東京・新宿で市民が運営するミニミュージアム、高麗博物館で企画展示「ユーモアと個性にあふれた隣人の絵心‐朝鮮時代の絵画をたどって」が開催されている。ソウルの知識産業社が73年に出版した全3巻100枚の複製画集の中から52点を選び、前期、中期、後期、末期と美術史の変遷をたどる構成だ。
担当したのは学芸員の井上憲二さんをはじめとするボランティアスタッフたち。1年がかりで韓国の絵画史を勉強し、展示作品一つひとつに独自の視点で平易な解説をつけた。
前期を担当した竹田淑子さんの一押しは安堅作の山水画「赤壁圖」。「力のある絵に韓国の歴史を感じる」という。
後期の真景山水を担当した井上さんは、「朝鮮と中国、日本は似ているようで違う。朝鮮絵画という目のフィルターを持つことで、より豊かな見方ができるようになる」と語った。
スタッフの一員で、現代美術家でもある関口澄子さんは後期、庶民の生活様相を描いた風俗画を担当。西洋画の陰影画法をいち早く取り入れた一人といわれる金弘道の代表作「相撲図」には「線に勢いがある。この人にしか描けない線をもっている」と専門家の目で講評した。
朝鮮朝時代の絵画は室町時代の水墨画に影響を与え、江戸時代の俵屋宗達、池大雅、伊藤若沖も学んだという。井上さんは、「他人のあら探しではなく、その人の持っている良さを発見すること。ここから相互の信頼が回復される」と話している。
4月26日まで。3月21日14時から美術史家の石附啓子氏による講演会「朝鮮絵画の魅力(仮題)」も。月・火を除く12〜17時。高麗博物館(03・5272・3510)。
(2015.3.18 民団新聞)