掲載日 : [2018-10-10] 照会数 : 7189
〝陳昌鉉さん、お帰りなさい〟郷里の金泉へ…バイオリン製作の名匠、遺品を市民に初のお披露目
[ 金泉市の金忠燮新市長と新たな協約書を交わす遺族の李南伊さん(左) ]
[ 在りし日の陳昌鉉さん ]
世界的に著名な在日同胞のバイオリン製作者、陳昌鉉さん(享年82)の遺品の一部がこのほど、生まれ故郷の慶尚北道金泉市にある金泉文化芸術会館で初めてお披露目された。
遺品は合わせて979点。遺族の李南伊さん(78、東京・調布市)が「たゆまぬ努力の前進こそが夢への一歩へとつながるとした主人のメッセージを一人でも多くの若者たちに伝えたい」と、2016から17年にかけて市に寄贈していた。市でもこの間に整理を終え、初めての一般展示にこぎつけた。
「バイオリン製作の過程」と題したコーナーでは石膏で陳さんの顔の形をとったデスマスクに添えて製作関連の設計図、様々な道具類、関連書籍など。「陳昌鉉の生涯」では、08年に韓国政府から贈られた最高位の国民勲章「無窮花章」や家族との記念写真などを展示した。展示会の会期は9月17日までの19日間だった。
李さんは8月30日、会場のオープニングテープカットに参加。「金泉市は夫が14歳まで過ごした故郷。今回の遺品展は本当の意味で『お帰りなさい』という言葉をいただくことになったと、私は思っています」とあいさつした。金忠燮新市長とは新たな協約書を交わした。
これら寄贈品はすべて2020年、市内にオープンする予定の「甘文国歴史文化展示館」内にコーナーを設けて永久保存される。そのオープン時には李さん自ら「金泉号」と命名した遺作を持参する。
陳さんは1929年金泉市生まれ。43年に渡日し、教員を目指して明治大学英文科に入学。国籍を理由に教員の夢をあきらめた陳さんは長野県の木曽福島に引きこもり、独学でバイオリン製作を開始。76年に米国フィラデルフィアで開催された「国際バイオリン・ビオラ・チェロ製作者コンクール」で6部門中5部門の金メダルを獲得し、当時、世界に5人しかいない「無鑑査マスター・メーカー」の称号を贈られた。
(2018.10.10 民団新聞)