掲載日 : [2016-05-25] 照会数 : 4353
<寄稿>離散家族は普遍的人権の問題…鄭柱珍(仁川大学兼任教授/21世紀戦略研究院企画室長)
「ハン」こそ解決の鍵
国際社会に広めたい「神明」
新緑あふれる5月は韓国の「家庭の月」である。離れて暮らす家族の絆がますます恋しさを増す時期である。
独特な民族情緒
情は韓国人にとって非常に特別な意味を持つ。情は人間の基本的な情緒に属するが、外国語に翻訳するのが非常に難しい、韓国人固有の感情的な特性である。韓民族は漢字の「情」を徹底的に土着化させた。「情がかかる」、「情を損なう」、「情があふれる」のような単語は、情に韓国語の接尾辞を付けてつくられた言葉だ。
情とともに、恨(ハン)も他の民族では簡単にその意味が分かりにくい言葉だ。強圧的要因によって情を断たれた家族は情義に飢え、渇き、恨で結ばれる。丙子胡乱時、清に連れて行かれ肉親と生き別れた先祖の恨、壬辰倭乱と日帝時、日本人たちに連れ去られた人々の恨、解放とともに共産党の弾圧によって引き裂かれた家族の恨などが受け継がれ、私たちの民族情緒の一部になった。
この恨が解ける時を「神明」という。神明は集団的でありながら強烈な感情的な経験で、周囲の人々にすばやく伝播され、多くの人と一緒にあちこちで混り合って高揚する特徴を示す。韓国人は最近では、2002年のワールドカップの時に神明の状態を満喫した。
「達者で、元気に生きよう」のスローガンの下、すべての地域の人が一緒に団結したセマウル運動も神明があったので成功した。胸の中に長い間残ったしこりの恨が何かをきっかけに解けたとき神明が出る。ワールドカップの時には愛国心とサッカーが、セマウル運動時は「達者で、元気に生きよう」の欲求が神明を呼び起こした。
韓民族には早急に解き放つべき恨が残っている。まさに、高齢の離散家族の恨である。彼らが今、胸の中の恨を解きほぐす神明を味わうことができるよう、韓民族全員が乗り出さなければならない。離散家族の恨を解く方法としては、韓国国民が新しい風を起こした近代化・民主化の経験を北韓に集中的に伝播するのが最も良い。北韓の人権、平和統一など、すべての南北の問題を一挙に解決することができるからである。
もちろん、離散家族の恨と苦痛を解決するために、国際的協調も不可欠だ。南北分断自体が第2次世界大戦の過程で、国際社会が生んだ犠牲物だからである。離散家族が抱いている情と恨、そして韓国人の神明を国際社会に知らせることが重要である。また、人類普遍の価値である人間としての尊厳、幸福追求権と基本的人権に帰結される離散家族問題を、国際社会の課題として浮上させるべきである。そして、離散家族問題を人権の次元で解決するために国連、人権NGOなど、国際社会の積極的な参加を誘導しなければならない。
実現した法制化
さる3月、韓国では、北韓人権法が制定され、北韓の人権問題を国際社会に正しく知らせることができる法的・制度的基盤が用意された。北韓人権法(9条)は「国は北韓の人権増進のために、国際社会の関心を高めるために努力しなければならない」と規定している。この法(13条)は、北韓人権記録センターを設置して、離散家族、国軍捕虜、拉北者に関連した事項を収集・研究・保存・発行するように法制化した。
今年も「家庭の月」を迎え、多くの国民が家族間の絆を存分に味わっているときに、離散家族の恨の苦痛は言葉で表せるものではない。私たちは国際社会と連帯して、北韓の金正恩独裁政権が離散家族問題を政治的に利用する反人権的な行動を停止するように圧迫しなければならない。あわせて、韓民族の神明でどの国よりも早く達成した近代化と民主化の波を野火のように休戦ラインを越えて拡散させ、一日も早く離散家族問題を解決しなければならない。
(2016.5.25 民団新聞)