2020年度基調(要旨)
◆はじめに
同胞の生活と権益を守り、韓日友好に尽力することを前面に掲げ、2018年2月に出帆した呂健二執行部は3年目を迎える。この間、民団に対する露骨な誹謗や理解不足の解消、悪化していく韓日関係の改善、ネットや一部メディアで広がったヘイトスピーチや嫌韓・反韓の動きに対し、労力を費やし粘り強く対処してきた。
74年間にわたって在日同胞社会を牽引してきた民団を、地方の実情やこれからの時代に適応した組織体に立て直すため、組織改革委員会を設置し、この間鋭意検討してきた。過疎地方本部の三機関長の国籍要件の解除や二機関制への移行については議論を重ね合意を得る状況にきているが、一層の改革に向け努力していきたい。
組織活性化の原点である同胞戸別訪問は計画を立て、持続的に繰り返してやっていく基本活動である。次世代や後継者、実務者の育成も、財政問題との関連もあるが喫緊の課題であり、全力を尽くしていきたい。
昨今の国内外の対立や分断、不透明な情勢をみるにつけ、在日同胞社会は民団を中心に小異を超え団結し、ぶれることなく、私たちが生きていける未来を確保していかなければならない。そのことを肝に銘じ、よりよい同胞社会、より信頼される民団を堅持し発展させていくため、本年も全国各級役員、団員、同胞、実務者と協働して、5つの柱を重点とした活動方針を推進していく。
◆韓日友好親善に尽力
私たちの要望と役割
韓日関係の成り行きに、全在日同胞が胸を痛め、心配している。
両国には長い歴史があり、良い時も悪い時もあったが、隣国だからこその知恵を働かせ歴史を築いてきた。戦後、民団が地域でコツコツと積み上げてきた草の根の韓日友好の絆を壊してはならない。
韓日間の政治的葛藤がこれ以上長期化すれば、民間交流や地域経済により深刻な打撃を与える。韓日関係の悪化は誰のためにも望ましくない。韓国と日本はすでに切っても切れない関係である。これまでのように政治的意図を持って反韓・反日感情を煽ろうとする試みがあってはならない。歴史問題が経済・安保に波及し、葛藤状態が続くのは誰にとっても何の足しにもならない。両国政府には関係改善に向け、迅速に賢明な解決をはかることを望む。
私たちは、民間次元で草の根の交流を大切にし、韓日友好の架け橋としての役割を一層果たし善隣友好を牽引していく。
韓日交流事業積極推進…関係発展へ最善
この間、良い時も悪い時も、民団が中心になって草の根交流を進めてきた。民間レベルでの交流を一層深め、多様な韓日交流祝祭や10月マダンを通じて、地域発展につながる韓日友好交流事業を積極的に推進していく。
青少年交流事業
「韓日パートーナーシップ宣言」や朝鮮通信使の平和と友好の精神を活かし、次世代の人的交流が発展するよう日韓親善協会等と歩調を合わせ、スポーツ、音楽、文化、料理交流を進めていく。
多文化共生社会実現へ
韓日の友好なくして在日同胞社会は成り立たない。民団は多文化共生社会実現に向けて、地域社会の発展に協力を惜しまず、貢献してきた。今後も自治体などと協調しながら、各種事業やイベントに参与し、民団の役割を一層厚くして、共に住みやすい環境づくりに尽力していく。
「誠信交隣」モットーに
雨森芳洲が残した言葉「誠信交隣」(互いに欺かず、争わず、真実をもって交わること)を大切にし、政治や報道に一喜一憂することなく、新たな韓日友好の歴史をつくる気概で強固な友好の橋を架けていく。その意味からも全国の民団が「韓日文化交流センター」としての機能を充実させるよう努めていく。
◆同胞の生活と権益を守る
ヘイトスピーチ根絶
ヘイトスピーチの根絶は、不可欠の課題である。差別煽動や憎悪表現に対して罰則規定がないのは国際的基準からみておかしいと言わざるを得ない。インターネット上のヘイトスピーチも広がっているのが現状だ。そういう中で、昨年12月に川崎市で罰則条例が全国で初めてできたことは、市民運動や本団の取り組みの大きな成果である。本年は川崎市の罰則条例をモデルに全国自治体でも広がり定着するよう活動を推進していく。
地方参政権は市民の権利として必要不可欠
私たち永住外国人住民に地方参政権を付与しないのは、人権問題であり「差別」だと国連人種差別撤廃委員会が日本政府に是正勧告を出している。参政権は人権の象徴であり、最も重要な権益である。運動が長期にわたっているが、私たち自身が強い気持ちで心を新たにし、正当な市民的権利として運動を盛り上げていかねばならない。日本社会の情勢を見る時、困難な壁を意識するが、私たちがあきらめたら、その壁を壊すことができない。本年もより多くの地域で勉強会や自治体への要望活動を進め、3回目となる国連への要望活動や裁判闘争も視野に入れた運動を講究していく。
生活相談センター拡充
昨年、埼玉と福島で開設され、専門相談員を置く相談センターは中央を含めて18個所となった。団員・同胞へのサービスをより充実させていくため、全国化を継続して推進するとともに、巡回活動や韓国の行政各部署の訪問と意見交換会を継続する。また今年から日本の行政機関との勉強会も予定に組み込んでいく。
