<朝鮮奨学会前代表理事 崔根福>
韓国・朝鮮籍が対象 まもなく募集開始
民族学校は別の支援
奨学金給与規程
1967年、奨学会の「奨学金給与規程」が3者全員一致で制定されました。その大きなポイントは対象(奨学生の資格)を日本の学校教育法第1条に規定する高校、大学に在学する学生としたことです。ですから当時、各種学校の韓国学校・朝鮮学校は対象となっていません。
その大きな理由として、韓国学校は韓国民団と大韓民国、朝鮮学校は朝鮮総聯と朝鮮民主主義人民共和国の支援がそれぞれあり、母国語、歴史を学び民族的素養を育んでいる。奨学会としては、そのような支援から零れ落ちている同胞学生を救うという趣旨のもと、日本の学校に通う絶対多数の同胞学生を支援するようになったと先達に学びました。奨学金給与規程には奨学会の精神が籠められています。
その後、韓国系の民族学校の中には「一条校」に移行する学校もありました。民団には「公益財団法人韓国教育財団」があり、こちらは韓国系民族学校生の応募が可能となっており、一方、総聯には「公益財団法人在日朝鮮学生支援会」があります。
再三の訴訟越え
1966年には、戦前、奨学会の本部があった在ソウルの「財団法人朝鮮教育財団」が、奨学会を相手取り「土地と旧館建物は教育財団のもの」と提訴しました。実質的には奨学会の所有権をめぐる韓国政府との裁判です。1976年、最高裁が「教育財団」の上告を棄却し、10年に及ぶ裁判は結審しました。
奨学会は1961年に大学、1966年には高校の奨学金給付事業を文部省の管轄のもと開始しており、「教育財団」の提訴は遅すぎたと言えるでしょう。戦後、直ぐに「教育財団」が所有権を主張していたら、現在の奨学会は違う形になっていたかもしれません。
その後も奨学会は数々の訴訟に悩まされました。特に2000年に起こされた「地上権確認等請求訴訟」は2004年に結審しましたが、奨学会の主たる収入源である西新宿の本館ビル建物の4分の1持分権が、朝鮮総聯のものとなり、その4分の1持分権も2005年に整理回収機構(RCC)に代位登記されるなど(朝鮮総聯がRCCに数百億に及ぶ債務を負っていたため)目まぐるしく推移しました(※土地は奨学会の単独所有)。
奨学会が、数々の裁判のすえ、この本館ビル建物の4分の1持分権をRCCから買い取ったのが2014年。ここに、ようやく本館ビルの土地建物すべてが奨学会の単独所有となりました。
その間、2012年には、これまで文部省管轄であった財団法人朝鮮奨学会から、内閣府所管の「公益財団法人朝鮮奨学会」に移行しています。
新宿駅西口の駅前にある奨学会本館ビルの土地は500余坪あり、その評価は300億円をくだらないとも言われます。様々な困難を乗り越え、諸先輩方が奨学会の財産を守ってこられました。奨学会の財産は同胞皆さんの財産だといっても過言ではありません。
2021年度の高校・大学(院)奨学生の募集も4月からはじまると思います。3月になれば「朝鮮奨学会」でインターネット検索をしてください。例年ならばホームページ上に募集要項が掲載されているはずです。繰り返しますが、朝鮮奨学会の奨学金は返済義務のない給付型で、後に返済しなければならない貸与型ではありません。大いに家計の助けになるものです。新型コロナ禍で苦しみが続く中、今年度できるだけ数多くの民団系の子弟が奨学会の奨学金に応募してくださることを願ってやみません。
(2021.03.03 民団新聞)