掲載日 : [2019-11-27] 照会数 : 5770
「北送」60年を在日100年史から再照明…菊池嘉晃さんが講演
[ 講演する菊池嘉晃さん ]
在日韓人歴史資料館は2日、第123回土曜セミナーの講師にジャーナリストの菊池嘉晃さんを招いた。講演テーマは「在日100年史における北朝鮮帰国事業」。
菊池さんは「北朝鮮帰国事業」に対する「日本による追放政策」や「日赤謀略論」には「事実誤認がある」と異を唱えた。「帰国」ではあるが、むしろ「移民的帰還」だったと明らかにした。
端緒として在日本朝鮮人連盟解散後の在日朝鮮統一民主戦線(民戦)とその後の路線転換で生まれた朝鮮総連による「帰国」実現を求める動きがあったことを挙げ、この「帰国願望」と「(北朝鮮に)帰ってくれたらありがたいという日本側のやっかい払い願望」の「奇妙な共鳴」が背景にあったとの見方だ。
「北朝鮮、朝鮮総連などは当時『帰国希望者を帰国させないのは非人道的』として帰国の実現を日本政府、日赤に再三求めていた。そうした要請を受けて、日赤は『帰国希望者がいれば、これを援助するのは任務』と考えていた」
「日本社会、在日社会だけでなく、世界的に社会主義への期待(幻想)が強かった当時、(民団系など一部の人々を除いて)韓国よりもイメージの良かった北朝鮮に帰国後、大多数が不幸な境遇に陥ることは予見できなかった」「現在の北朝鮮イメージを前提に当時のことを考えても、なぜ帰国事業が行われたのか理解できない」
菊池さんは「帰国事業そのものより帰国運動のあり方に大きな問題があった」として、「地上の楽園」などの「北朝鮮や総連側の宣伝と北朝鮮の実態との相違」を指摘した。近く「帰国事業」をテーマにした博士論文を加筆・修正して明石書店より刊行予定。
(2019.11.27 民団新聞)