全国の民団が担っている「韓国人旅行者支援センター」も日本を訪問する韓国人旅行者の各種相談、事故や災難時の支援を継続していく。
◆次世代を育成する
在日同胞オリニジャンボリ-
2001年に全国規模で始めた「オリニジャンボリー」(隔年開催)は今年20年目を迎える。ソウルで7月31日から8月4日までの4泊5日の日程で開催する。対象は小学生4年から6年生までの300人、運営スタッフ要員100人の計400人規模である。今年の開催で11回目となる。この間、青年スタッフを入れると4000人をこえる青少年がオリニジャンボリーから巣立ち、その後、各種サマースクールや学生会、青年会、民団のイベントなどに参加し、本国に留学する者も多く、大きな成果をあげている。全国民団の協助で本事業が成功裡に推進するようにしていく。
中・高・大学生対象、財団主催「母国研修」
中央本部主催による中高生対象のサマースクールは、オリニジャンボリーを大規模に開催することから、次年度に実施することとし、今年は在外同胞財団が主催する「母国研修」(中・高・大学生対象)への参加を呼びかける。具体的な日程等について決まり次第案内するようにする。学生会の「大学生ジャンボリー」は冬季(2020年3月1~4日)は長野で、夏季も8月中に開催する予定である。
各地域で独自のオリニ・青少年事業
昨年は、東北6県合同でオリニサマーキャンプが開催され、また東北地協では次世代育成に向けた文化センター事業に力点を置き、次世代プロジェクトセミナーも継続されている。東海3県(愛知、三重、岐阜)でも合同のオリニキャンプや運動会などが開催されている。過疎化が進む中、近隣の支部や本部と合同で、地域独自のオリニ・青少年のための行事やイベントを実施することで、青少年の輪も広がり、効果も期待できる。
2020東京五輪・パラリンピック韓国選手団支援
韓国選手団に対する歓迎行事及び支援については、体育会と調整しながら実施する。
◆組織基盤を強くする
同胞社会の和合と交流
ネットワークをつくろう!同胞世帯訪問活動
組織活性化の原点である同胞世帯訪問活動を継続して実施する。訪問活動は団員サービスの一環でもある。同胞の顔が見える訪問を通じてネットワークをつくり、要望や情報の交換、緊急時の連絡など、同胞が安心できるセーフティネットを準備していく。特に一人暮らしの高齢者の見守りや、親が共働きの子どもたちへの支援サービスも必要である。
計画的で地道な訪問活動を通じて、和合と交流を図り、新定住者や日本籍同胞、朝総連離脱同胞を積極的に民団に迎え入れ、在日同胞社会を良くしていくのが民団の役割である。
現在、四国4県に組織運営を補強する統括局長を派遣している。他の過疎地域にも統括局長の派遣を講究する。支部、地方、中央が連携・協働し組織の活性化に尽力していく。
組織力量強化…ワークショップと各種研修・セミナー
組織は人である。各級組織の役員、後継者、次世代、実務者の力量・見識を高めることで組織の基盤を強固にし、組織の活性化につなげていく。中央本部では昨年好評を得た「地域同胞指導者ワークショップ」を議決機関・監察機関と共同で開催する。またリーダー育成スクール(中央組織学院)の地方教室の開催を促進する。当面する課題に対処する地方本部の各種研修会、セミナー開催にも力を入れていく。
◆韓半島の平和統一に寄与する
北韓の非核化を求める
本団は、北韓の一日も早い非核化を求めるものである。韓半島で二度と戦争が起こってはならないというのが私たちの願いである。北韓は軍事挑発をやめ、韓半島の平和定着に向け、しっかりとした対話と意思疎通を図り、国際社会に開かれ、信頼を得る措置を一刻も早く取るべきである。
日本に住む私たちには一定の限界があるが、やれることは少なくない。今年は6・25韓国戦争勃発から70年目となる。本団の基本姿勢は自由民主主義に立脚した平和統一の希求である。北韓の核ミサイル兵器の廃絶を求め、同時に韓半島の恒久的な平和体制の構築を継続して求めていく。
朝総連との交流については、中央本部に設置された「平和統一推進委員会」に必ず事前報告する。本団は日本に生活基盤を置く在日同胞社会の代表団体として、日本社会の理解と共感を得られない限り、朝総連との交流は慎重を期さなければならない。
「北送」同胞の人権保障と自由往来を
本団は昨年「北送」60年に際し、特別シンポジウムを開催し歴史的検証をした。「地上の楽園」という宣伝に騙され、「北送」された10万人近い同胞や日本人家族の悲惨な人生に、改めて涙と憐憫と怒りを禁じえなかった。この犯罪的な「事業」に時効はない。北韓や朝総連は責任を免れない。今年も各地域の集会等を通じて、「北送」同胞の人権保障と自由往来を訴えていく。
在外選挙積極参与
第21代国会議員選挙(本国4月15日投開票)が行われる。在外国民の投票期間は4月1日から6日までだ。投票所は公館及び指定された場所で、登録を済ませている多くの同胞が投票に参与するよう、各級組織を通じて投票促進活動を推進していく。
(2020.02.26 民団新聞)