団体や個人に無償で提供する予定。
問い合わせは京都国際学園(075・525・3535)。
(2020.05.27 民団新聞)