国連教育科学文化機関(ユネスコ)の新たな世界記憶遺産に、朝鮮朝時代の儒学者たちの著述を印刷した木版「韓国の儒教冊版」と、KBS(韓国放送公社)が1983年に放送した特別番組「KBS特別生放送・離散家族を捜しています」の記録物の登録が10日、アラブ首長国連邦で開かれた世界記憶遺産を選ぶ国際諮問委員会で決まった。ユネスコはこの生放送が戦争と分断の惨状を世界に告発し、人権と普遍的な人類愛を鼓吹する生きた記録物と評価した。韓国は97年に訓民正音解例本と朝鮮王朝実録が初めて世界記憶遺産に登録されて以来、18年で計13件の記憶遺産を保有することになった。
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KBS「離散家族捜し」番組
世界最長の生放送
「家族捜し」は、KBSが韓国戦争ぼっ発33年と休戦協定30年を迎えて企画した特別番組で、韓国戦争で生き別れた家族をテレビを通じて捜し出す生放送。
人気女性歌手、パティ・キムの「どなたか、この人を知りませんか?」のテーマ曲が流れた後、150人の離散家族をスタジオに招いて6月30日、夜10時15分に放送がスタート。その瞬間、放送局の電話は鳴りっぱなし。さらに、11時過ぎまでに汝矣島のKBSスタジオに1000人以上の離散家族が押し寄せた。
本来、90分程度を予定していたが、予測以上の反響に深夜3時過ぎまで緊急延長。翌日、多くの離散家族が肉親の写真などを手に放送局を訪れ、長蛇の列を作った。番組出演希望者や問い合わせの殺到で放送局の業務が麻痺した。ニュース以外の予定プログラムを取り止め、「離散家族捜し」の生放送を続けた。
ついには、当初の計画を変え連続番組として再編し、11月14日まで138日間にわたって継続放送。453時間45分間に及んだプログラムは同一タイトル世界最長連続生放送としてギネスブックに登録され、現在も破られていない。ピーク時の視聴率は80%近くまで記録した。人間ドラマを描きながら韓民族の分断悲劇を世界に知らせた。
今回登録されたのは138日間、計453時間45分の生放送のビデオ録画原本テープ463本、担当制作スタッフの業務手帳や離散家族が作成した申請書、写真など計2万522件だ。
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朝鮮朝時代の儒教冊版
独特な「集団知性」
韓国国学振興院が保存・管理している冊版は305門中や寺院から寄託された718種・6万4226枚。国の主導で制作され、宗教的な目的を込めた八万大蔵経とは違い、各地域の知識人が参加して「公論」として出版するかどうかを決めた自発的な過程が特徴だ。冊版制作の過程や費用を自ら負担し、一種の「集団知性」を形成した後、500年以上も制作が続いた例も世界史で珍しい。
ユネスコは儒教冊版が印刷媒体の機能を超え、先賢の学問を保管・伝承し、知識人階層の公論を主導した点に注目した。
(2015.10.14 民団新聞)